kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

アトミック・ブロンド

2017年10月26日 | ★★★★☆
日時:10月22日
映画館:イオンシネマ広島
パンフレット:A4変形720円

というストーリーラインを聞くとありがちなスパイサスペンスだと思うが、実物はこれまでと一線を画したスパイもの。

東独秘密警察(死語)シュタージ職員が漏えいさせたスパイリストを巡り、東西が奪取合戦を開始、シャリーズ・セロン扮するMI-6の女性諜報員がベルリンに送り込まれる。東西ベルリンは体制崩壊寸前で、現地駐在員やらKGBやらその他大勢が右往左往する中、内通者の存在もちらつき・・

これまでスパイものと言えば、007とル・カレがその両端を成していたと思うのだが、本作が一線を画しているのは、その中間に位置しているという点。

セロンの存在は思いっきり派手で嘘くさいのだが、ドラマ展開は策謀が張り巡らされたシビアなもの。一応、スパイリストというアイテムはあるのだが、典型的なマグガフィン。(細菌兵器の設計図でも闇資金の口座番号でもストーリーは成立する。)登場人物たちは東ベルリンと西ベルリンを行ったり来たりするので、ちょっと気を抜くとストーリー展開が分からなくなってしまう。30代以下の人は基礎知識が必要。その混乱ぶりが主人公たちが直面している状況そのものなのだが。

セロンの女スパイは外見とか存在感は嘘くさい割にひみつ兵器は所持せず、己の肉体ひとつで現場を乗り切る。この肉体ひとつってところが肝で、本作の見どころ。

オープニングで湯船に浸かるセロンが登場するが、二の腕の逞しさが半端じゃない。本物感が漂っている。その後、この肉体を「色んな」方面で駆使し、真相に近づいていくが、最大の見せ場はワンシーン7分に渡る大格闘戦。レベルの高さで言えば、「続・夕陽のガンマン」のサッドヒル、「ガンマン大連合」の皆殺し、「マッドマックス2」のクライマックス、「プライベードライアン」のオマハビーチ、「グッドフェローズ」のレイラ、「トゥモローワールド」のワンカット市街戦などに並ぶ、そこだけ何度でも見たいシーンになっている。そのあまりの激しさに、途中から映画館の観客もドン引きしていたもんなあ。

セロン以外の顔ぶれも豊かで、ジェームズ・マカヴォイやジョン・グッドマン、トビー・ジョーンズ、ティル・シュヴァイガーと意外とスパイ物に向いている。ソフィア・ブテラだけはこれまでの鬼みたいな印象しかないから、ちょっとピンと来なかったけど。

トビー・ジョーンズの登場や「C」の役名(コントロールの頭文字なんだろう)から「裏切りのサーカス」を思い起こさせるし、また、監督も言及しているように、全体の世紀末的な雰囲気やアイテム争奪戦、前述のワンカット格闘戦など「トゥモロー・ワールド」の影響が多々うかがえる。

今にして思えば素敵だった米ソが睨み合う80年代、冷戦末期を再現した美術がまた素晴らしく、トラバントや東独の警察ファッションなんて懐かしいなあ。ソ連のUAZが走り回っているのも嬉しい。(BTRが出てくれば、もっと良かった。)

当時の音楽も過剰な盛り込みようで、雰囲気を盛り上げて評価も高いが、そっち方面は疎いので数曲しかわからなかった・・・。

シリーズ化の話もあるそうで、時代や場所のセレクトが楽しみ。






題名:アトミックブロンド
原題:Atomic Blond
監督:デヴィッド・リーチ
出演:シャリーズ・セロン、ジェームズ・マカヴォイ、ジョン・グッドマン、トビー・ジョーンズ、ティル・シュヴァイガー

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