ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

一つのメルヘン

2018-01-08 03:05:42 | 資料


中原中也に興味を持ってみた。


秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があって、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射しているのでありました。

陽といっても、まるで硅石か何かのようで、
非常な個体の粉末のようで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもいるのでした。

さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでいてくっきりとした
影を落としているのでした。

やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもいなかった川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れているのでありました……



現象を観察する作者の心が切ない
光を粉末だと感じる感性は痛い
二度とない経験をはがれて失踪した何かを
永遠に追いかけている幼児のような心だ

かきたてられる


石くれに光は照りて幻想の花咲き出でてこてふはよりぬ    揺之






  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする