「石橋美術館物語ー1956久留米からはじまる」展を観てきました。さよなら特別展シリーズの掉尾を飾る展覧会です。出品作は石橋美術館コレクションに、ブリヂストン美術館所蔵の作品を加えた120点ほどです。展示品の中で5点が重要文化財ですが、4点は石橋美術館所蔵です。
本展はタイトルにもあるように、石橋美術館の誕生から今日までの60年に及ぶ歴史とその活動がテーマとなっています。展示構成の第1章は「東西の名画を」ですが、ブリヂストン美術館所蔵品が中心です。
石橋美術館は東西の名画を見られる美術館として、また久留米出身の画家たちを紹介する美術館として、石橋正二郎氏の寄付により昭和31年、九州で3番目の美術館として開館しました。
展覧会では第2章以下、久留米出身の青木繁、坂本繁二郎、古賀春江などを中心としながら、内外の著名な画家たちの絵が展示されています。
出品作の中からポストカードと図録より紹介します。
「モンマルトルの風車」1886年 フィンセント・ファン・ゴッホ
ゴッホは1890年に亡くなっていますので、これは晩年の作品です。
「針仕事」1890年 黒田清輝
この絵は昔から石橋美術館で馴染んだ絵です。久し振りに観ました。石橋美術館でのポストカード売り上げナンバーワンだそうです。親しみやすいのでしょう。
「すわるジョルジェット・シャンパルティエ嬢」1876年 ピエール=オーギュスト・ルノワール
「黒扇」 1908~09年 藤島武二
ブリヂストン美術館所蔵です。今回出品の大部分は以前に見たことがあり、懐かしさも感じます。
「動物園風景」 1937年頃 長谷川利行
場所は上野動物園でしょうか。石橋美術館所蔵ですが、初めて観た気がします。行楽の楽しさが伝わってきます。
「薔薇」 1932年 安井曾太郎
ブリヂストン美術館所蔵です。色のタッチが力強く感じます。
「自画像」 1878-79年 エドゥアール・マネ
マネの自画像は2点あるそうです。
「サント=ヴィクトァール山とシャトー・ノワール」 1904-06年 ポール・セザンヌ
前から好きだった絵です。ブリヂストン美術館所蔵品ですが、石橋美術館で何度か観たことがあります。
「ピエロ」 1925年 ジョルジュ・ルオー
「広告貼り」 1927年 佐伯祐三
石橋美術館所蔵です。いかにも佐伯祐三だという絵です。
「オーケストラ」 1942年 ラウル・デュフイ
楽団員や楽器が音符のようにリズミカルに感じます。音楽を絵にしたらこうなるのかな、と思いました。
「海の幸」 1904年 青木繁
私は色使いも含めて、未完成のような「海の幸」よりも、しっとりとした「わだつみのいろこの宮」を好んでいました。これが最後だと思って観ましたが、力強くリズム感があって好感を持ちました。
写真では紹介していませんが、パブロ・ピカソの「腕を組んですわるサルタンバンク」が来ていました。ギリシア彫刻のように端正な顔と赤が印象的な作品で、ピカソの中でも好きな一品です。出張時に東京で見て以来、久しぶりでした。
本展は「石橋美術館物語」とあるように、絵画と併せて各章で石橋美術館のこれまでの活動や、当事の写真が関連して展示されています。
石橋美術館では常設展のほかに、数多くの特別展を開催してきました。私もずいぶん通いましたが、ロートレック展や大原コレクション、パウル・クレー展などの名前を聞くと懐かしく思い出します。若い時の方が印象に残っていますね。
その中に「ピカソ・ゲルニカ展」がありました。1963年2月23日~3月10日までの開催。中学生のころに観た覚えがありました。しかし国立西洋美術館のサイトでは、巡回先が東京の他は京都市美術館と愛知県美術館となっていたので、記憶違いと思っていました。
石橋美術館の特別展での入館者記録は、同じく1963年に開催された国立西洋美術館所蔵の松方コレクション展で、102,987人を記録しています。その時の様子を撮った写真を図録から引用します。向こうに見えるのが増改築前の石橋美術館です。入館を待つ長蛇の列です。開館当初は白亜の建物でした。
九州にまだ美術館が少なかった時代で、人びとの熱狂が伝わってきます。石橋美術館のコレクションと活動は全国的な水準であり、他館との交流もありました。石橋美術館は本展をもってその活動を終え、10月からは久留米市美術館となります。今後は目に見えない形で地域文化に影響が出てくるでしょう。
私の人生のなかで親しんできた美術館でもあり、見応えのある展覧会でした。家内がまだ観ていないので再訪するつもりです。 会期は8月28日まで。
展覧会のあと、菖蒲池の橋を渡っていたら雀がいました。人懐っこく、近づいても飛び立ちません。なかなか威厳のある風貌をしています。
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