ネットサーフィンをしていたら、たまたま
若林先生のお名前を拝見した。
あまりに懐かしく、嬉しかった。
学生時代、先生の「音響学」を履修していたのだが、穏やかで親しみやすいお人柄と、お話の面白さで、私は毎週、一番前の席で聴講していた。
大学には、音響学を専門に学ぼうとする学生はなく、実技重視の校風だったので、単位取得だけを目的とした学生があふれ、熱心に聴講する学生は一握りだった。
まことにモッタイナイ話だけどね
。
お話の面白さは、その優しい語り口のせいでもあったが、何より、豊かなご経験からくる真実の話が魅力的だった。
「ミュージックフェア」を成功させるまでの苦労話や、世界歌謡祭の話、多くのレコーディングの現場・・・。その場にいらした方しか話せないその体験談は、本当にワクワクさせられる時間で、毎週本当に楽しみだったものだ。
さて、その1年の講義の最終回、講義の最後に先生はこうおっしゃった。
「僕の講義は、君たちにとって、ずいぶんと退屈なものだったのでしょう。かなり私語が多く、それは僕の力の無さと反省もしなければならない。ただ、毎回最前列で熱心に聞いてくれる学生さんもいて、僕は随分と励まされた。その学生さんには心よりお礼を言いたいと思っています。どうもありがとう。」
この言葉を思い出すと、本当に涙が溢れてくる。
そして、このお立場にしてなお
感性は研ぎ続けなければならないとおっしゃった先生のことを、懐かしく想い出すのである。