中原中也に興味を持ってみた。
秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があって、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射しているのでありました。
陽といっても、まるで硅石か何かのようで、
非常な個体の粉末のようで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもいるのでした。
さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでいてくっきりとした
影を落としているのでした。
やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもいなかった川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れているのでありました……
現象を観察する作者の心が切ない
光を粉末だと感じる感性は痛い
二度とない経験をはがれて失踪した何かを
永遠に追いかけている幼児のような心だ
かきたてられる
石くれに光は照りて幻想の花咲き出でてこてふはよりぬ 揺之