殿下が不慮の死を遂げた翌週、新しい刑事が七曲署にやってきました。
その一週間は殿下が死んじゃったという衝撃で、次の刑事がどんな人かは気にしていなかったです。
ただ、オープニングで西條昭という刑事が出てきたときに、
「今までと違う」という予感がしてわくわくしたのを覚えています。
その春に転校したばかりの私は、あたらしい環境でなるべく目立たないように 静かに存在することを心がけていましたが、
同じ夏に新しく七曲署に入ったこの人は、 ずいぶんと図々しく、しかし軽々と明るくみんなの輪に溶け込み、
いつのまにか 輪の中心に収まっていて、「ああ、いいな」と思いました。
それ以来、実際に出会った人以外では、たぶん一番ドックの影響を受けて育ったような気がします。
神田さんのこともドックで初めて知ったので、私の中ではイコールでした。
のちに、「ゆうひが丘の総理大臣」等過去の作品を観て、ずいぶん真面目な役をやってるなーと笑ってましたが、
世間的には真面目なイメージが先だったんですね。
開業医の長男なのに医学部中退、はずみで警察官になり、発砲件数が多いからと本庁捜査一課から七曲署志願。
履歴書の写真は笑ってるし、ピーナッツをもぐもぐしてるし、みんなのあだ名は正確に覚えないし、
かわいい(?)拳銃を持ってるし… 変な奴と思いながらも、いつのまにかすごく気になる存在でした。
ドックの登場を機に、“家族で観ているドラマ”から“私が観たいドラマ”になり、
数十年の時を経て、ふたたび太陽熱がぶり返したのも「ドクター刑事登場」がきっかけとなりました。
DVDのコメンタリーで、神田さんが「笑ってればいいこと起こるしね」と言っていて、
やっぱりドックだなあとうれしかったです。
同じくコメンタリーでロッキー木之元さんが言っていたように、このころから一係に弾むようなリズムが出てきたと思います。
その後、新入りの刑事としては異例の長生きをするドックですが、同年代のロッキー、スニーカーとの友情を育み、
一係激動の数年を経て、いつのまにか兄貴分に押し上げられ、それはそれで新しい魅力がありましたが、
振り返って登場編からラガー登場までのエピソードを観ると、マイペースで、無理はしないけどけっこう無茶はして、
いい加減だけれど案外情に厚かったりするドックの個性は、この時期に最も発揮されていたと思います。