本作、イスラエル映画なのだが、同国の映画を見るのは「戦場でワルツを」以来じゃないかなあ。
1990年、ソ連崩壊を目前にユダヤ人の出国が認められ、ほとんどのユダヤ人はイスラエルに移住したが、主人公の初老の声優夫婦もそんなふたり。
ヨーロッパでは基本、外国映画は吹替なのだそうだが、ソ連でロシア語声優として名声を博していたふたりもイスラエルではほとんど仕事がない。
また、湾岸戦争中のイスラエルでの新生活は戸惑うことばかり。この辺のイスラエルの日常生活風景はなかなか興味深い。住民ひとりひとりにガスマスクが配付され、緊急事態への対応ビラが配られる。そうした日常では国防意識が高く、自衛策として教育水準が高まることにも納得。
妻の方は偶然見つけたテレフォンセックス(昔、あったなあ・・・)の仕事を夫に黙って開始するが、持ち前の美声と人生経験の豊かさであっという間に同店の人気ものに。
一方、旦那は偶然見つけたロシア語専門のビデオ屋で海賊版ビデオの制作と吹替に着手する。個人経営の怪しげなレンタルビデオ屋も昔、あったなあ・・・。
ここで引き合いに出される映画タイトルも80~90年代的で懐かしさが嬉しい。さらにキーパーソンとしてフェリーニが出てくるなど、全編に満ちる作り手の映画愛に涙しそう。
そのうち、お互いの仕事を発端に人生の悲喜劇が展開していく。派手さもないが、世の中って楽しいなあとしみじみを見入ってしまう。
そう思っているとクライマックスではいきなり事件が。確かにこれもイスラエルの現実。
ストーリーもさることながら、自分が若いころに世界の別のところで起きていた現実を改めて知ることが出来た点で印象深い作品。
題名:声優夫婦の甘くない生活 原題:GOLDEN VOICES 監督:エフゲニー・ルーマン 出演:ウラジミール・フリードマン、マリア・ベルキン |
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