下高井戸
下高井戸の駅を降りると、
いつもトキメキと切なさが同時に去来する。
いつ以来だろう?
ひさしぶりに下高井戸をぶらついた。
19の秋、初めてこの街を訪れた。
それまで僕は、「shimotakaido」という音から、
「しもた街道」と勘違いしていた。
駅に着いて、「下高井戸」だということに初めて気づいた。
それ以来、僕は何度もこの街を訪れることになる。
京王線の駅をでて、日大通りを桜上水方面に歩く。
踏切付近にマックがあって、よくチーズバーガーを食べた。
左手に小学校があって卒業記念の壁画が楽しかったが、今はもうない。
交番を過ぎると三叉路になっていて、
角っこのたい焼き屋さんには今も昔も行列ができている。
その先は住宅街で、1回ずつ右折して左折すると
僕の散策は終わりを迎える。
下高井戸の隣に永福町がある。
ラジオドラマ「NISSAN あ、安部礼司 ~ BEYOND THE AVERAGE」で、
主人公 安部礼司と優ちゃんの新居があった街だ。
ドラマでは「Never Ending Happy Town」と英訳されていて、
縁起がいい街ということになっている。
下高井戸から甲州街道を越えて永福町に入ると、寺院が連立している。
それら寺院の出自は関東周辺らしく、江戸時代の寺町の名残じゃなく、
戦後(?)、何らかの施策で永福町に集められたようだけど、
その理由は僕にはわからない。
その寺院群のなかに、善照寺という浄土真宗のお寺がある。
善照寺の墓地に、「釋玅知信女」と刻まれた墓石がある。
僕は、上京するたびに、このお墓にお参りしている。
「釋玅知信女」を僕なりに意訳すると、
「玅」という字は、漢和辞典アプリによると
「美しい」or「小さい」という意らしいから、
「ちっちゃな知ちゃん」と訳したい。
その「ちっちゃな知ちゃん」が
永福町という縁起のいい街で眠っている。
切なさと安らぎがない交ぜな気持ちのまま、
僕はお墓参りをすませ、下高井戸の駅にむかった。
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