隠れ家-かけらの世界-

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エレカシはやっぱり「男」が語らなくちゃね~エレファントカシマシの映画を観て

2013年07月14日 13時13分02秒 | 映画レビュー

2013.7.12(金)

エレファントカシマシ デビュー25周年記念
ドキュメンタr-映画
「the fighting men's chronicle
  エレファントカシマシ 劇場版」

  山下敦弘監督

 http://www.elephantkashimashi.com/25th/main.html


 全国プレミア上映会をシネプレックス幕張で見てきました。
 往復4時間かけて1時間半の映画を見てきたというわけですが、そんなことはまったく気にならないくらいの、いい夜になりました。
 いろいろなことを思い出したり、感じたり・・・、ときにクスッと笑ったり、びっくりして見入ってしまったり。
 そんな映画の感想を勝手に脈絡なく書いてみます。
 DVDじゃないんで、聞き間違いやあやふやなところは確認できないんで、悪しからず、です。
 これからご覧になる予定の方は、ここでやめたほうがいいですよ。
 そして、ものすごくひとりよがりな文章になるはずですので、不快にしてしまったらごめんなさい。


★「今のエレカシ」
全体の構成は、
 ○デビューから数年間くらいのライブ映像
 ○エレカシに少なからず衝撃を受けた男たちの熱いコメント
 ○宮本復活でリハーサルを始めた、まさに今のエレカシの映像
という感じかな。
 「デビュー25周年」といううたい文句がついていたので、25周年の足跡を追うドキュメントか、となんとなく想像してたんだけど、まったく違ったなあ。
 もちろん懐かしい映像は満載で、若い4人のライブシーンにはついつい見入ってしまったけれど、でも主流は「今」。今の生身のエレカシです。
 

★暴君じゃ
 宮本さんの耳が回復してきて、去年の秋以来、「お互いに会ってなかった。石くんにはときどき会ってたけど」(宮本談)という4人がスタジオに入って新曲に取り組んでいるシーンが何度も何度も流れていく。
 (最初は、大きな音を出していいのかな、と迷い気味だったというメンバー)
 宮本さんが教師で、そのまえに三人が生徒のように並んでいる。
 十分想像できるところだけど、宮本さんは情け容赦なく、メンバーにことばをつきつける。
 「練習が足りない」
 「そんなんじゃ、歌えないですよ」
 「音が生ぬるい。そう思わない?」
 文字にすると緩和されちゃうけど、実際の雰囲気はこんなもんじゃない。第三者としてここにいたら、いてもたってもいられないだろうと思う。
 メンバーは、それはそれは真剣な表情で、それを受け止める。
 デビューして25年たっていても、こうやって闘いながら曲を作っているんだ、という正直な驚き。ベテランをなめちゃいかんよ、ってとこだな。
 インタビュアーが「撮影が入ると、(宮本さんの言葉は)エスカレートしちゃいますか」とせいちゃんに問いかけると、「いや、いつもと変わんないですよ」と苦笑い。
 石くんなんて、何か言われると直立不動だし、表情もこわばって見える。命じられたのか、スタジオで腕立て伏せをしている。
 「最初の頃は集まっているだけで楽しかったけど、今は緊張してます、ずっと」
 「いつから?」という問いに、「アルバム、3枚目くらいからかなあ・・」「いや、今思い出したけど、1枚目からそうでしたね」
 トミが言うには、中一で知り合ったときに「おもしろいやつだな」と思って、いまでは「すごいやつ」だって。指摘されたことはすべて「そうだな」と納得できるらしい。見抜かれているらしい。

 宮本さんは活動休止の間、曲を50曲も作っていたらしい。それがすごく楽しかったって。
 強烈な言葉をメンバーに吐いているのは今に始まったことじゃないんだろうけど、でも、4人で向き合えてまた始めているということに、ひょっとして感動してるのかもね(いやいや、こうやってすぐに湿らせたがるのは私の悪い癖ですが)。
 でも、ものすごく前向きな、40代の男にしては恥ずかしい?くらいの衝動が見えましたよ。
 2年?ぶりに、「論語」も読んだって。「広辞苑」と「論語」が置いてあるスタジオ(こっちはプライベートなほうかな)というのも、ある意味すごいけど。

 この春の映像で、日比谷野音の客席からステージを見て、「RCサクセションとか見たな」と話しているときのなごやかな笑顔は安心する。
 そして、誰かが「これこそ、あの頃のエレカシ!」と言ってたのは、賑わう渋谷の交差点に立つ4人の姿。バブルの浮かれた空気の中、鋭い目をした地味な4人が世界をじっと見据えている感じ。

 
 長いつながりで、今でもあんなふうに厳しく(誰かがパワハラ?って言ってたけど)言われて、それでも誰も抜けずに続いている。それが事実です。

 なぜか?なんて、軽々しくは言えない。運命? 相性? 
 だってあの三人の誰もが暴君から離れていかないんだもの。何かがあるとしか言いようがない。
 あんなにコテンパンに情け容赦ない言葉をメンバーになげかけても、この暴君は言うんです。
 実際に誰か、と思うと、「やっぱりあの三人の顔が浮かぶんです」って。
 エレカシ、きっと最後まで4人でいくんだろうなあ。
 なんか、不思議な感動を覚えました。

 


★懐かしい映像
 反抗的な強い目、すべてが鋭角な4人。
 客に暴言」を吐くボーカル、やじり返す客。
 出ていこうとする客に、
 「ああ、出ていきやがれ! ば~か。お前なんか、〇〇を聴いてりゃいいんだよ」
 〇〇には「RCサクセション」?だったか、とにかくその日のメインのバンドの名前が入る(笑)。エレカシは前座で出ていたんだよね。
 当時、エレカシ命、と言っていた男子に何度かつれられていったライブハウスや野音。正直、ああ、客もやじらなけりゃいいのになあ、また宮本さん、怒っちゃうよ、なんて思っていた私です。なんかし~んとしちゃう感じも怖くて(笑)。
 だから、2000年以降、久しぶりにエレカシのライブに行ったとき、宮本さんがMCで曲の説明をしていたのには驚いたもんだ。
 でも、なんだか今見ると、やっぱり他に類を見ない迫力っていうか、破天荒っていうか、ゾクソクっとしました。
 いいものを見られたんだなあと、当時を振り返って。時の流れは感じたけれどね。
 当時の映像を、でも懐かしさで垂れ流すんじゃなくて、たんたんと乾いた印象で見せてくれたのはよかったなと思った。
 「宮本、なんか歌え!」とか言っていた男子たち。こらっ! 懐かしいだろ!

★「エレカシ命」?だった男子たちのコメント
 やっぱりね、エレカシは男たちのバンドなんだな。悔しいけど、そうです。
 男が語れるっていうか、男にしか語れないバンドなんだ。「今宵の月のように」以前はね。
 今回の映画で重要なのは、彼らが語るエレファントカシマシなのだ。
 
  横山健(Hi-STANDARD)
  草野マサムネ(スピッツ)
  TOSHI-LOW(BRAHMAN)
  山田 将司+菅波 栄純(THE BACK HORN)
  マキタスポーツ(ミュージシャン、お笑い芸人)
  新井英樹(漫画家)
  大根仁(映画監督)
  岩尾知明(FM802 プロデューサー) 
  綾部さん(初代マネージャー) など
 
 エレカシのドキュメンタリーなんだから、「ファンが好き勝手に語るエレカシ」なんていらねーよ、もっとエレカシ出せよ、と言う人もいるかもしれないし、気持ち、わからないわけでもないけど。
 でも全員がクリエーターだから、それぞれの言葉が、表現が独特でなかなか聞かせるのだ。
 そして、なにより、男たちをこんなにかわいく夢中にさせるバンドって何?となるわけ。

 THE BACK HORNは若いから、「今宵の月のようにでエレカシを知った世代。
 だからほかの人たちと少しとらえ方が異なって、初めて聴いて「優しいな、優しい言葉だな」を思ったと言う。エレカシとは?という問いに「愛」と答えていた。
 初めて対バンしたときのリハーサルの光景に驚いたそうだ。宮本さんはハンパじゃなくメンバーに怒って。どういう言い方だったか忘れたが、その真剣さに圧倒された、と。
 岩尾さんは、1996年4月に、FM802で「四月の風」をヘビーローテーションに選んだときのことを話していた。
 「がんばろう」というフレーズは当時ロックではあまり使わなかったし、それを「あのエレカシ」が使ったというところにインパクト(という表現は使わなかったと思うけど)があったと。
 ちなみに、以下がその歴代ヘビーローテーションのリスト。見ているとなかなかおもしろい。「なるほど~」と納得できる話題曲があったり、「へ~、このバンドでこの曲? おもしろい」という曲があったり。

 http://funky802.com/pages/heavy_backnumber.php

 あ、脱線、脱線。話をもとに戻して。
 
 大根さんは「エレカシは友だち」って。実際に「友人」ではないし、そのあたりのニュアンスは私にはうまく伝えられないけど。「だから作品にはエレカシの曲は使えない。友だちだからね(笑)」って。
 新井さんか大根さんが言ってたけど、エピックとの契約が打ち切られて、次が決まっていないときのライブでの話。客の中にスーツをビシッと着ていた男たちがいて、「あれが新しいレコード会社の人なんじゃないか」って、ファンがみんなでコソコソ話していたらしい。このライブが決め手になるかもしれないから「みんなで盛り上がろうぜ」という気持ちがだんだん広がっていったとか。これこそ、愛じゃないですか!
 マキタスポーツは、「恥を知れっ!」と言われた感じと言ってたかな。
 横山健さんはたくさんいい言葉を発していたんだけど、その独特の雰囲気を伝えられない。もどかしいです。「5人目のエレカシになってたら、きっとすぐにやめる」には笑ったけど。

 みんなそれぞれに初めて体験したエレカシのライブでの驚きの印象をそれぞれの言葉で熱く、メチャクチャ楽しそうに得意そうに(まるで自分のことのように)語る。
 「音がデカイなと最初に思って。大丈夫なのか?と思ったら、ミヤジの声はもっと大きかった」
 [ウソをついてない」
 「衝撃だったのは、(宮本さんが)後ろのバンドと全然ちがう演奏をしてて。へ~、こういうのもありなんだ、と思ったこと」
 「演奏が終わって、拍手がパラパラっとあって、メンバーは退場して、客も(盛り上がるでもなく)普通に立って出ていく」
 「武道館で、照明とかそういう演出は全然なくて。でも一回だけ赤い照明が使われるところがあって。そこがすごく効果的だった」
 そういうコメントのあとにさりげなく、そのシーンが映像で再現されるところもある。
 盛り上がりもなく4人が退場して、客もどうってことなく立ち上がる大学の教室みたいなとこでの映像や、ステージ全体が赤で染まって浮き上がっているように見える映像とかが。

 エレカシがブレイクしたときのことを語る感じも印象的。
 正確には覚えていないけど、ファンがついたのね、オレがいなくてもいいのね…みたいな感じを語っている人もいた。
 スピッツ草野は、「人気の親父がいるラーメン店がちょっと広い店になっっちゃった・・・。でも味は変わってない」
 TOSHI-LOWも、根っこにあるものを変えてはいない、ということを説得力のある言葉で語っていた。
 

★スピッツ草野が語る部分
 普段から「エレカシ愛」は聞いているから、今回も覚えている部分が多いのかもしれないけど。ちょっとまとめてみると。

 最初はメジャーからデビューしてるってことでなめてかかっていたと(当時はインディーズだからかっこよくて、メジャーデビューするのはダサイと思っていたと)。だから初ライブで「ぶっとんだ」。
 「ライブハウスも行ったし、野音も何度も行った」
 「説教ききにライブに行く感じ」
 「生身をさらけだしてる感じ。オレはかっこつけてるなと思い知らされる」 
 「シンプルで、ぶっとい筆で『一』をかいた感じ」(ジェスチャー付きで)
 この人はほんとうに「たとえ」が好きだし独特だから。

 そうそう、宮本×草野の対談を雑誌で2回読んでいるけど、第一回は名古屋で行われた「ニュー・キッズ・オン・ザ・ロックス」というイベントを前にして。
 二人で歩いているところの写真なんかもあって、草野がやたら緊張していて、「ただのファン」状態にいるのが話にも表れていて、おかしい。笑っちゃう。
 対談を終えての第一声が、「あ~よかった、嫌われなくて」だったらしい。
 第二回は1998年の『bridge』。
 (それぞれにギターを抱えて、背中合わせに立っている写真がかっこいいです)
 ここでは草野も少し落ち着いてきて(笑)、アーティスト間の内容にはなっているけど。お互いに、「彼女と曲づくり」の話なんかしていて、結構生々しい。こういう話を最近は公にはしなくなったのかな。
 いろいろおもしろいことも話しているけど、草野は「ここは自分たちのバンドが負けてない、というところは?」と尋ねられて、「エレカシに関して、そういうことは考えられないです」って、やっぱり「ただのファン」でした。

 おっと、話を戻します。

★エレカシとは?
 ・・・ときかれて、おもしろかったのは、TOSHI-LOW。
 正確でないけど、「独自(独特?)の進化を遂げた世界規模の帰宅部」だったかな?
 意味不明だけど、でも究極の帰宅部・・・という感じ、なんだかわかるような。
 草野は、「有袋類じゃないけど、オセアニアに入ってきてカンガルーになった・・・みたいに、日本にロックが入ってきて、その進化した完成形。『エレカシは日本のロックバンド』じゃなくて、『日本のロックバンドはエレカシ』」。



                     

 
 二日間、仕事のあいまに、ここまであやふやな記憶を頼りに、ダラダラとまとまらない文章を書き足してきたのは、エレカシが始まるよ!という喜びと、こんなにエレカシを愛してやまない大人の男たちのかわいらしさと、バンドの不思議な幸せを伝えたかったからです。
 どうですか? 伝わった?
 悔しいけど、エレカシはやっぱり「男」が語らなくちゃね。そのあたりはどうか、甘い採点でお願いします。

 

 エレカシのライブが発表になっています★

  2013.09.14 / 15 日比谷野音
  2013.10.13 / 14 大阪城野音

  2014.01.11 さいたまスーパーアリーナ


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