2月21日(日)、霞ケ関駅直結の飯野ビルディング4階にあるイイノホールで行われた
第14回 東京都医師会 都民講座 ―よい医療にめぐり合うために―に行ってきました。
テーマは「健康都市東京 ―生活習慣における禁煙―」です。
私と夫は、諸般の事情でホールに到着したのが12時40分と、少々早めでしたが
ホール前には既に会場待ちの行列ができていて
来場された皆さんの意欲が垣間見られるようでした。
12時45分に開場となり、私たちは前方右手の席に座りました。
第1部の望月友美子氏のお話で印象的だったことは
タバコも感染症の一つという考え方もあるのではないかということでした。
感染症は、病原体がいて、その病原体を運ぶ媒介者(ベクター)がいて、人間が感染します。
タバコを病原体と考えると、媒介者はタバコ産業であり
そこには産業革命後に資本と結びつき製造や流通が容易になったことや
ニコチンの依存性が利用された「儲かる商品」として
タバコ企業や国家が普及に注力した結果、一気に流行した歴史的背景があります。
効果的な対策をとることによって感染症を抑えることができるように
タバコについても同様のことがいえ、効果的な対策が求められていると提起されました。
効果的な対策は、タバコ規制枠組条約(FCTC)及びそのガイドラインにあるように
科学的な検証を経て「どうすればよいか」が明示されています。
考えてみれば、これまで良いと言われてきたことや実用的であると使用されてきた物が
実は害悪であると判明し、使用を中止、あるいは流通を規制・禁止した多くの事例があります。
古くは不老長寿の薬として、中国で高貴な身分の人たちがこぞって服用した丹薬は
硫化水銀が主原料だったため、水銀中毒を起こして、何人もの唐の皇帝が犠牲になりました。
水銀の害が明らかになった現在では、好んで水銀を摂取しようとする人はいません。
日本でも、長らくおしろいに鉛白が使用されていました。
おしろいによる鉛中毒によって、胃腸病・脳病・神経麻痺などが起き、死に至るばかりか
おしろいを使用した母親を介して、胎児が死亡することもありました。
江戸時代の化粧法として、おしろいは顔だけにとどまらず
首から胸元・背中にまで塗りたくることが流行したので
上流階級の乳児は、授乳の時に乳母の乳房を介して鉛を摂取したのです。
鉛中毒は、将軍家の子女のみならず、大名や公家など上流階級にはよくみられた疾病でした。
こちらも、鉛の害が明らかになり、今では好んで鉛を摂取しようとする人はいません。
そして、個人が自ら製品を使用・摂取しなくなるだけでなく
自然界に存在したとしても、製品として流通させることに対して規制がかかるようになりました。
硫化水銀や鉛のような事例は、公害病などの原因物質も含めると、枚挙にいとまがありません。
それらと同じように、タバコの害毒が明らかになった今
個々の使用者の使用をとめる(喫煙者が喫煙をやめる)ような
実効性のある対策が求められているのです。
残念ながら、日本はタバコの生産・流通に関しては一筋縄ではいかないため
どうしても最終段階である使用を止めるための施策(禁煙政策)が中心にならざるを得ません。
その点が、タバコ使用者(喫煙者)には憤懣やるかたなく思えてしまうのかもしれません。
タバコ対策を推進しようとすると、タバコの有害性は既に科学的見地からは明らかなため
「喫煙は文化である」とか「個人の嗜好の問題に介入するな」というような
文化・趣味・嗜好という価値観を引き合いに出される事例があります。
タバコ規制は、一律に文化を排除し、個人の趣味に介入する
ヒステリックで妄信的な行為だという意見です。
しかし、丹薬を服用することや鉛白のおしろいでの化粧法は喫煙よりも長く続いた流行で
化粧法はまさにその時代の文化が強く反映したものであるといえるでしょう。
ある時期においては、権力者や富裕者は死ぬことのない人生を求めたり
顔のみならず上半身まで白く見せることが美的であったりしたわけです。
しかしそれらは、有害な物質を使用する危険な行為として
物質は規制され、行為は廃れていきました。
タバコも、有害な物質を使用する危険な製品であり
それを使用することは危険な行為であるからこそ、規制が必要なのです。
第2部では、来馬明規氏が、タバコ問題は受動喫煙の問題だけでは解決しない
貧困問題でも環境問題でもあるのだということに言及されていました。
東南アフリカのマラウィの例を挙げ、貧困層の児童がタバコ農場で働かされている様子や
タバコの葉を乾燥するために大規模な森林伐採が行われていることも紹介されました。
WHO(世界保健機構)の推計によると、世界中で薪炭材として伐採される樹木のうち
重量にしてなんと8割もが、タバコ葉乾燥用の燃料として使われているそうです。
世界銀行の試算でも、世界で伐採される木の6本に1本は
タバコの葉を乾かすために使われていると出ています。
そうした現実にどう向き合うのか、効果的な対策があるにもかかわらず
対策を実行しない政府をはじめとした政治の不作為は許されるのか、考えました。
まずはタバコを吸わない・吸わせないこと。
タバコを吸っている人はやめるための行動を、今から起こしてください。
そして、今タバコを吸っていない人は、タバコを吸い始めないことと
タバコが抱えるさまざまな問題について、調べてみることをお勧めします。
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