2023.03.31
「グットラック、ハリウッド」
at 本多劇場
作 :リー・カルチェイム
訳 :小田島恒志
演出:日澤雄介
出演:加藤健一(ボビー・ラッセル)/関口アナン(デニス・プラット)/加藤忍(メアリー・オーヘア)
http://katoken.la.coocan.jp/114-index.html
ハリウッドの監督、脚本家として、多くの優れた人気作品を残したボビー・ラッセルは、今も映画制作への熱い思いを胸に抱いている。ところが時代が変わり、彼の脚本で彼に監督をさせようとする製作者は皆無だ。彼はもう過去の人だ。そして、苛立ちと焦りの日々を送っている。
ボビーと若いデニスが出会ったのは、ボビーが自室で机の上にぶら下げたロープに首を入れようとした瞬間。
そこから、二人の会話が始まる。年齢も、もちろん経験も、映画にかける思いも異なる彼らだが、映画を作りたいという思いには重なるものがある。
ボビーには「良い作品をつくる才能とノウハウ?」があり、デニスには「トレンドへのアンテナと制作者側が求める‟新しい風”」がある。それは実際には大きな隔たりだけれど、それを突き詰めてしまうと、二人に道はない。
ボビーは言葉を尽くして、デニスを自分の計画に取り込もうとする。
とうとう、二人は秘密裏に共同で脚本を書き(実際には、ボビーが作りたかった「彼の本」ができあがるのだが)、それをデニスの名前で制作サイドに提出しOKをとる。そのあと、ボビーが作る絵コンテと役者への詳細な指示書をもとに、現場ではデニスが監督を務める。
映画を作れるのならば、クレジットに自分の名前がなくても、そんなことはまったくかまわない、ボビーはそう言いながら、毎日絵コンテを作り、役者への細かい指示を書き並べてデニスを渡す。秘密の共同作業がばれないように、ボビーは現場に一歩も足を踏み入れないし、試写を見ることもない。
彼を崇拝する助手のメアリーは、その行く末を心配し、現場での監督然としたデニスの態度に疑惑を抱く。
ボビー不在の中でのメアリーとデニスの激しいやりとりの中で、デニスの本音が垣間見える。こんなしたたかな若者が、ボビーの絵コンテと指示書に忠実に従って監督をしているとは、さすがに想像できない。
上映と映画完成パーティーの夜、完成した映画を初めて観たボビーは知る。現場では、デニスはボビーの脚本に自分なりの手を入れ、細かい指示などには従っていなかったことを。
自室に戻って、メアリーを相手に憤懣をぶちまけるが、意外や意外。あんなにボビーを崇拝しデニスの行動に目をひそめていたメアリーが、デニスが書き換えたセリフを褒め、「二人はいい仕事をしたではないか」と真正面から肯定的に感想を述べるのだ。
そして、今まで映画以外のことに何も興味を示さなかったボビーに、もっとほかの世界が、喜びが、生きがいがあることを滔々と語る。
ラストで、次の歩みに踏み出すかのようにメアリーと旅立つことにしたボビーは、「さらば、あとはよろしく」という「前向きな?世代交代」の挨拶をデニスに投げかけて去っていく。
人生の悲哀・・・、というより、いつの時代にもある「世代交代の正しい姿」を私たちに残したのだろうか。
あんなに夢中になった時代は過去のものになり、あの頃の自分と同じように熱く語る若者に道を譲る・・・、それをコメディーの中で描いてみせる。
捨てきれない情熱を内に秘めて演じる加藤健一さんと、小気味いい動きと少し大げさに見える演技で怖いもの知らずの若者を演じる関口アナンさん。
その対比が絶妙に見えたり、戸惑うほどにアンバランスに感じられたり・・・、それが次々に現れて消えていく2時間だった。
★この夏の『ロックロックこんにちは』★
25回目を迎える『ロックロックこんにちは!』!
今年は、9月16日・17日の2日間、大阪城ホールで開催されるそうです。
出演者、チケットの発売等は、後日発表されます。
https://spitz-web.com/news/7083/
https://rrkonnichiwa.com/
『ロックロックこんにちは』の20周年は、2016年7月10日に、やはり大阪城ホールで開催されました(コチラ)。
Mr.Children → キュウソネコカミ → MONGOL 800 → スピッツ
という贅沢な出演者。
楽しい一夜でした。