女は何も言わず黙って後へといった。こんなに混んでいるのに座る場所があるのかと思っていると突然「後に座ったよ」「えっ」と後を振り向いた。「うあああ~っ」‥‥。その後この電車は脱線事故を起こしたと言う。 どうでしたか、酔いどれミステリー劇場、皆さんの身近に起こる出来事かもしれません、ご用心、ご用心!明日はまた太郎やん君の登場です!
妙な事を言う人だと思った。私は次の日もまた別の席に座った。やはり彼女は例の駅から乗り今度は通りすがりに強い高潮で「座っている場所が違うって言ってるでしょ!」と怒鳴った。私はギョッとして彼女を見た。また何事もなかったように一番奥の席に座った。そしてニヤリと笑ったように見えたのである。さすがに私もむっとして「どこに座ろうと私の勝手だ!」と女に向かって怒鳴った。なぜか女は悲しそうな顔をした様に見えた。次の日私が何時もの時間に電車に乗るとなんと大勢の乗客がいろではないか。珍しい事もあるものだと座る席を探しているとなんと私が何時も座る席だけが空いている。そして乗客皆がそこに座れといわんばかりなのである。私は少々気味が悪くなってきた。女はやはり例の駅から乗り込んで来た。続く。
次の日、私は女性の乗るのを待った。でも女性は乗らなかった。その次の日もその次の日も‥。何か都合でも出来たのだろうと半ば諦めかけある日私は気分転換でもしょうと何時もの席とは違う場所に座った。その日、何時もの駅で久し振りに女性は乗り込んできた。私は通りすぎて後に行く女性の美しい横顔をマジマジと見てしまった。とその時である「座っている場所が違いますよ」と言ったのである。私は驚いて「えっ」といって振り返った。女性は何事もなかったようにまた一番奥の席に座った。続く。
その女性は毎日のように私の通勤時間帯に乗り合わせるようになった。でも何時も私の降りる終着駅で消えてしまうのである。さすがに私も気になりある日車掌に聞いてみた。「車掌さん、何時も乗るあの女性は何処に行かれてる方なんですか?」「女性、そんな方乗っていませんが!」「ええっ、だって何時もあの駅から乗る方ですよ」「そんな方は乗りませんが?」私は怪訝そうな車掌の顔を見てそれ以上は聞くのをやめた。「妙だな、あんなに綺麗な女性だから車掌が気づかないはずがないんだが‥」それで私は明日の朝確かめてみようと思いその日は帰った。
またまた妙な話を思いついてしまいました。酔いどれミステリー劇場に暫しお付き合い下さい。 「見知らぬ乗客」 私は通勤に電車を利用している。そう、車の免許を持っていないのである。私の乗る電車は田舎の過疎地であるため乗客はほとんどいない。学生の通学でかろうじて廃線にならずに持っているようなものである。今日も私の通う時間帯は私一人である。厭きもせず同じ景色を見ながらひと時の安らぎを満喫していた。いつもの様に誰も乗りこまない駅に停まった。私は無駄に停まらずに誰もいないのであれば通り過ぎればよいのにと何時も思っていた。でも今日は一人の乗客が乗り込んできた。綺麗な女性である。珍しい、こんな田舎にもあんなべっぴんさんがいるのだと関心しながら「何処までいくのだろう」と勝手に行き先を想像していた。その女性は私の席を通り越し一番奥の席まで行った。私は混みもしないのに一番手前の降りやすい場所を何時も選んで指定席の様にして座っている。私はその綺麗な女性を見たいと思ったが後ろを振り返って見る訳にも行かず何故だかドキドキする心を抑えていた。彼女はとうとう私の会社がある終着駅まで一緒に乗り合わせた。何故だかドキドキする心と振り向きたいと思う欲望を抑えて改札を抜けた。少し先に行ったところで私はとうとう振り向いた。「あれっ、居ない、そんなに間をおいていないのに」変だなと思いながらも会社へ向かった。続く。