
会社を辞める人から餞別にいただいた古本。
「なんか書いて」とお願いしたら、さらさらと書き始めました。
著者の似顔絵を描き、吹き出しを作り、「ぼくカーヴァー。小説がんばって書いてね。ファイアー!」と。
ファイアズとは、作家に必要なもの。それが何なのか、読むとじわじわわかってきます。
エッセーと詩と短篇小説が収められています。そんな三つ巴の本は初めてでした。
何か生きていて引っかかるもの、違和感を覚えるものが書かれているようです。
解説も説明もなく、ごろっと、ざらっと。
作家の炎によって、それらは見えるようになり、感じられるように仕上げられている。
美しくもないし、人によっては避けたい部類の物事かもしれない。
でも、本に仕上げられたことで、読む人の違和感をあぶりだす炎となる。
その意味でファイアズは、単に作家に必要な炎だけにとどまらず、生きる人みなに必要な生命力とも言えそうです。
エッセーの中に、作家になるような人は、切れる頭は必要でなく、何かに引っかかり、ぼーっと立ち尽くすような人が向いている、というような箇所があります。
私は学生時代、よくベランダでぼーっとたたずんでいました。
高校生のときからその気はあった。あの時間を思い出します。
書きたかったんだろうな、と今は思う。ただ、炎が弱く、焼く対象も定まらず、また使い方も知らなかった。
自分が燃えている、と明らかに感じたのは、走るようになってから。
東日本大震災を受けてから。
そこからはオレンジ色が好きになり、今はさらに高温の青白さが好きになっている。
あるいはその前にこの本を読んでいたら着火されていたのかもしれない。
確かに、この本は私には必要でした。
贈ってくれた人に感謝。お互いに、ファイアー!
レイモンド・カーヴァー著/村上春樹訳/中央公論新社/1992
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