犬がおるので。

老犬から子犬まで。犬の面倒をみる暮らし。

わしの陣地。

2015年10月22日 | おせわがかり日誌


うちの犬たちの間では暗黙の了解というのか、居場所のとりきめがあるらしい。

オレコは居間と和室、こんちゃんは寝室とお風呂場&洗面所を縄張りとしているようだ。




わたしが洗面所で用事をしていると、音もなくこんちゃんがやってきて、すぐ後ろのマットでドーナツ型になっている。

ほんとに静かなので、いることがわからなくて、時々ぶつかってしまうのだが、そんなとき、こんちゃんは私を見上げ、



「ここはわしの陣地じゃが、おかあさんは使っていいとしよう」



と言っているようなのだ。



「あ、ありがとうね」



いやいやいやいや。

ついお礼を言ってしまいそうになるのだが、

このおうち法律的には、お父さんとお母さんのおうちですけど、

とかなんとかいいながら、移動すると次の場所へとついてきて、

「わしの陣地」じゃないところへ入ると、ぷい、とゲージに戻っていく。

そしてまたわしの陣地に入っていくと、むっくり起きて「なんじゃなんじゃ」とついてくる。





・・・面白い。






誰かがおふろに入るときなどは、



「それではわしも・・・」



といって、ひとの足元からするりとお風呂場に入る。

一緒に入ってどうするつもりかしらないが、だめだよと笑われて、外に出され、

「なんじゃーこのー」といいながら、しばらく、バスマットの上に丸くなって待っている。

時々頭をあげて中の様子を見守り、まだまだかかるな、と判断するのか、飽きたのか、

いつまでもじっとはしていなくて、また、ゆっくりゲージに帰っていく。

家族が入浴するときは必ずやる。




それとは別に、誰も入浴していないときも、時々見回りにやってきて、

風通しをよくするために完全には締め切らない扉の、ほんの少しの隙間に頭を突っ込み、

ぐいぐいぐいぐいと、無理矢理に中に入り、誰もいないことを確かめると、今度は中から外へ、

同じように頭をつっこんで、ぐいぐいぐいぐいと扉を開けて、無理矢理に出てくる。

これを私は巡回と呼んでいる。




そういえば、御風呂場、洗面所のほかに、玄関や居間のベランダにも行くことがある。

夜など、自分の巣で静かに眠っているなー、と思うと、ちゃっちゃっちゃっちゃという爪の音がして、

誰も頼んでいないのに玄関へ行き、暗い中じーっと立ち止まって何かを確認し、満足すると戻ってくる。

ベランダに対しても同じである。

「ちゃんとしまってるでしょ」

と声をかけるとちょっと振り返り、アイコンタクトをとってから、また巣に戻っていく。




玄関とベランダに関しては、自分の陣地というよりはオレコとの共有部分という認識のようなのだが、

自分の陣地同様に、巡回はちゃんとしてくれるのである。誰も頼んでいないけど。

そういう謎の行動の一部始終(犬の専門家にはなんだかわかるのかもしれないけど)が、いちいちおかしくて、いちいちかわいい。




ふだん後追いをする子ではないのだけれど、私たちが彼の陣地に入るとやってきて、ずっと側に寄り添ってくれる。

その寄り添い方が実にやさしくて、いつの間にかやってきて、ただ静かにそこにいるだけなのだけど、姿を発見すると、ちょっと心が温まる。

ついていてあげようというやさしい気持ちなのか、わしの陣地で勝手なことをしたら許さぬという気持ちなのか。

何を考えているのだろうなあ。




オレコもトシをとったらこんなことをするのかなあ、

それともこれはこんちゃんだけだろうか、なんて考えながら、

ドーナツ型になっているこんちゃんの頭を撫でた。