■3月7日にふと思ったこと。
最近変わってきたなあと思うのは、小学受験や中学受験に対するマスコミの反応だ。かつては「お受験」などという「おかしな現象でしょ」的な斜に構えた形容で、加熱する親たちをおもしろおかしく、あるいは眉をひそめる論調で報道していたが、それも様変わり気味。
『朝日新聞』の夕刊の連載で「6年間一貫教育」についての記事が掲載されているが、そこで中学受験を経験した家族のようすが書かれていた。母親と娘の「共同戦線」に父親も「参戦」し、その結果めでたく合格した家族。今まで父親に少々冷ややかだった娘から「お仕事大変なのにありがとう」といううれしい言葉をもらった父親が、「受験で家族がひとつになり、会話も増えました」と笑みを浮かべて(これは私の想像)語っていた、という記事。家族に会話が生まれたから、だからなんなの? それが今日の結論?と私は突っ込んでしまったのだけれど、あれは何を言いたいがための記事だったのだろう。いまだに不明。
そういえば、関西の有名大学がここ数年のうちに次々に附属小学校を創設する、というテレビ報道もあった。もちろん少子化の波で、有名大学とはいえ安穏としていられない時代だから、その対策ということなんだろうけど。驚いたのは給食。ホテルのシェフの料理が並ぶというんだからビックリ。それって、教育の一環? それとも客呼びのエサ? 親はバカにされてませんか。
今の公立の小学校の給食を調べる機会があったのだが、もちろん栄養面は万全だし、献立や味もなかなか工夫されてて、あれで十分じゃないですか。昔の給食のイメージはない。ホテルのシェフを呼んで、ガキのグルメを育てて、それはなんの意味があるんだろう。親は疑問を感じないのだろうか。私立の学費は高いんだし、みんながみんな外車を乗り回して高級住宅地に住んでいるわけじゃない。母親が必死でパートをして、それでも私立に入れたいと願っている親だっているはず、というより、そういう家庭のほうが多いのではないだろうか。ホテルのシェフを呼ぶより、少しでも学費を安くしてよ!とならないのかなあ。
子どもに最高の教育環境を!という親たちには、「グルメ息子」や「グルメ娘」育成も意味があるのだろうか。そんなこと言っても、有名私立を出たって完璧な未来が開けるわけではないことはみんなわかっているはず。だったら、どんなものでも「うまいね」と食える子どもを育てたほうがいいと思うんだけどなあ。それに「朝も夜も給食がいい!」なんて言われたら、料理苦手な母親はどうするんだ? それとも「ホテルのシェフの作る料理もいいけど、やっぱりママの家庭料理がボクは好き」なんてオヤジな発言をさせるのも教育効果なんて思ってる? まさかね。
だけど、テレビのキャスターからはなんのコメントもいただけなかった。こういう風潮が主流になっていくんだろうか。なんだか腑に落ちない。
実は何を隠そう、私は小学校から高校まで12年間、同じ私立に通った経歴の持ち主。結構な進学校で、おまけに短大までついていた(半数は短大にエレベーターで進学したけど、多少意識のある生徒は外に出て行ったね)。温室育ちと教師に言われ続け、正直うんざりなときもあった。たしかに長いスパンで教育方針なるものが実行されるから、勉強だけではなく、課外授業(演劇鑑賞みたいなやつ)も充実していたけど。でもこの12年というのはハンパな長さではない。結構キツイ。
小学校低学年のときに授業中にお漏らしをしたあるかわいい女の子は、高校では最優秀な成績の持ち主に成長したけど、口の悪い女子は陰で「お漏らし君」と揶揄していた(これは、意地の悪い女子のほうが悪いけど)。でもマジメな話、できてしまったイメージを壊そうと孤軍奮闘していた友人もいたような。それって無理。優しい子は、実は魅力的な小悪魔になったのに、卒業するまで「優しい子」をやらされていたし、鈍重な子はやっぱり最後まで「なんなの、あの子」という視線で片づけられていた。都立高校を受験したい!と希望した友人は、「ここにいたほうがずっと得」と教師や親から激しく説得され、あえなく撃沈。結局、意志を貫き通す強さがなかっただけなんだけど。
12年はキツイです。もちろんみんながそうだというわけではない。子どもは母校に!と思っている友人だっているし。でもきつかった人もあるのだということを覚えておいてほしい。12年ですよ。12年…。あ~あ。
この国は自由主義国家だから、豊かな人も貧しい人も生まれ出る。人の努力や生き方を別にしても、運や流れで浮いたり沈んだりもするだろう。でも、教育は別じゃないかな。子どもには等しくチャンスをあげたいと思うのは無理なんだろうか。
『女王の教室』の最終回で、私立への紹介を断ったマヤ先生が「私は公立の教師をやめるつもりはありません。恵まれた子どもも貧しい子どもも、いろんな子どもがいる公立の学校で教師を続けていきます」と言っていたっけ。もちろんドラマではあるけど、あの気概で教師をしている人がきっといるんだ、公立にも、そう信じたいと思った私は甘いのだろうか。
誰でも入学できる公立の小学校や中学校が教育の中心にあって、そこを充実させることが文部科学省だけではなくマスコミの責任でもあるんじゃないかな。努力をしていないとはいわないけれど、どこか方向が変わっていってしまうような。公立の中でも選ばれた「一貫校」の創設とか…。少なくともマスコミの目線には違和感をもってしまうのだが,これは私だけなんだろうか。
それから、肝心な親。親なら誰でも「うちの子」の幸せや平安を望むものだろうし、それを決して否定はしない。愛されているという実感は子どもを健全に成長させるいちばんのエキスになるんだろうし。でも、ひょっとすると「あなたがかわいいの」→「あなたには幸せになってほしい」という気持ちだけがエスカレートして子どもに伝わると,「とにかくボクが幸せならいいんだろう」→「ほかの子のことはどうでもいいのかもね」という相乗効果?を生んでいくおそれはないんだろうか。それよりも「ママはあなたも大事だけど、あのちょっと意地悪な○○さんも気になるわ」なんて余裕の気持ちを見せたり、「キミはそういうことを言うけど、あのお父さんだって好きで失業したわけじゃないんだよ」と現実を軽く解説してやったりしたほうが、かっこいいママにもパパにもなれるんじゃないだろうか。
恐ろしい悲惨な事件が相次ぎ、かわいい子どもたちが犠牲になる現実を決して軽視しているつもりはないけれど、そしてそういう状況に遭遇したことがないからそんな呑気なことを考えていられるんだという非難も想定しつつ、それでもこう言いたいのです。選ばれた守られた場所ではなく、たとえ施設が不十分だったり多少の危険はあっても、私の子どもはここに通わせます、とキリッと言って子どもを地元で育てている若い父親や母親がたくさんいるはずなんだ。教育って、そこからスタートしていいんじゃないかな。というより、そこからスタートすべきです。いろんな家庭があって人生があるんだと、無意識のうちに子どもが感じつつ生きていく環境を,大人は賢く守っていくべきです。ホテルのシェフの入る余地はないはずだから(あ、最後までここにこだわってしまった。笑)。
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