南通の話
1.南通概要
南通市は江蘇省東南部に位置し、南側が長江(揚子江)に面しています。上海から長江を約120Km遡る位置にあります(上海から車で約2時間の距離です)。
南通は、長江の土砂の堆積により陸地が形成され、およそ6500年前に陸地化したそうです。
日本から南通に行くのは、以前は飛行機で上海(浦東又は虹橋)まで行って、ここから車で行きましたが、最近は関空や中部国際空港から南通空港まで直行便(関空からは週に4日、一日一便、中部国際空港からは週に2日、1日1便 が運航しています)が出来ましたので、移動時間は短くなりました。
上海から南通に行くに長江を渡らなければなりません。2008年に蘇州市と南通市を結ぶ蘇通長江公路大橋が完成するまではフェリーで長江を渡っていましたが、この蘇通長江大橋が完成してからかなり便利になりました。橋の全長は約32Kmで長江かかる部分の長さは8,146mです。
また長江河口の長興島と崇明島を経由して長江を渡る橋(一部河底トンネル)である「上海長江隧橋 2008年完成」と「崇光橋 2011年完成」ができたので、このルートを通って南通に行くこともできます。
南通には多くの方言があります。これは南通が交通の要衝であり、各時代に移民がきた歴史と関係するそうです。また放言混在地区もあり2種類以上の放言を話すことができるそうです。
南通市では夏は暑く、湿度も高いです。38度以上になること良くあります。
また冬は非常に寒く風も強いです。南通に住んでいると季節は夏か冬の時期が長く、春や秋の季節はあっと言う間に過ぎていく感じがします。
江蘇省内で南通市は、蘇州市、南京市、無錫市に次いで第四の経済規模を持っています。
特に南通経済技術開発区は日本企業が多く進出しています。南通経済技術開発区は1984年に中央政府の批准により設立され、中国で最初に誕生した14カ所の国家級経済技術開発区の一つです。
この開発区の管轄面積は184K㎡、人口30万人に及び、工場エリアのほか、居住エリアや公共施設も同時に整備され、一つの街と言ってよいほどの規模です。
2.南通市までのルート
<上海浦東空港から南通までのルート>
長興島と崇明島を経由して行くルート。但し公共のバスに乗ると蘇通長江大橋を通るルートになります。
<上海虹橋空港から南通までのルート>
蘇通長江大橋を渡っていきます。
<南通空港からのルート>
3.南通風景
<狼山>
<濠河>
<南大街 風景>
<長江>
4.南通のある日本企業に関する話
南通には特に有名な観光地もなく、地味な都市であるとの印象ですが、住んでみると色々面白いこともありました。
また南通は日本企業が多いせいか反日も強くはありません。
街を歩いていても暴言を受けたこともありません。
2012年の反日活動が盛んな年は市内でのデモはあったが、割と整然とした行列行進でした。
もちろんその時は日本人は街に繰り出してはいません。
また日本料理などの看板は覆い隠していました。
ただこの年の7月28日、王子製紙に関することで暴徒と化した群衆が政府庁舎に乱入し、地域のトップである共産党書記は糾弾された揚げ句、衣服を剥ぎ取られたことがありました。
王子製紙南通工場の排水計画を巡り、排出口が設置される予定の南通市啓東地区で7月28日早朝にデモが起こり、一部が暴徒化したものです。
デモ隊は、日本への反感を口にする参加者もおり、計画を推進する地元政府トップを「売国奴」と批判し、地元政府庁舎前の広場を占拠しました。
当初静観していた警察側は、暴徒化してからは武装警官を投入し鎮圧を図りました。
江蘇王子製紙から中国江蘇省の南通市啓東地区を通って約100Kmの排水パイプラインを敷設(南通市が施工)するもので、この建設に反対するデモが暴走したものです。
排水先の塘蘆港は有名な漁港で、水産業への影響を懸念する声は以前からあったようで、さらに「排水には発がん性物質が含まれている」とのうわさが広がり、それが住民の強い反発を招いたものです。
このうわさは事実無根だったのですが、このパイプライン計画は白紙に戻りました。
『どこの国でも工場排水には水質基準(中国の基準は日本より厳しい所もあります)がありこれを守れば排出が可能です。
1Km以内に長江(揚子江)があるのに、何故100Kmパイプラインを作って黄海に排出しようとしたのでしょうか?不思議です、どんな思惑があったのでしょうか?』
この問題は、南通市が、排水パイプラインの替わりとして、「中水回用設備」という設備を建設することで解決しました。
この設備で排水を更に浄化し、「中水」として緑化や工場で再利用することにより、海や長江に排水を流さずにリサイクルするようにしたそうです。
この時期から南通では工場排水に対して規制や排水処理設備の設置基準等が厳しくなっています。
固形廃棄物処理をする会社が厳しく監督されるようになり南通市内の廃棄物処理能力が低下しました。
いままで私たちの工場廃棄物の一部は外部の処理会社に依頼して処理していたのですが、これを引き受けてくれる会社が少なくなってきました。
このため、新たな処理会社を探すまで工場内に廃棄物を保管せざるをならなくなったこともありました。
製品を生産すると廃棄は必ず発生します。
生産量が急増し、また環境問題もクローズアップされ処理基準も厳しくなっていく中で、廃棄物の処理能力や設備が間に合わなくなってしまったのでしょう。
現在はどうなっているか分かりませんが、中国の環境に関する法律は厳しい基準が設けられていますが、確実に順守されているかどうかは疑問でした。
日本企業は遵守していますが、中国企業は法令より既得権や慣習が優先されており齟齬が生じているのは確かでした。
<完>
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