その聖堂(カテドラル)がまちで1番高い建造物である。
今回の旅でもそれを証明するかのように、
アウトバーンからのぞむ村々には、かならず教会が建てられていた。
チボーさんのバスが、(上記の定義からいえば)奇妙な教会に立ちよった。
アルプスの山々をバックにした牧草地に、白堊の教会がポツンと建てられている。
「ヴィース教会」というらしい。
「ヴィース」(wies)とは「草原」の意らしく、
文字どおり「草原の教会」ということになる。
このヴィース教会は世界遺産に指定されていて、年間100万人が訪れる。
外観はなんの変哲もない教会だが、内装はロココ様式の最高傑作といわれるほど壮麗を極めている。
もともとは小さな礼拝堂だったが、
ヨーロッパ中のカトリック信者たちの寄付によって、現在のようなかたちになった。
ヨーロッパ中の信者たちの心をつかんだ事件が、18世紀半ばにおきた。
それが「牧場の奇跡」である。
この地方の祭祀のために、1730年につくられた「鞭打たれるキリスト像」というのがあった。
しかしその悲惨な姿のために飾られることなく、いつしか修道院の屋根裏に放置されていた。
それを哀れに思った農婦マリア・ロリーは像を譲り受け、数ヶ月のあいだ、熱心に祈りを捧げつづけた。
ある日の夕方とその翌朝、奇跡がおきた。
「鞭打たれるキリスト像」が涙を流したのだ。
日にちもハッキリしている。
1738年6月14日の夕方と翌朝のことだった。
その像を安置するために建てられたのが、ヴィース教会である。
この奇跡はまたたく間にひろまって、
やがて近隣諸国からも多くの巡礼者が訪れるようになった。
僕はこの手の神話めいた伝承は信じないが、
この奇跡には複数の目撃証人がいたらしいので、事実なのだろう。
なんらかの原因で、木像の顔に水滴がついたり、水が滲みだしたりしたのが、
涙に見えたのかもしれない。
それにしても、信仰のパワーというものはすさまじい。
本来、生活に密着していただけの田舎の礼拝堂を、
寄付による建築や絵画などの装飾によって、世界遺産に指定されるまでの文化財に仕立てあげた。
この稿は、じつはヴィース教会のことをくどくど説明する気はなかった。
今回の旅で訪れたさまざまな教会で感じた
キリスト教(とくにプロテスタンティズム)と浄土真宗の類似点について書こうと思い
PC にむかったんだけど、話がつい脇にそれた。
ながくなったので、そのテーマについては他の機会にゆずることにする。
チボーさんのバスは、ヴィース教会をあとにして、いよいよオーストリアへ。
モーツァルトの生誕地であり、チボーさんの現在のホームタウンである
ザルツブルグがつぎの目的地だ。
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