コニタス

書き留めておくほど重くはないけれど、忘れてしまうと悔いが残るような日々の想い。
気分の流れが見えるかな。

奇跡のひと

2005-12-10 20:18:41 | 
予感は、勿論、あったのです。

僕は、あなたに、恋を、するだろう、って。
綺麗な、若い女性だから? アーティストだから?
そうじゃなくて、「何か」、を、感じていたのです。

だから、最初から高揚していました。
それでなくても、最近随分と精神にアドレナリンが多すぎて、制御不能な状態なのに。
或いは、それは、ひとつの、準備であったと?

今も、ふるえが止まりません。
胸が、ざわざわと、音を立てているのです。


演奏会は、アンコールを含んで80分くらいでしょうか。
曲の合間に「演技」があって、拍手を入れる隙がありませんでしたね。
そう、僕らは、音を、あなたに占有されていたのです。

そうして、最後の最後、合掌を向けられ、笑顔を向けられ、やっと許された僕らは、どうしようもない心持ちで、精一杯の音を伝えるしか無いのです。
そうやって、僕は、否、僕たちみんなが、貴女に恋をしてしまうのです。

あれは、何でしょう。
何を観、何を聴いたのか。
あなたは、誰?

冷静な感想に何の意味があるでしょうか。
あの場所を共有しなかった誰かに、この体験を正確に伝えることなど、到底考えられません。

そして、それでも、またしても、言葉の人は、言葉を使おうとするのです。
何度もなんども、言葉に裏切られながら、それでも、想いを伝えたい。

ク・ナウカの芝居は、今までにも、何度か拝見しています。
『メデイア』は絶品です。初めて観たのは、今日とおなじ公園内の野外劇場でした。
そして、今日、初めて、宮城さんとお話しすることが出来ました。
普段、劇場でお見かけしているのと同じ、屈託のない笑顔で接してくださいました。
これから、繋がって行けたら幸せです。

しかし、残念ながら、「トリスタン」は、拝見していません。静岡にいらしたのに、今思えば不思議ですが。

最後に、背後の扉が開き始めて、緑の陽射しと冷たい空気が入ってきた時は、宮城氏を思い浮かべてニヤリと。
構成や演出のある演奏会。それもまた、楽しくも妖しい魅力です。

あなたは運動着姿で、昼寝から目が醒めたように動き出しました。

いつの間にか、演奏は始まり、現代音楽の雄、クセナキスから、バッハに飛び、その後は、無知な私には初耳の人のばかり。
それはしかし、どうでも良いことです。
そこにあなたが居て、そこであなたは、たたき続け、鳴らし続け、踊り、探し続けた。
黒服によって、メディアを奪われ続けて、どんどんプリミティブな音へと回帰し、身体へ収斂したのですね。

その時、あなたは、音、そのものとして、そこにありました。
美しく、すっくと、其処に、在りました。

アンコールは、ノイジーな録音とマラカスの競演。あれは、舞踏。
細かく、鋭く、切り刻まれた空気が、音を立てているのを観ました。

不思議な体験でした。
そして、言いようもなく幸福でした。
文字通り、有り難い。

現代音楽の演奏会で、こういう幸せな時間を得られること自体、奇蹟かも知れない、と思いました。

あなたは、何を観、何を聴いていましたか?
あなたは、何ですか?

お訊きしたいことがやまほど。
しかし、言葉は。


また、どこかで。








加藤訓子演奏会。
05,12,10 舞台芸術公園 楕円堂 (SPACウィークエンド公演)。




人間として、呼吸し、話し、食べ、排泄する人なんだろうか、と思ったり、逆に、生々しく人間であったり。
こんな人が、世の中にいるのか、と言うのが、正直な感想。
あんなに濃密な空間にいたことの幸福。

本当に、今年のナンバーワン。
と言うより、私の舞台鑑賞歴の中でもトップを争う演奏会でした。


12/11、もう一回在ります。演奏会。
私は主催者側で関わるイベントがあるので行けませんが、行ける人は、行くべきです。
掛け値無し。お薦めです。

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