◆第30回「Samurai JAPAN と 情報の非対称性」
久しぶりに、意欲的な番組を見た。
NHK Worldの Samurai Spirit(2008年8月9日放送)だ。
「青い目の太郎冠者(ドナルドキーン)」ならぬ、
blue eyed Samuraiこと、ニコラス・ぺタスが剣道のリポーターとなり、
東海大学での剣道初体験、剣道の歴史、ニュージーランド出身で在日20年の六段錬士のアレックス・ベネット氏とのインタビュー、そして、練馬剣友会で範士八段新堀強氏とのお手合わせなどが演出された。
デンマーク生まれのペタス氏は、極真空手の大山倍達最後の内弟子といわれ、K-1 JAPANの王者(2001年)だった格闘家だ。
日本の武道を、沈黙ではなく、明示的な英語で語ってくれることを期待したい。
日本の伝統的武道を見つめるのにいい番組が、国内で見られないというのは、
これまた、変な国だなあと思った。
なお、3年おきに開催されている世界剣道選手権大会では、2006年に男子団体選手権<16ケ国参加>で、日本はアメリカに初めて敗退している。東京オリンピック以後、柔道がJudoへ変わっていったように、剣道からKendoへ世界の流れもチェンジしている。世界のKendoへ歩むためには、適正なクロスカルチャー・マネジメントに着手しなければならない。
(参考:日本剣道連盟 http://www.kendo.or.jp/wkc/sokuho.html )
さて、
グローバリゼーションのスピードが加速されている中で、日本の文化や主張を世界へ発信することは、今後ますます必要になってくるが、現実は、全く、逆に推移している。馴染み深かった、日本発の英文雑誌が休刊、廃刊へと続く中で、日本と世界の「情報の非対称性」に思いを致さざるを得ない。
「情報の非対称性」とは、
『市場では売り手と買い手が対峙しているが、一般には売り手が保有する情報と買い手が保有する情報の間には大きな格差がある。例えばある商品を取引する状況を想定したとき、売り手は商品の品質に関する豊富な情報を所持している。他方、買い手は商品の品質に関する情報をほとんど所持しておらず、売り手からの説明に依存するしかない。買い手は、商品の品質に関する情報について、商品を購入するまで完全には知りえない。そのため、売り手の説明に、買い手が納得できないという状況もしばしば発生し得る。』(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より)
例えば、商品取引の参加者間で保有情報が対等ではなく、あるグループが情報優位者に、他方が情報劣位者になっている状況のことを、「情報の非対称性」という。
日本には、情報の非対称性が数あるように思われる。
一つは、政策立案者やメディアと国民の間、
二つ目は、日本と日本以外の世界との間の情報格差だ。
一つ目の日本国内に関しては、
政策立案者/メディアが情報優位者の立場にあり、国民が情報劣位者ということになる。
情報開示法があっても、まだまだ、かなりの程度で情報優位者の立場は変わりない。
ただ、ゲイツ以前(1985年)には、TVや出版物を介してしか、知識人やオピニオンリーダーの意見に触れることが出来なかったが、今は違っている。ある分野では、既存の大手メディア(新聞やTV)よりも、ネットでの情報の方が量/質ともに高いことがあり、世界のどこにいても、国民自ら日本を考えるのに役立つソースだ。
例えば、
現在、議論がなされている移民策に対して、
・経済学で考えれば、
『しかし、労働者を入れなくても、労働を輸入することはできる。様々な製品は技術と資本と労働で作られる。そして、労働をより多く含んだ製品とあまり含んでいない製品がある。労働をより多く含んだ製品を輸入すれば、それは労働を輸入しているのと同じことである。』
『日本で生産性を高めるという議論をするとき、既存の産業の生産性をいかに高めるかという議論になることが大部分である。しかし、アメリカの生産性の高さは、生産性の低い産業を輸入に置き換えることによってもたらされている面が大きい。』(大和総研 原田泰氏)
第64回「輸入拡大こそ人口減少対策の妙案」(2007/10/11)
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/harada.cfm?i=20070928c3000c3
第71回「円は安すぎるのか」(2008/05/12)
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/harada.cfm?i=20080508c3000c3&p=1
また、
・経済分野では、「アジアで最も豊かな国」から転落した日本」のことを、
「IMF(国際通貨基金)がまとめた調査によると、2007年のシンガポールの一人あたりのGDP(国内総生産)が日本を抜くことが明らかになった。シンガポールは3万5000ドルを超えたのに対して、日本は3万4300ドルにとどまっている。これまで半世紀にわたってアジアで1位をキープしていた我が日本だが、ついに2位に転落してしまったわけだ。」(『産業突然死』の時代の人生論:経営コンサルタント 大前 研一氏(2008年7月16日)第137回「アジアで最も豊かな国」から転落した日本
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/a/140/ )
・社会・技術面では、
『2015年頃に国内消費縮小の危機をチャンスにかえる方法、さらにグローバル市場の拡大という好機を取り込む方法を提案します。』
日本企業のグローバル化は、いかにすれば成し遂げられるのだろうか?」
2015年の日本:「見えざる」大家族化と脱「ガラパゴス化現象」
野村総合研究所 吉川尚宏 (2008年3月)
http://www.nri.co.jp/souhatsu/research/2008/pdf/rd200804_01.pdf があり、
・世界のトレンド分野では、
『程近智は、5つのメガトレンドをこう説明する。1.新しい消費者の誕生,2.優秀な人材の獲得競争,3.新興イノベーション勢力の出現,4.資源と持続可能性を巡る争い,5.資本の新たな流れ、だ。』
(ITpro SPECIAL 『SaaSが透過する「日本IT界の脆弱性」見えてきた課題をいかに克服するか』第15回および第16回:多極化する世界のメガトレンドとは?(アクセンチュア社長 程近智インタビュー)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/as/saas/knowledge/15.shtml
http://itpro.nikkeibp.co.jp/as/saas/knowledge/16.shtml(後編)) などなど。
二つ目の、日本と世界との間の情報格差だ。
つまり、情報の流れ、特に輸入情報の質的評価と輸出情報量の拡大のことだ。
輸入情報の評価については、メディアの役割、日本の知識人の役割が大事になる。
その役割とは、単なる翻訳ではなくて、建設的な批判/評価を加えるところにある。
また、グローバル化への基礎教育、特に、クロスカルチャー教育や世界英語教育への遅れを自覚し、奮発しなければならないだろう。
日本発の情報量拡大については、現在、絶望的な状況かもしれない。
最後に、
NHK Worldのニュースについて、2言。
最近、海外特派員の基準が、PCN(日本人記者)から、HCN(現地国記者)に変わったようだ。やっと、NHKもエスノセントリック(自国中心主義)の組織文化から、ポリセントリック(現地中心主義)の文化へ脱皮したようだ。
しかし、2言目は、とても先進国の映像とは思えない、海外日本人を小ばかにした貧弱な国際放送のことだ。というのは、Newsの中で頻繁に映像が途絶えることがある。これは、放送権の都合で、海外で活躍する日本人のNews映像(スポーツ)が見られないのだ。まるで、開発途上の国の静止画広告や軍事独裁国のプロパガンダの静止画面を見るようで、これもまた、国際放送の貧しさを再認識させてくれる事実だ。
※上記写真は、ニコラス氏のブログ、NHK Worldから使用した。
◆NHK World:
http://www.nhk.or.jp/nhkworld/english/tv/genre/japaneseculture.html
◆Nicholas Pettas Blog:
NHK, Samurai Spirit ! (July 30, 2008)
http://nicholaspettas.blogspot.com/2008/07/nhk-samurai-spirit.html
one blue eyed samurai to another blue eyed samurai (July 20, 2008)
http://nicholaspettas.blogspot.com/2008/07/one-blue-eyed-samurai-to-another-blue.html
NHK で剣道。。。Kendo with NHK TV.(July 15, 2008)
http://nicholaspettas.blogspot.com/2008/07/nhk-kendo-with-nhk-tv.html
ニコラス・ペタス(出展:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%82%BF%E3%82%B9
◆練馬剣友会
「NHK国際放送 サムライ・スピリッツ 撮影収録」(2008年07月11日)
http://www.nerimakenyuukai.net/archives/003567.html#more
◆第13回世界剣道選手権大会 日本対米国 (2006年 Youtube)
日本では見られなくなった、二刀流との対決も興味深い。
Part1/5
http://www.youtube.com/watch?v=0HHYAlb1P-I&feature=related
Part2/5
http://www.youtube.com/watch?v=DV_1dj9JlbE&feature=related
Part3/5
http://www.youtube.com/watch?v=ocLl-cfTuCQ&feature=related
Part4/5
http://www.youtube.com/watch?v=Itks3p3ZcYc
Part5/5
http://www.youtube.com/watch?v=b1lX0IVglC8&feature=related