今回の紹介「作品」は、『六月の綻び』の作・演出を手掛けた森聡太郎氏のもの。演出も同氏であり、助演は『六月の綻び』の〈弟〉役を務めた山本貴久氏です。その森氏より、『六月の綻び』鑑賞についてのお礼メールを受信しました。 ※下線・太字は筆者。一部抜粋。
森氏は――、
『この作品を通して主な目標としていた「普遍的な共感」ということが、達成できていたのかなと、大変嬉しく思いました。……まさに、本作品は「家族」という概念とその疑念についての「投げかけ」でした。実は、本公演のアンケートの欄には『あなたにとって、「家族」とはなんですか?」という欄があり、お客様方に沢山の意見を頂きました。
作品中に、私個人としての「家族」に対する哲学(答え?というのでしょうか)も書いてはいたのですが、アンケートや花雅美さんのブログを通して得られたものは、やはりそれを私個人の哲学を超えたものばかりでした。
まさに私の方が勉強させて頂いたと、公演後から常々感じておりました。同時に、ある意味で、私もようやく「表現者」というものの一人になれたのではないかと感じつつ、今後もせめて脚本だけでも書き続けていきたいなと思っております。』
それに対する筆者の返信は――、
『……「家族」というものは、百人百様ですね。人それぞれであり、優劣の問題ではありません。私のような人生経験の豊富な方が、つまりは失敗経験の多い方が、それだけいろいろな哲学や理想や対策を持っているということでしょう。
それでも貴兄の言葉にあるように「家族」とは、まさに「普遍的な共感」の対象です。人は本来、他人に「共感」したいと思っているように思います。共感できる部分を探しているのかもしれません。 』
森氏による、さらなる優れた「脚本」を期待したいと思います。
舞台「音響」に配慮を
ただ一つ気になったことは、『六月の綻び』の「音響」すなわち「BGM」が “大きかった” ことでしょうか。素晴らしい「台詞」の妨げになることは、避けて欲しいものです。
テレビドラマをあまり観ない筆者は、代わりに映画のDVDを年間120~150本観ています。それでも、ただの一度もその「BGM」をうるさいと思ったことはありません。つい1週間前も、『市民ケーン』と『欲望という名の電車』を観ました。それぞれ10回ほど観たようです。
「映画」も「舞台」も、「台詞」が正確に聞こえ、役者の声が、そしてその声を通した「メッセージ」がきちんと伝わって初めて意味があります。掲出の2本は「舞台感覚」の作品であり、「演劇」をする人に薦めています。
「BGM」のためだけではなく、「演技」及び「台詞」の “間” の取り方、「声」の抑揚、俳優同士の視線のやり取り、微妙な立ち位置など、昨今のTVドラマでは味わうことのできないカットやシーンの連続です。
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海峡演劇祭2014参加作品
【桜刀ーさくらがたなー】
◇作・演出/森聡太郎
◇助演/山本貴之
〈あらすじ〉
――男は鬼を求めて、鬼は刀を求めて、刀は桜をもとめた――
――戦争は人を喰って、涙は人を斬って、死体は砂となって散った――
桜の下で眠っていた一匹の鬼と一片の涙。
その桜と男たちは九百年の時を経て、 ようやく約束の春を迎えるのだ。
◇公演日時 ※開場は開演の30分前
2014年11月1日(土) 12:00~ 16:30~
2日(日) 11:00~ 15:00~
◇公演場所
◆関門海峡ミュージアム ※地図もあります。
海峡ドラマシップ 多目的ホール
福岡県北九州市門司区西海岸1-3-3
Tel: 093-331-6700 Fax: 093-331-6702
※JR門司港駅より徒歩5分
◇観劇料金
・前売り:1500円 ・当日:1800円
・学生:1000円(要学生証提示)
※「前売り券」をお買い求めの際は、併せて「お席」を「ご予約」ください。「ご予約」がなされていない場合は、「前売り券」をお持ちでも「お席」の確保ができなくなります。