見出し画像

旅日記

望洋−68(ポツダム宣言)

40.連合国の統治方針(続き−1)

40.3.トルーマンの日本国民に対する声明

ドイツが降伏した昭和20年(1945年)5月8日にハリー・トルーマン米大統領が発表した対日声明文は、トルーマンの写真付きで日本語に訳されビラとして投下された。

トルーマンは、日本国民と軍部とを明確に区別しながら、日本軍が無条件降伏するまで攻撃を続けると警告した。

同時に、日本軍の無条件降伏は、日本国民の「抹殺」や「奴隷化」を意味するのではなく、むしろ日本を「破滅の淵に誘引」している軍部の消滅、前線で戦う兵士たちの「愛する家族」のもとへの復帰、そして「現在の艱難苦痛」の終わりを意味すると説いた。

<投下されたビラの一部>

40.4.米国の「初期対日方針」

日本本土侵攻を目前に控えた昭和20年(1945年)4月、米陸軍省の要請に応じて国務省は、ほぼ一年前に作成した文書「米国の対日戦後目的」を基に「初期対日政策の要綱草案」を新たに作成した。

これは、国務・陸・海軍三省調整委員会(SWNCC)の極東小委員会に提出され、陸軍省から経済政策面での補強を求められた。

そして、6月11日に国務省は対日政策の基本文書(SWNCC150)をSWNCCに提出した。

その後、7月末に発表されたポツダム宣言を受けて、直接軍政を規定したSWNCC150は修正された。

さらに、日本の降伏が予想外に早まったため、緊急措置として修正案作成の主導権は対日占領の直接命令者である陸軍省に移された。

陸軍省が大幅な修正を加えたSWNCC150/3では、天皇を含む既存の日本の統治機構を通じて占領政策を遂行するという間接統治の方針が明確化される一方、主要連合国間で意見が相違する場合には米国の政策がこれを決定するとの一節が挿入された。

その後、同文書は統合参謀本部による修正を取り入れ、8月31日のSWNCC会議で承認された

(SWNCC150/4)。続く9月6日に大統領の承認を得て、22日国務省がこれを発表(SWNCC150/4/A)、日本では24日付けで各紙に報道された。

< SWNCC150/4/A >

降伏後の日本に対する米国の当初の政策(SWNCC150/4)

文書の目的

この文書は、降伏後の日本に関する一般的な当初の政策を表明することを目的としている。

大統領の承認後、この文書は、指導のために適切な米国の省庁および機関に配布される。

この文書は、政策決定を必要とする日本占領に関するすべての問題を扱っているわけではないことを認識しており、ここに含まれていない、または十分にカバーされていない問題に関する政策は、後続の文書で扱われる。

第 1 部  最終目的

米国の対日政策の初期段階における最終目標は、以下のとおりである。

(a) 日本が再び米国または世界の平和と安全に対する脅威とならないようにすること。

(b) 他の国の権利を尊重し、国連憲章の理想と原則に反映されている米国の目的を支持する、平和で責任ある政府の最終的な樹立をもたらすこと。

米国は、この政府が可能な限り民主的自治の原則に従うことを望んでいるが、国民の自由に表明された意思に支えられていないいかなる形態の政府も日本に押し付けることは連合国の責任ではない。

これらの目的は、以下の主要な手段によって達成される。

(a) 日本の主権は、カイロ宣言および米国が参加している、または参加する可能性のあるその他の協定に従って、本州、北海道、九州、四国、および決定されるその他の小さな離島に限定される。

(b) 日本は完全に武装解除され、非軍事化される。

軍国主義者の権威および軍国主義の影響は、日本の政治、経済、および社会生活から完全に排除される。

軍国主義および侵略の精神を表明する機関は、厳しく抑圧される。

(c) 日本国民は、個人の自由と基本的人権、特に宗教、集会、言論、出版の自由を尊重する欲求を育むよう奨励されるものとする。

また、民主的で代表制のある団体を結成するよう奨励されるものとする。

(d) 日本国民は、国民の平時の要求を満たすことができる経済を自ら発展させる機会を与えられるものとする。


SWNCC150/4では、占領の究極目的として、平和的で責任ある政府の樹立と自由な国民の意思による政治形態の確立をうたっていた。

これに対して外務省は、9月30日付けの「降伏後ニ於ケル米国初期対日方針説明」において、米国は天皇制を含む日本の統治形式の存続を保障している訳ではなく、「過去の経緯」及び「自国の利害打算」から、変革が外部から強要された形を取ることを避け、日本の政府、国民が「自発的」に現存の統治制度を改革することを期待していると分析した。

以下2部から4部まで記述されているが、その部分は省略する

第2部 連合軍の権限
①軍事占領
②日本政府との関係
③政策に関する広報

第3部 政治 
①軍縮と非軍事化
②戦争犯罪者
③個人の自由と民主的プロセスへの欲求の奨励

第4部 経済 
①経済的非軍事化
②民主勢力の促進
③平和的な経済活動の再開
④賠償と賠償
⑤財政、金融、銀行政策
⑥国際貿易と金融関係
⑦海外にある日本の財産
⑧日本国内における外国企業への機会均等
⑨皇室の財産

 

40.5.ポツダム宣言

昭和20年(1945年)7月26日、ドイツのベルリン郊外ポツダムにおいて、英国、米国、ソ連の連合国主要3カ国の首脳(チャーチル英首相、トルーマン米大統領、スターリンソ連書記長)が集まり、第二次世界大戦の戦後処理について討議された(ポツダム会談)。

この会議後、チャーチル首相と中華民国の蔣介石国民政府主席およびトルーマン大統領の3首脳連名で日本に対して発せられた降伏勧告が宣言された。

いわゆる「ポツダム宣言」である。

宣言は1〜13項から成っており、その1〜5項は威圧を与え受諾を迫るもので、6項以降が受諾の条件のようなものである。

9項では外地の日本兵の帰還を進めている。

しかし、ソ連のスターリンは「ポツダム宣言に」同意すると公表したが、日本軍捕虜をシベリア抑留し、ポツダム宣言を早くも無視したのである。

また、ポツダム宣言の10項で「・・・言論、宗教、思想の自由及び基本的人権の尊重はこれを確立する・・」としているが、占領後の9月10日には「新聞報道取締方針」「言論及び新聞の自由に関する覚書」を出し言論統制に踏み出している。

状況によって約束を一方的に反故にする、これが勝者である。

<ポツダム宣言和訳文>

1、吾等、米合衆国大統領、 中華民国主席及び英国本国政府首相は、吾等の数億の民を代表して協議し、この戦争終結の機会を日本に与えるものとすることで意見の一致を見た。

2、米国、英帝国及び中国の陸海空軍は、西方から陸軍及び空軍による数倍の増強を受けて巨大となっており、日本に対して最後の打撃を加える体制が整っている。

この軍事力は、日本がその抵抗を止めるまで、戦争を完遂しようとするすべての連合国の決意によって鼓舞されかつ維持されている。

3、蹶起した世界の自由なる人民の力に対するドイツの無益かつ無意味な抵抗の結果は、日本の人民に対する洗礼として、極めて明白に示されている。 

現在日本に向かって集中しつつある力は、ナチスの抵抗に対して用いられた力、すなわち全ドイツ人民の生活、産業、国土を灰燼に帰せしめるに必要だった力に較べてはかりしれぬほど強大である。

吾等の決意に支えられた吾等の軍事力を全て用いれば、不可避的かつ完全に日本の軍事力を壊滅させ、そしてそれは不可避的に日本の国土の徹底的な荒廃を招来することになる。

4、無分別な打算により、日本帝国を滅亡の淵に陥れた、身勝手な軍国主義的助言者に支配される状態を続けるか、あるいは日本が正しい道理の道に従って歩むのか、その決断の時はもう来ている。

5、以下は吾等が示す条件である。 

条件からの逸脱はないし、代替条件はない。

また遅延は一切認めない。

6、吾等は世界から無責任な軍国主義が駆逐されるまでは、平和、安全、正義の新秩序は実現不可能であると主張する。

だから、日本の人民を欺き、誤らせ世界征服に赴かせた、影響力及び権威・権力は永久に排除されなければならないのである。

7、このような新秩序が確立せらるまで、また日本における好戦勢力が壊滅したと明確に証明できるまで、連合国軍が指定する日本領土内の諸地点は、当初の基本的目的の達成を担保するため、連合国軍がこれを占領するものとする。

8、カイロ宣言の条項は履行されるべきものとし、日本の主権は本州、北海道、九州、四国及び吾等の決定する小諸島に限定するものとする。

9、日本の軍隊は、 完全な武装解除後、平和で生産的な生活を営む機会と共に帰還を許されるものとする。

10、吾等は、日本を人種として奴隷化するつもりもなければ国民として絶滅させるつもりもない。

しかし、吾等の捕虜を虐待したものを含めて、すべての戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を加える。

日本政府は、日本の人民の間に民主主義的風潮を強化しあるいは復活するにあたって障害となるものはこれを排除するものとする。 

言論、宗教、思想の自由及び基本的人権の尊重はこれを確立するものとする。

11、日本はその経済を支持し且つ公正なる実物賠償の取り立てを可能にする産業を維持することは許されるものとする。

但し、日本が戦争の再軍備を可能にするような産業は、この限りにあらず。

この目的のため、原材料の入手(その支配とは区別する)はこれを許される。

世界貿易取引関係への日本の、将来の貿易関係への参加はこれを許すものとする。

12、連合国占領軍は、前記諸目的達成後そして日本人民の自由なる意思に従って、平和的傾向を帯びかつ責任ある政府が樹立されるに置いては、直ちに日本より撤退するものとする。

13、吾等は日本政府に対しすべての日本軍隊の無条件降伏の宣言を要求し、かつそのような行動が誠意をもってなされる適切かつ十二分な保証を提出するように要求する。 

上記以外の日本の選択は即座にかつ完全なる壊滅であるのみとする。

 

 

<続く>

<前の話>   <次の話>

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「物語(望洋)」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事