早朝3時、携帯のアラームで目が覚めた。
夢も見ずぐっすり寝た。
枕が変わっても平気なタイプ、宿のお布団は気持ちが良かった。
早く寝たとはいえ、やはりまだ眠い。
ゆっくりと体の覚醒を促しながら、外出の準備を始めた。
まだ初秋とはいえ、山の上はかなり寒いはず。第3展望台は吹きっさらしの場所だったから、風が強くなる可能性がある。
やわらかいスキニージーンズの上に、風を通さないカーゴパンツで保温対策。
ハイネックのTシャツで首元を保護してフリースを重ね着、その上は薄手のジャケット。
そして、出発。
つづら折りの道を登る軽自動車のエンジン音が、暗闇の林に響いている。
前からも後ろからも、他の車は来ない。
光るものを見つけたら、それはエゾジカの目。
大きな角をはやした雄や小鹿かな?と思うような可愛らしい子も居た。
彼らにとって自由な夜の時間を、私は邪魔しているのだ。
「ごめんね、ぶつからないようにゆっくり行くからね。」
第3展望台の駐車場に、車はなかった。
夜景や朝景を狙うカメラマンがすでに居るかもしれないと思っていたけど、ただひっそりとしている。
車のライトを消すと、本当に真っ暗だ。
防寒用のコートで全身を覆い、諸々を入れたリュックを背負い、カメラをぶら下げ、三脚を抱え、懐中電灯を点灯して、いざ、暗闇の展望台へ。
階段も手すりも崖側の柵も整備されているし、1分程度で到着する展望台の先端。
それでも、真っ暗な中を歩くのは、少し恐怖する。私も、一応「女」なので・・・。
朝4時、空は、もうすでにブルーアワーになっていた。オリオンが見える。
あれは、明けの明星か?雲のベールを通しても、はっきりと光っている金星・・・でいい?
カムイヌプリ(神の山)の陰になって、湖の南側が暗い。
何枚か写真を撮っていると、後ろから女性の声がした。
「ああ、良かった、女の人が居て!」
「あ、おはようございます。」
「誰もいないと怖いな、と思ってたんです~。」
「やっぱり、女性一人って、怖いですよね。」
そんな会話を交わした彼女も、三脚を立ててカメラをセットしていた。
そのうち、どんどん人が登ってきて、展望台には10人近くの人が集まっていた。
皆、雲海を期待しているのだ。
けれど、霧の気配はない、風も強すぎる。
気づけば、直ぐ近くで若い女性がぶるぶる震えていた。
「大丈夫ですか?」
「寒いですね、・・・甘く見てました。」
ダウンジャケットを着ているけれど、完全防備の私から見ると、彼女はかなりの薄着に思える。
可哀そうすぎて、ホッカイロをあげたけれど、そんなものは焼け石に水。
私のコートを貸してあげたいけれど、そうすると、老女の身がもたない。
リュックの中に手を突っ込んで、1枚のビニールを見つけた。
撮影の時、膝をつくような場面で使えるように入れておいたものだ。
「これ、腰に巻くと少しは風よけになりますよ。」
「え~!何から何まで、すみません!・・・、ホントだ!あったかい!」
ビニールは体温保持にはもってこい。
これで少しは我慢できるだろう。
「いつも撮りに来るんですか?」と、腰にビニールを巻いた彼女が聞いてきた。
「いえ、ここは初めて。」
「どこから?」
「旭川です。あなたは?」
「横浜。」
「あらまぁ、遠くから・・・。でも、雲海はダメみたいで残念ですね。」
「でも、連泊であと1日あるんです。明日に期待します。」
「そう!見られるといいですね。」
そんな話をしているうちに、太陽が見え始めた。
けれど、広がる雲がすぐにその姿を消してしまう。
これから雲が流れて晴れますように・・・
腰巻きビニールの彼女は、「温泉で暖まります!」と言い、お互いに「気を付けて。」と挨拶してから私も山を下りた。
宿に戻るとすぐに酸っぱいお湯に浸かって大きく息を吐く。
写真はイマイチだな、と この時点で分かっていた。
失敗はいっぱいあった。
立ち位置もアングルもピントも、考えるとキリがない
でも、とても幸せだった。
あの場所に身を置いていた時間が、自分にとってのご褒美なんだ。
誰からの?
神様?自然?・・・いや、自分からの・・・自分へのご褒美♪
夢も見ずぐっすり寝た。
枕が変わっても平気なタイプ、宿のお布団は気持ちが良かった。
早く寝たとはいえ、やはりまだ眠い。
ゆっくりと体の覚醒を促しながら、外出の準備を始めた。
まだ初秋とはいえ、山の上はかなり寒いはず。第3展望台は吹きっさらしの場所だったから、風が強くなる可能性がある。
やわらかいスキニージーンズの上に、風を通さないカーゴパンツで保温対策。
ハイネックのTシャツで首元を保護してフリースを重ね着、その上は薄手のジャケット。
そして、出発。
つづら折りの道を登る軽自動車のエンジン音が、暗闇の林に響いている。
前からも後ろからも、他の車は来ない。
光るものを見つけたら、それはエゾジカの目。
大きな角をはやした雄や小鹿かな?と思うような可愛らしい子も居た。
彼らにとって自由な夜の時間を、私は邪魔しているのだ。
「ごめんね、ぶつからないようにゆっくり行くからね。」
第3展望台の駐車場に、車はなかった。
夜景や朝景を狙うカメラマンがすでに居るかもしれないと思っていたけど、ただひっそりとしている。
車のライトを消すと、本当に真っ暗だ。
防寒用のコートで全身を覆い、諸々を入れたリュックを背負い、カメラをぶら下げ、三脚を抱え、懐中電灯を点灯して、いざ、暗闇の展望台へ。
階段も手すりも崖側の柵も整備されているし、1分程度で到着する展望台の先端。
それでも、真っ暗な中を歩くのは、少し恐怖する。私も、一応「女」なので・・・。
朝4時、空は、もうすでにブルーアワーになっていた。オリオンが見える。
あれは、明けの明星か?雲のベールを通しても、はっきりと光っている金星・・・でいい?
カムイヌプリ(神の山)の陰になって、湖の南側が暗い。
何枚か写真を撮っていると、後ろから女性の声がした。
「ああ、良かった、女の人が居て!」
「あ、おはようございます。」
「誰もいないと怖いな、と思ってたんです~。」
「やっぱり、女性一人って、怖いですよね。」
そんな会話を交わした彼女も、三脚を立ててカメラをセットしていた。
そのうち、どんどん人が登ってきて、展望台には10人近くの人が集まっていた。
皆、雲海を期待しているのだ。
けれど、霧の気配はない、風も強すぎる。
気づけば、直ぐ近くで若い女性がぶるぶる震えていた。
「大丈夫ですか?」
「寒いですね、・・・甘く見てました。」
ダウンジャケットを着ているけれど、完全防備の私から見ると、彼女はかなりの薄着に思える。
可哀そうすぎて、ホッカイロをあげたけれど、そんなものは焼け石に水。
私のコートを貸してあげたいけれど、そうすると、老女の身がもたない。
リュックの中に手を突っ込んで、1枚のビニールを見つけた。
撮影の時、膝をつくような場面で使えるように入れておいたものだ。
「これ、腰に巻くと少しは風よけになりますよ。」
「え~!何から何まで、すみません!・・・、ホントだ!あったかい!」
ビニールは体温保持にはもってこい。
これで少しは我慢できるだろう。
「いつも撮りに来るんですか?」と、腰にビニールを巻いた彼女が聞いてきた。
「いえ、ここは初めて。」
「どこから?」
「旭川です。あなたは?」
「横浜。」
「あらまぁ、遠くから・・・。でも、雲海はダメみたいで残念ですね。」
「でも、連泊であと1日あるんです。明日に期待します。」
「そう!見られるといいですね。」
そんな話をしているうちに、太陽が見え始めた。
けれど、広がる雲がすぐにその姿を消してしまう。
これから雲が流れて晴れますように・・・
腰巻きビニールの彼女は、「温泉で暖まります!」と言い、お互いに「気を付けて。」と挨拶してから私も山を下りた。
宿に戻るとすぐに酸っぱいお湯に浸かって大きく息を吐く。
写真はイマイチだな、と この時点で分かっていた。
失敗はいっぱいあった。
立ち位置もアングルもピントも、考えるとキリがない
でも、とても幸せだった。
あの場所に身を置いていた時間が、自分にとってのご褒美なんだ。
誰からの?
神様?自然?・・・いや、自分からの・・・自分へのご褒美♪