『独裁者と小さな孫』(2014)
監督・脚本:モフセン・マフマルバフ、マルズィエ・メシュキニ
音楽:グジャ・ブルデュリ、タジダール・ジュネイド
【作品概要】
年老いた独裁者(ミシャ・ゴミアシュヴィリ)による支配が続いていた国で、大規模なクーデターが勃発。幼い孫(ダチ・オルウェラシュヴィリ)と一緒に逃亡した独裁者だったが、政権維持を理由に無実の人々を手に掛けてきたことから激しく憎まれており、変装することを余儀なくされる。孫にも自分が誰であるかを決して口に出さぬよう厳しく注意し、追手などを警戒しながら海を目指す。さまざまな人間と出来事に出会う中、彼らは思いも寄らぬ光景を見ることになる。(シネマトゥデイより)
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【感想レビュー】
年明けに観てレビューをアップするの失念しておりました…
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噂に違わぬ素晴らしい映画で、テンションがグンと上がっております
大統領が着ている威厳に満ちた軍服一式が、まるでハロウィンの仮装のように軽々となっていく過程は、シニカルで見応えたっぷりです。
“陛下”、“殿下”という呼び名も、宮殿や軍、お付きの者が居なければ、もう裸の王様状態に…。
味方に次々と裏切られた大統領は、もはや邪魔なだけの重たい軍服を脱ぎ捨て、押し入った民家で不当に衣服を搾取する。
次々と衣服を変え、旅芸人になりすまし逃亡する様子は、追手や民衆の目を欺くという自然な展開であると同時に、映画的な魅力を放つ。どの瞬間も、映像から目を離したくない、と思わせる吸引力がありました。
『カンダハール』にも感じましたが、このカットは今後も忘れられないだろう、という決定的な瞬間が幾つもありました
大人と子どものロードムービーはたくさんあるけれど、大統領とその孫という立場は斬新だなぁ!と思いました😳。
逃亡の過程で、大統領が拳銃を突き付け、衣服や金目のものを搾取…いや、強盗していく様子でいつも印象的だったのは、大統領の眼光の鋭さと生き抜く力でした。そこからは、1代で成り上がった者だけが持つハングリー精神を感じさせます。孫の無邪気で優しい目元には、育ちの良さがあり、対照的に描かれていました。
実際、独裁政権が勝手に世襲制にして専制国家のようになっていく例は、世界を見渡してもよくあります。
この物語の中で、2人の目がどのように変化していくのか、も見どころでした。
また、土着的な音楽が素敵でした
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音楽のあるシーンと、ないシーンの対比も印象的でした。
相乗りの車中シーンでは、ウィットに富んだ乗客の会話が繰り広げられ、貧富の差が伺えます。
この人達は、あの人達よりもマシで、自分達はその人達よりもマシである、というようなマインドでは、永遠に解決の糸口は見えてこなそうだけれども。。
大統領側だった軍隊が、革命後に民衆側と一緒になって、大統領を断罪するシーンでも、政治犯だった男が、それを指摘する。
『政治に1つ悪いことがあったら、その背景にある文化には10以上の問題があると思ってください』、とマフマルバフ監督は2016年の東京フィルメックスで話していました。
そういったことが、映画としてもとても面白いこの作品の文脈においても語られています。すべて両立するって凄いことですよね
また、拷問についての描写も、マフマルバフ監督の著書にある自身の経験に基づいていることを感じましたし、多くの事を主体的に体験してきたマフマルバフ監督が、このように包括的な視点を持ちえていることに、ただただ胸が熱くなります。
人々は、一瞬にして態度や言動、思想を変える。
それはなぜなのかー。
監督の映画、もっと観たいですけど、レンタルされていないものが多く残念です
ソフト化もあまりされていないのかな…。
特集とかあったら、是非行きたいです
監督・脚本:モフセン・マフマルバフ、マルズィエ・メシュキニ
音楽:グジャ・ブルデュリ、タジダール・ジュネイド
【作品概要】
年老いた独裁者(ミシャ・ゴミアシュヴィリ)による支配が続いていた国で、大規模なクーデターが勃発。幼い孫(ダチ・オルウェラシュヴィリ)と一緒に逃亡した独裁者だったが、政権維持を理由に無実の人々を手に掛けてきたことから激しく憎まれており、変装することを余儀なくされる。孫にも自分が誰であるかを決して口に出さぬよう厳しく注意し、追手などを警戒しながら海を目指す。さまざまな人間と出来事に出会う中、彼らは思いも寄らぬ光景を見ることになる。(シネマトゥデイより)
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【感想レビュー】
年明けに観てレビューをアップするの失念しておりました…
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噂に違わぬ素晴らしい映画で、テンションがグンと上がっております
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“陛下”、“殿下”という呼び名も、宮殿や軍、お付きの者が居なければ、もう裸の王様状態に…。
味方に次々と裏切られた大統領は、もはや邪魔なだけの重たい軍服を脱ぎ捨て、押し入った民家で不当に衣服を搾取する。
次々と衣服を変え、旅芸人になりすまし逃亡する様子は、追手や民衆の目を欺くという自然な展開であると同時に、映画的な魅力を放つ。どの瞬間も、映像から目を離したくない、と思わせる吸引力がありました。
『カンダハール』にも感じましたが、このカットは今後も忘れられないだろう、という決定的な瞬間が幾つもありました
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大人と子どものロードムービーはたくさんあるけれど、大統領とその孫という立場は斬新だなぁ!と思いました😳。
逃亡の過程で、大統領が拳銃を突き付け、衣服や金目のものを搾取…いや、強盗していく様子でいつも印象的だったのは、大統領の眼光の鋭さと生き抜く力でした。そこからは、1代で成り上がった者だけが持つハングリー精神を感じさせます。孫の無邪気で優しい目元には、育ちの良さがあり、対照的に描かれていました。
実際、独裁政権が勝手に世襲制にして専制国家のようになっていく例は、世界を見渡してもよくあります。
この物語の中で、2人の目がどのように変化していくのか、も見どころでした。
また、土着的な音楽が素敵でした
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音楽のあるシーンと、ないシーンの対比も印象的でした。
相乗りの車中シーンでは、ウィットに富んだ乗客の会話が繰り広げられ、貧富の差が伺えます。
この人達は、あの人達よりもマシで、自分達はその人達よりもマシである、というようなマインドでは、永遠に解決の糸口は見えてこなそうだけれども。。
大統領側だった軍隊が、革命後に民衆側と一緒になって、大統領を断罪するシーンでも、政治犯だった男が、それを指摘する。
『政治に1つ悪いことがあったら、その背景にある文化には10以上の問題があると思ってください』、とマフマルバフ監督は2016年の東京フィルメックスで話していました。
そういったことが、映画としてもとても面白いこの作品の文脈においても語られています。すべて両立するって凄いことですよね
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また、拷問についての描写も、マフマルバフ監督の著書にある自身の経験に基づいていることを感じましたし、多くの事を主体的に体験してきたマフマルバフ監督が、このように包括的な視点を持ちえていることに、ただただ胸が熱くなります。
人々は、一瞬にして態度や言動、思想を変える。
それはなぜなのかー。
監督の映画、もっと観たいですけど、レンタルされていないものが多く残念です
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ソフト化もあまりされていないのかな…。
特集とかあったら、是非行きたいです
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