Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

★☆第46回「国内のビジネスを、どうグローバルに展開するのか」☆★

2009-11-16 05:45:44 | ■日本人はどこへ往く?

★☆第46回「国内のビジネスを、どうグローバルに展開するのか」☆★


国内でのビジネスしか経験がない。
しかし、巷では、「グローバル化」が生き残りの戦略として議論になっている。
さて今回は、グローバル展開するには、何をどうしたらいいのか、を考えてみよう。

国内でのビジネスでは、人、もの、カネ、情報、技術などの経営資源(要素)が一般的によく知られている。

グローバルなビジネスでは、この国内版経営資源に加えて、グローバル展開のための6項目の経営要素が定番となる。

つまり、グローバルになりたい会社やグローバル・リーダーには、以下の知識が必要となる。

①地域貿易協定(FTA:自由貿易協定など)および貿易実務)[貿易関連知識]
②為替レートと利益の本国送金[国際財務管理]
③進出国の法律、政策、税金関連および知的財産のレギュレーション[進出国企業関連法および規定]
④本‐海外支店間の管理/統制[国際組織管理]
⑤多文化下での人的資源管理[国際人的資源管理、iHRM]
⑥異なる文化・商習慣の下での経営管理システム[国際経営管理]

経営者ならお分かりのように、国内だけの知識では、なんとも自社のグローバル化は足元がふらついてくるのである。言い換えれば、この6項目を看過して、国内と同じ経営要素だけでグローバルな経営展開を図ろうとすると、手痛い打撃を受け、挙句は失敗して、退却戦略の採用を余儀なくされることになる。

賢明な経営者であれば、
「ああ、そうなのか。これらグローバルな経営要素を勉強して(させて)、今までの国内での経営経験を活かしていけば、面白いグローバル展開になりそうだ。これは、自社の今後の世界発展への可能性となりそうだ」と、考えるだろう。

◆グローバル展開するための自社のビジネスモデルを確認する。

まず、世界へ船出するには、自社の足元を確認することから始めなければいけない。それは、自社のビジネスモデルが世界に通用するかどうかを見極めることに他ならない。

ビジネスモデルとは、儲けを生み出すビジネスの具体的な仕組みとか、競合する他社に対して、自社のもつ強みなどといわれている。後者の意味では、競争優位(コンペティティブ・アドバンテージ)をいかに確保していくかということが、企業の事業戦略および現代の経営学のメインテーマであり続けている。

競争優位については、古典的なM・ポーターの5フォーシズ(5つの競争要因)とジェネリック(一般基本)理論が、そしてポーターを乗り越えようとするRBV(リソースベース理論)などが激しい議論を展開し、これら両理論の前提ともなっているシュムペーターの創造的破壊・イノベーション理論などがある。海外での競合企業は、必ずと言っていいほど、この理論に基づいて、グローバル展開を検討している。
(参考 第32回「グローバルな競争優位を築くには~M・ポーター、RBVと両者の統合理論」および第38回「グローバル・ジャパンという方法

◆グローバル展開を行うプロセス

実証的な理論を基に戦略的に物事を考えるのが、欧米企業の常識となっている。日本の企業もグローバル展開を考えるに当たっては、戦略的に次のステップを取る方が成功への近道となる。

まず、グローバル展開をするかどうかのラフな意思決定の段階。
グローバル展開をしたいという希望から、するという意思決定の段階。
これには、自社の競争優位の確認がまず必要になる。ジェネリック理論に従えば、国内で自社の戦略的ポジションがどこにあるのか、なぜ国内で成功しているのかなどを確認する。

次に、それでは、どの地域、どの国へ展開したらよいか。

その後、いかに展開したらよいか。つまり、海外展開のモード(方法、様式)である。

ステップごとに説明をしよう。

1.展開するかどうかを決める(展開のタイミング)

自社の競争優位の源泉を確認する。低コストでの優位なのか、製品・サービスでの差別化なのか、はたまた、コスト集中か差別化集中か。更に、SWOT分析を進めてみる。とくに、S(自社の強み)の中のコア・コンピタンス(自社がもつ独自の能力)の抽出が大事となる。

つまり、自社の技術が世界を席巻する、世界を変えていく、革新的技術・サービスだとの自負がある場合や、自社の技術・サービスが想定国にまだ存在しないか、まだまだ適応できる余地があるという確認ができたら、グローバル展開を積極的に考えてみることだ。

2.進出先を選ぶ

● 国・地域の魅力度

進出先を選ぶには色々なアプローチがあるが、ここでは代表的な選定プロセスを紹介する。

まず、
「いろんな国・地域の魅力度」をおおまかに検討し、「事前選定」を考える。次に、「絞込み」の段階を経て、「本格選定」となる。

魅力度の要因として、自社製品・サービスの潜在マーケット度、そのマーケットの成長率、環境要因(気候・温度など物理的な要因、文化、政治・規制、経済、競合他社など)。

この基礎調査には、民間のコンサルティング会社、商社(貿易や総合商社)や政府系のJETRO(日本貿易振興機構)などへの相談が有効であらう。

民間のコンサルティングやリサーチ会社では、公開資料や有料のデータベースを駆使して、マクロおよびミクロ分析を経て、魅力度を推定する。マクロ分析とは、一国全体としての投資や消費などの考え方を用いて経済活動を分析することで、ミクロ分析とは、家計の消費活動や企業の生産活動など、個別の経済主体の活動を分析することにより、経済全体の分析に進む方法である。

国内の市場調査(マーケティング調査)では、コンサルティング会社、総合研究所、中小企業診断士などのコンサルタントが得意とする分野であるが、グローバル展開の場合、まだまだ、国内コンサルティング業界では経験不足があり、注意を要するところである。

グローバル展開する上で、現在魅力的なマーケットとして、一般的には、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)やBEMs(新興市場:ASEAN諸国、中国・香港・台湾、インド、韓国、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、南アフリカ、ポーランド、トルコなど)、NEXT11(新興経済発展国家群のことで、イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコ)が挙げられることが多い。

国の魅力度を調べる場合の情報源として、OECDやWTOなどの国際機関のWebサイトや、BERI、EIU(Economic Intelligent Unit)、Transparency International, World Bank Counrty Data, Euromonitor GMID (Global Marketing Information Database. この30年以上の歴史をもつ、強力な国別マーケティング・データベースは、欧米のコンサルティング会社の定番ソースとなっており、有用である)、Business International Market Reportなどが有効な情報源となる。

世界マーケットの中での魅力度のラフな測定の次は、ある地域・国に当たりをつけて、「事前選定」を行う。

(以降、「事前選定での検討事項」→「絞込み」→「本格選定」→「最終決定」へと進む)


※上記の写真は、零目的のブログ(上海・左)と、地球の歩き方「旅スケ」(インド・右上)およびEuromonitor GMID(ロゴ・右下)のウェブページより転載した。


【参 考】

★グローバル展開を行うプロセス

■事前選定
See Albaum, G., Duerr, E. and Strandskov, J. (2005), Market Entry Strategies, in International Marketing and Export Management, 5th Edition, Ch.6, pp.246-279, Prentice Hall

■本格選定の段階
See Pacek, N. and Thorniley, D. (2004), Market Entry Preparation, in Emerging Markets: Lessons for Business Success and the Outlook for Different Markets, Ch.3, pp.18-27, Profile Books

■財務面の税金関係では、財務省の「国際課税に関する資料」に詳しい

■日本と外国(地域)の自由貿易協定(FTA)
外務省の経済分野に詳述されている。
 
■JETRO(日本貿易振興機構)のホームページ(JETROの企業サポートについては、ドイツと同様に国際的な評価が高い)