隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

あなたならどうする?~「ロスト イン ヨンカーズ」

2013年12月10日 20時44分37秒 | ライブリポート(演劇など)

『ロスト イン ヨンカーズ』
at KAAT 神奈川芸術劇場

作  ニール・サイモン
上演台本+演出  三谷幸喜

出演    中谷美紀/松岡昌宏/小林隆/浅利陽介
       入江甚儀/長野里美/草笛光子

 http://www.kaat.jp/detail?id=20492#.Uqb97imCjIU


 
先日、何年振りかで、芝居の昼の部を観劇。

■家族のお話

 1942年、ニューヨーク州ヨンカーズでの、ユダヤ系アメリカ人の家族の話。
 二人の少年の目を通して、家族の姿が描かれる。
 
 ドイツでの厳しい暮らしの経験している家長である祖母。
 その子どもたち(少年たちの父親であり長男であるエディ、娘のガート、息子のルイ、末娘のベラ)はもういい大人なのに、自分たちの母親をそれぞれの形で恐れ、その存在に縛られている。
 理不尽な母の行為や言葉は、強烈で容赦ないけれど、過酷ななかでも生き残る術であったり強さの源であったりもする。
 ギャングまがいの暮らしをしている(と思われている)ルイは、母親を批判しながらも、その教えゆえに図太く生きてこられたとも言う。
 ガートは母親の家に来ると過呼吸でうまく発声ができなくなったりする。
 エディは息子二人を母親に預けて借金返済のために長期に働きにでているが、厳しい母親の前では言いたいことも言えない。
 ベラは知的な遅れのある女性で、ときどき感情を制御できなくなったりするが、それでも彼女こそが、感情も笑顔も封印して心を開かなかった母を変えていく。

 ベラが家族の前で自信の心の中を吐露するな面が秀逸だ。
 母親は「お前は子どものままだ」と決めつけるが、ベラはそうではないと言う。
 女としての気持ちが自分の中にはあるということ、愛されることの喜びをずっと探していたということ。
 自分の心の動きや成長を理解せず認めてこなかった母親への言葉は、恨みごとではなく、深い悲しみで覆われている。

 結局、ベラの望む結婚は叶わなかったけれど、家族は変わる。
 母はかたい殻の中にあった鋼鉄の乾いた心に少しだけ湿り気をもたらす。
 エディは息子たちとともに、もっと実家を訪れるようになるだろう。
 ルイは母の意にそわないことで、妹ベラを助けようとする。
 ベラは、ひょっとしてこれからも家族をひやひやさせる恋愛をするかもしれないけれど、でも前以上にほがらかに素直に生きていきそうだ。

 最後の場面、ラジオから流れる音楽に、ベラが、「わかる~? これが音楽っていうのよ~」を高い澄んだ声で言って、ダンスのステップを踏むように退場したあと、ひとり残った母親が、小さく満足げにうなずいて、幕となる。

 家族全体とすれば少し特殊かもしれないけれど、それぞれの子と母親との関係を見れば、ふつうに自分にも自分の家族にも周囲にも見られる・・・、そんなお話です。
 ぶつかることを恐れて何も言わないままでどちらかの死を待つのもひとつの方法、ぶつかり合ってとりあえず言いたいことを伝えて、吉と出るか凶と出るか、やってみるのもひとつの方法。
 さあ、あなたはどうしますか? と言われたような。
 ユーモアと知的なやりとりで、優しく問いつめられたような気がする。


■役者たち
 草笛光子の貫録と存在感のなかに、心を閉ざさなければ家族を支えていけなかった孤独が浮き上がる。美しい姿にも見える。
 中谷美紀のベラは、加減がとても難しい役だと思うのだけれど、こちらの気持ちにまっすぐに響くベラのせつない思いと必死さがすてきだったな。彼女の母への訴えに、はからずも泣けてしまった。
 それほど期待していなかったのだが、松岡君のルイはほんとう生き生きとした空気を舞台にもたらし、深く感動。おじルイの胡散臭さの中に漂うまっすぐさも伝わってくる。
 なによりセリフまわしの小気味よさ、口跡の美しさ。こんなに叫んだり早口にまくしたてたりしながら、一音一音が自然にすべて滑ることなくこちらの耳の届く舞台役者って案外少ないんじゃないかと思うくらい。身のこなしの美しさも見事でした。
 この芝居では、暗転のときに役者がそれぞれに舞台装置や小道具の移動などをするのだが、ルイが母親にストール?をかけるしぐさ、舞台から去るときに帽子をちょっとだけはずして軽くおじぎをする動作・・・。どれもキマッていた。
 役者たちはそれぞれに、みなとても生き生きとしていて、翻訳劇にありがちなヘンな違和感はなかったように思います(違和感、嫌いじゃないんですけどね)。



                     



 珍しく昼の部鑑賞だったので、芝居の前後、横浜を歩いたり、食べたり飲んだりしました。





 赤レンガ倉庫で食べた季節外れのアイス。クリスマスバージョン。


 







       


 こんなところで書きたくないけれど。
 記者会見で、「もう少し時間をとって国民に丁寧に説明すべきだった」と、あんな形で法案を通したあとで発言する厚顔な政治家。
 法案を通した次の朝、首相官邸周囲のようすに「嵐が過ぎ去ったあとのよう」とも言っている。 


  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131209-00000046-asahi-pol


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« マンデラさんの死 | トップ | イメージどおりじゃつまらな... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。