宮沢賢治に興味を持ってみた。
草の穂はみちにかぶさりわが靴はつめたき露にみたされにけり 宮沢賢治
なんということはない歌のように見えるが、読後に鮮やかな感覚が残る。
実際、冷たい露に満たされた靴を履いていた時の感覚がよみがえる。それはさわやかなほどだ。
言葉だけではない。作家が感じた霊魂の感動が染みわたっているのだ。
露に濡れた靴を感じた作者が、そののちに空をも見るような動作さえ思い浮かぶ。この人はこれから試練の道に踏み込んでいくのだ。
作者の大きさを感じる作である。
露むすぶ荒野の草を分けつつもゆふべの空に照る星を見る 揺之