kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

恐怖の報酬 オリジナル完全版

2019年01月28日 | ★★★★☆
ワタシが映画にハマりだした40年ほど前、TVで観たのがこの「恐怖の報酬」だった。その頃、新聞の映画紹介記事などをスクラップし始めたので、今夜の映画欄にあった吊り橋の上で傾くトラックの写真はずっとスクラップ帳の一角を占めていた。

映画のストーリーより鮮明に覚えているのが、南米の油田現場の汚らしさとトラックから運びだされる黒焦げの焼死体だった。(ってことは、ゴールデンタイムにそんな映像が流れていたワケである。ステキな時代だったなあ・・・)

そこで映画を観るのを止めたかというとそんなことはなく、道路を塞ぐ巨木とエンディングも覚えているから、最後までちゃんと観たのだ。多分、小学6年生くらい。

ただ、その頃はもっと見た目に派手な映画が面白い年頃だったので、大して印象に残ることもなく、そして40年。

オリジナル完全版として再公開である。

南米奥地の油田で爆発事故が発生、消火活動が追いつかないため、強力な爆発で周囲の酸素を吹き飛ばす消火に切り替え、爆発物を300キロ彼方から運搬することになる。ただし、爆発に使うダイナマイトは品質が劣化し、非常に不安定な状態になっており、奥地の村で逃亡生活を送っていた4人の男がジャングルの中を運ぶことになる。

というストーリーで、トラックが動き出すのは映画も1時間ほど進んでから。それまでは4人の犯罪と経歴に時間が割かれる。最初の日本公開時、興行上の不振から30分ほどカットされたが、まさにこういったシーンがカットされたのは想像に難くない。とにかく、前半がまどろっこしく感じる。

この4人が黙々とトラックを整備し、2台の6輪トラックのエンジンが唸りを上げだすとなんとカッコのいいことか。巨大メカの持つ暴力的な荒々しさがたまらない。40年前には当然、感じなかったろう。

4人のうち主人公はロイ・シャイダーなのだが、特にリーダーシップを取るでもなく、道中でも4人はほとんど口をきかず、最低限のことしか話さない。「右だ!」「左だ!」「止まれ!」「フカセ!」

前段で各人の過去は語られているので、映画的には再度説明する必要がなくて当然なのだが、前段がカットされていたら、全然面白みのない映画に見えたことは間違いない。不幸が不幸を呼んだとしか思えない。

映画の半分はジャングルの中だが、世界中をロケしたことは画面のそこかしこから伝わってくるし、メインビジュアルである吊り橋を渡るトラックのシーンは今では考えらない金のかかりようだ。(今なら、おそらくセット撮影かCG、良くてハワイロケ。)

登場人物の造形も暴力的な70年代を象徴するかのようであり、気の狂ったような映像表現とあわせて、あの時代の最後の砲火のようだ。スクリーンで観る吊り橋シーンの疲労感は半端ではない。建設しては実物をブチ壊していた金の掛かった映画が、スクリーンでリバイバルされるのは本当に得るものが多い。

この作品に欠点があるとしたら、主役のロイ・シャイダーかな。
中途半端に都会的で、南米の奥地で逃亡生活をしているような野性味とか負け犬感が感じられない。逆に都会的なヤサ男が一線を超えたような狂気にも乏しい。
前者を今の俳優で言うなら、ジョシュ・ブローリンとかジェラルド・バトラーと言った感じだし、後者ならライアン・ゴズリングとかキアヌ・リーブスという風になるんじゃないかと思うんだが、最後までパワー不足感が否めなかった。

ところで、ジャングルを進む気の狂ったような映画は本当に面白い作品が多い。「アギーレ/神の怒り」しかり「フィッツカラルド」しかり「地獄の黙示録」しかり。闇の奥は近い。






題名:恐怖の報酬
原題:SORCERER
監督:ウィリアム・フリードキン
出演:ロイ・シャイダー、ブリュノ・クレメール、フランシスコ・ラバル、アミドゥ

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 広島県立美術館特別展「サヴ... | トップ | ファースト・マン 4DX版 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

★★★★☆」カテゴリの最新記事