2019.03.15
『世界は一人』
at 東京芸術劇場 プレイハウス
http://www.parco-play.com/web/program/sekai/
作・演出:岩井秀人
音 楽:前野健太
出 演:松尾スズキ(吾郎)/松たか子(美子)/瑛太(良平)/平田敦子/菅原永二/
平原テツ/古川琴音
演 奏:前野健太と世界は一人
(ボーカル・ギター:前野健太/ベース:種石幸也/ピアノ:佐山こうた/
ドラムス:小宮山純平)
時代も場所も、バンド「前野健太と世界は一人」もすべて、ステージ上に乗せられて、役者の言葉と中央にある回転装置?の行ったり来たりが、時の流れ(ときに流れに逆らって戻ってみたり)や場所の変遷、登場人物の変化をかろうじてこちらに教えてくれる。
平易なセリフやコミカルな動きがオブラートになって穏やかな笑いや苦笑いを誘われても、舞台上の三人の人生はなかなかにシビアだ。
吾郎、美子、良平のつながりのきっかけは、小学校の修学旅行?の夜のおねしょ事件。実はそれにもちょっとしたどんでん返しがあるのだが、そうやって密かな秘密を共有している三人は、のちに引きこもりになる者、ビルから飛び降りて瀕死の重傷を負う者、派手に成功を収めたかのように見えながらどこかアンバランスに生きる者・・・と、それぞれのいびつな道を歩んでいくのは、世の常だ。
それでも結婚した吾郎と美子が故郷に戻り、引きこもりから外に出ようとし始めた良平と再会する。
過去の記憶は、実は個々人の時間の推移の中で勝手に姿を変えているんじゃないか、という疑い。でもそうであれば、人はどこかに戻って(あくまで精神的に)生き直すこともできるのか。
冷静に考えれば絶望的な状況を、時にはかわして笑いに溶かし、そして壮大なテーマを矮小にみせかけるテクニック。
そして三人は、彼らのつながりの原点へと戻って、合宿の布団に中に姿を消す。そこが自我の生まれた場所を暗示しているのか。回帰はとても穏やかで居心地がよさそう。
そこが安住の場のように思えた私は、どこに帰ることが救いになるんだろうか、と最後に自問する。回答はまだない。
ミュージカルが少々苦手な私が挑んだ岩井秀人氏の音楽劇は、会話から音楽への垣根が限りなく低くて、ストーリーが、内面の吐露の言葉が、途切れることなく伝わってくるのが心地よい時間だった。
繰り返し流れる楽曲の中には、歌詞にも心に響くものがあった。
ステージ上の演奏者たちのなかで、とくにボーカル+ギターの前野氏は登場人物の一人のような立ち位置で、それもおもしろい。
松たか子の歌唱の表現力は、ピュアな声質を越えて、激しい怒りも底のない苦しみも直線でこちらに伝える力をもっている。この人の舞台からはどんな役であっても、こちらが受け止めきれないオーバーアクションで挑まれているという恥ずかしさを感じない。すごく心地よい。
「sisters」(ココ)での痛々しいまでの叫びも、「二人の夫とわたしの事情」(ココ)でのコケティッシュな魅力も、かなり前の芝居だけれど、私には今でも記憶に鮮やか。
私は、松尾スズキのどこにでも自在に入り込んで違和感を感じさせながら溶けてしまう感覚が好きなのだけれど、それはここでも健在。
瑛太は、体の中の鬱憤をどうにも自分では制御できない子どもの攻撃性を独特の低い声できかせるところに、残酷さが際立っていてゾクゾクした。
平田敦子が動くと、不思議な安心感があることも、付け加えておこう。
「サカナLOCKS!」(TOKYO FM)をきいたFESさんが送ってくれました。
https://www.tfm.co.jp/lock/sakana/smartphone/index.php?itemid=12680&catid=17
サカナクションの山口一郎さんが、ほぼサカナクションしか聴いてこなかったリスナーに、こんなコメントをしています。
「スピッツは?」
こんにちは。
お変わりないですか?
いつも見てくださってありがとうございます。
この前「食いついて」くださったのは、『百年の恋』だったでしょうか?
そうなんです、嫌いというわけじゃなくて、ミュージカルのすべてにす~っと入っていけるタイプじゃないんですよね。
この舞台は、そのあたりの垣根が低いことと、一曲一曲が言葉もメロディーも含めて、高度な・・・というより寄り添う感じ(うまく言えませんけど)。
個々人で受け止め方は異なるでしょうが、私の文章ではまったく伝わらないであろうおもしろさ、きっとあると思います。
ステキな時間を!!
ごぶさたしています。
ブログ、いつも拝見していますが、またまた演劇ネタで食いつかせていただきます(笑)
「世界は一人」次の週末私の地元でも公演があり、観に行く予定です。
私もミュージカルは苦手な方で…。「音楽劇」ってどんな感じかなぁって思っていたので、かけらさんのレポを読んでちょっと安心というか楽しみさが増しました。
ありがとうございます!行ってきまーす!