2019.1.20(日)
かなり背伸びをして、そしておもしろさがまだわからないままにちょっと無理をして俳優座の芝居を観に行ったとき、市原悦子という女優に出会った。
トルストイの『アンナ・カレーニナ』だったか。
彼女は主役でも主要人物でもなく、たしか侍女1とか客2とか、そんな感じでいくつかの小さな役で出ていたと思う。
それでもたぶん俳優座を退団する少し前だったと思うから、彼女の人気は群を抜いていた。
客席の反応は確かにあったけれど、そんなものはなくても、市原さんが舞台のそでに立つだけで、そのまわりにスポットライトがあたったかのような、そんな一瞬があった。
私はたぶん、市原悦子という女優を知らなかったから、あの人はだれなの?と、あとでパンフなどを見て確認したんだと思う。
芝居なんて何もわかっていなくて、おもしろさも感じていたのか・・・。でも、市原さんはステキな女優さんだと思った。あの日、たしかにそう感じた。
予想のつかない演技が好きだった。
2時間ドラマの、たとえば「高見沢響子」のエンディングでさりげなく家族のシーンなどがあるときの、アドリブとも計算された演技とも、どちらにも思えるような彼女らしい体の動きやセリフが好きで、物語の筋とはまったく異なるところで、「いいよね」「あそこが好き」といくらでも語りたくなる・・・そういう女優さんだ。
2004年の舞台「狂風記」で自由奔放に舞台を独り占めした市原さん。
カーテンコールで、演出をされた夫 塩見哲さんがステージ下から差し出した花束を、乙女のような笑顔で受け取った市原さん。
どちらも、しっかり覚えておこう。
http://nikotamaya.art.coocan.jp/play/20040130.htm
たくさんの思い出をいただいた。一方的にそう思っている。
緒形拳さんと市原さんは、私が何も知らないときに出会えて、その後の「お楽しみ」の貴重なきっかけをくださった役者さんたちだ。
本当に寂しい。
でも残された多くの作品は、これからも私を笑わせたり泣かせたりして、大事な時間を作ってくれるだろう。
そう信じています。
24年とは、あまりにも長い年月だ。
でも、震災の被害を受けた方、大事な人を亡くされた方には、時が止まったままで・・・とおっしゃる方のなんと多いことか。
今年も1月17日が過ぎていきました。
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