kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ONODA 一万夜を越えて

2022年01月09日 | 年間ベスト3
太平洋戦争後、比ルパング島に約30年間、潜伏していた小野田少尉をフランス人監督がどのように描くの興味深く、ぜひ観たかったのだが、上映時間3時間に二の足を踏んでいた。ようやく八丁座で公開されたので、劇場へ。

全編日本語、キャスティングも日本人なので、日本人監督が撮ったと言われても違和感がないくらい、日本的な映画だと思うのだが、小野田少尉と距離を置いた視線はやはり外国人なのかも知れない。

今の私からしても、30年間、ジャングルに潜むということがどういった心理状態なのか非常に興味があるし、監督もそういった点にも惹かれたのだと思う。
実際、秘密戦に配属されて、生き残りをかけ、時として狂信的な行動に走る小野田少尉の半生を史実にもほぼ正確にうまく描いている。密林で自活する様など、サバイバルネタ好きとしても参考になる点が多い。ただ自活だけでは生存できないから、野盗まがいのことをして殺し合いに発展していく点もシビアに描いている。
3時間という上演時間も長く感じさせないし、30年の経過を体感させるには必要な時間だったとも思う。

小野田少尉を演じた遠藤雄弥と津田寛治も戦争と一線を超えた人間の秘めた執念がにじみ出ていて忘れがたいのだが、キャスティングの中でひときわ輝いているのは谷口少佐を演じるイッセー尾形。
陸軍中野学校の教官、古本屋の亭主、過去を清算する元軍人という3つの顔を笑いに転ずる一歩手前でギリギリに演じるあたり、十八番芸だ。

最後、小野田少尉がヘリで帰国するところで映画は終わるが、そこで手を離したようにクレジットに転じるのはこの映画の本質を端的に示していたように思う。普通の映画だったらここで「1973年小野田は日本に帰国し、その後、ブラジルに移住。2013年没、享年91歳」とテロップが出るところだった。
日本人的には歴史の再現という視点で見てしまうが、むしろ特異な環境下で生きた人間を描くという視点を見るべきだし、そういった面で成功している映画だ。

ところで、ポスターのビジュアルアート、何度も言うがワタシではない。

評価:★★★★☆









題名:ONODA 一万夜を越えて
原題:GREENBOOK
監督:アンチュール・アラリ
出演:遠藤雄弥、津田寛治、イッセー尾形
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« カラミティ | トップ | 2021年ベスト映画 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

年間ベスト3」カテゴリの最新記事