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『北朝鮮強制収容所に生まれて』(2012)

2014年04月09日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『北朝鮮強制収容所に生まれて』(2012)

監督:マルク・ヴィーゼ
シン・ドンヒョク
ヒュン・クワン
オウ・ヤンナム

【作品概要】
北朝鮮政治犯強制収容所で生まれ、脱北した男性の想像を絶する半生と、収容所の実態を本人へのインタビューで描くドキュメンタリー。監督は、テレビや映画のドキュメンタリーを手掛けるドイツ人監督マルク・ヴィーゼ。ジュネーブ人権映画祭最優秀映画賞、オスロ・ヨーロッパドキュメンタリー最優秀映画賞ほか受賞多数。(Movie Walkerより)

【感想レビュー】@theater
自分でも意外だったのだけど、観た直後、心がしんと静まりかえってしまいました。
観たらきっと、収容所で行われている理不尽な事への怒りや、やるせない感情が渦巻くと思っていたので、かえって戸惑いました。
何なのだろう…この静かな気持ちは…。妙にしんとしています。もちろん、彼から目がそらせませんでした。集中して観ました。

しかしそうして観ていくうちに、彼に“虚”を見た気がしました。


印象的だった事は幾つもあります。

強制収容所内の監獄で拷問を受けた時の事を聞かれた彼が、疲れた、明日話すからと話すのを止めた。

話し始めた彼は、拷問を受けた事自体が辛かったのではなく、シャワーを浴びる度に、鏡に映る傷だらけの自分の身体を見ると、怒りが湧き上がってくるのだと言う。

また、資本主義の韓国で、何でも手に入るし幸せなはずなのに、自殺者の増加によって、北朝鮮の収容所よりも亡くなる人の数は多い。収容所で暮らしていた時はもっと心が純粋だった、とも言う。

国境が開かれ、北朝鮮の人民が解放されたら、真っ先に収容所に行きたいとも言った。


彼の原風景は、収容所なのである。
そこが、彼の故郷なのである。

“虚”な心ほど、怖いものはない。
観終えた後のしんとした気持ちは、スクリーンを通してそれが私の心に映ったからかもしれない。
彼からそれを引き出すインタビューであり、彼と監督との距離だったのかもしれない。
人間が人間として存在出来る環境というものが、いかに尊いものなのか。
それを訴えるのは、彼の“虚”を捉えたドキュメンタリー映画だった。

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