おぐりクリニック

眼科、アレルギー科、漢方外来

滋賀県湖北地方に多い落屑症候群

2024-10-03 | 日記
落屑症候群(らくせつしょうこうぐん)という疾患を聞いたことがありますか?
偽落屑症候群(ぎらくせつしょうこうぐん)とも呼ばれます。
 
瞳孔縁や水晶体表面に白い沈着物が粉状~膜状に付着している状態をいいます。
Exfoliation syndrome(落屑症候群)は,白い繊維状でアミロイド様の偽落屑物質(PE)が,虹彩瞳孔縁や水晶体前面,Zinn小帯,隅角,毛様体などのほか角膜内皮や結膜内に蓄積し,沈着する結合組織疾患です。
 
このPEはさまざまな眼組織だけでなく,皮膚,外眼筋,心臓,肺,腎臓,胆嚢などの間質,髄膜,血管内壁など全身で検出されることから,現在では落屑症候群は全身性疾患と考えられています

下の写真は、落屑症候群の眼球で、瞳孔の縁に白くフケ状の物質が認められます。左の写真では水晶体前面の白い沈着物も明瞭に分かります。
(Revew of Ophtalmology より転載)

落屑症候群は、病気というより体質と捉えている医師も多いです。
これをお持ちの方は、そうでない方よりも、高眼圧症、緑内障、白内障に明らかになりやすい体質があります。

高齢になればなるほど、この症候群になりやすく、80歳以上では5〜10%でみられますが、50歳以下ではまれで、特に30歳以下では皆無です。また、この症候群になると、散眼(点眼薬で瞳を大きくさせること)しづらくなり、チン氏帯(水晶体の支持組織)も弱くなりがちですので、白内障手術が少しずつ難しくなっていきます。

落屑症候群だけでは何の自覚症状もなく視力も視野も正常ですので、他の疾患でたまたま眼科を受診した時や、人間ドックの眼科検診で発見されます。
 
落屑症候群と言われても、治療の必要はないと言われることが多いですが、滋賀県湖北地方には本症以外にも、結膜結石、尿路結石、胆石など、いわゆる「石ができやすい人」が多いことが知られています。

また、偽落屑症候群では、通常より少し早めの白内障手術を検討される方が、その方の将来を考えるとより安全と言えます。
白内障の早期発見・早期治療も重要です。
 
これらは同じ身体を流れる『血液』からの生成物質という点で共通原因があると考えるべきです。
特に地域で共有している「飲料水」に私は注目しています。
 
次回は、何故、この「偽落屑」が湖北地方の人に多いのかを解説させていただきます。
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屋外活動で近視抑制! 国家プロジェクト

2024-09-18 | 日記
子どもの近視が急増する傾向は、日本だけでなく世界でも同様です。
近視を発症したまま放置しておくと年齢が上がるにつれ近視は進行していきます。
 
近視は一度発症すると治らないと言われており、いかに近視にならないようにするか、また近視の進行をなるべく遅らせるため、子どもの頃からの対策が重要です。
近視になっても眼鏡やコンタクトレンズがあるから問題ないとの考えは疑問です。
 
受験競争や生活空間の都市化に伴い、学童期に屋外で活動する機会が減っています。
また、スマホやタブレットが生活や学校の授業に入ってきたことで、液晶画面を見る時間が増え近視が進みやすくなります。
特に都市部の学童は、何も知らずに生活しているといつの間にか近視が強くなっている、という結果に繋がっていると思われます。
 
 
近視抑制、台湾の国家対策

台湾で国を挙げて屋外活動を一定以上行うことで、近視の進行を抑えることができることが証明されました。
両親ともに近視の子供は5.7倍近視になりやすいとされています。
 
ところが屋外活動を週に14時間以上行うと、その差が縮まり、近視になりにくくなることが分かりました(*1)。
つまり、日に2時間屋外活動を取り入れれば近視の進行抑制が可能と言えるのです。

台湾では法律を改正して、体育の授業を週150分屋外で行うことを義務づけ、
そのほかの授業(理科など)なども屋外での実施を推奨しています。
 
これは、明るさ1000ルクス以上の光を週11時間以上浴びた子どもが、近視になりにくいという研究成果に基づいています。
一般的に屋内では300ルクス前後、窓際でも800ルクス前後ですが、屋外では日陰でも数千ルクスに達します。
 
つまり、十分な光を浴びるには屋外でなければ難しいということであり、屋外で1日2時間、自然光を浴びることを目標にしているのです。

では、なぜ十分な光を浴びることで近視が進みにくくなるのでしょう?
この点についてはオーストラリアの研究が知られています。
 
十分な光を浴びることにより網膜にドーパミンという神経伝達物質が大量に産生され、ドーパミンが近視を抑制する遺伝子に働きかけと考えられたのです (*1)  。
参考までにオーストラリアでは児童は昼食を外で食べることが義務付けられているとのことです。
 
戦前の日本では「野外活動」が多かったおかげか、近視の児童は少なかったと言われています。
成長期に野外で過ごす時間が短くなるにつれ、多くの国で近視が増加傾向になることは事実のようです。
 
今後、スマホやタブレットを無くすことは困難でしょうが、「自然光を浴びる時間を長くする」ことは特別な負担や費用をかけずに出来ることです。
学校の視力検査で「視力低下のため要眼科受診」の指摘を受けた場合は、子供さんの屋外活動時間に注意してはいかがでしょうか?

*1; Lisa A Jones, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2007 Aug;48(8):3524-32. doi: 10.1167/iovs.06-1118.
 

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近視と失明

2024-09-09 | 日記
視力回復コンタクトレンズ(オルソケラトロジー)など、子供さんの近視進行抑制についてお伝えしてきました。
 
近視には、次のような合併症のリスクがあります。

網膜変性・剥離
近視の進行により、網膜が変性したり剥離したりするリスクがあります。
網膜剥離は、眼球内の網膜が剥がれて視力が低下する疾患で、飛蚊症が前兆として現れることがあります。

白内障
近視によって白内障のリスクが高まります。

緑内障
近視によって緑内障のリスクが高まります。
現在、日本での中途失明の第一位が緑内障です。

近視性牽引黄斑症
近視の進行により、網膜が引っ張られて層が裂けてくる疾患です。
分裂の初期には自覚症状はありませんが、分裂が進むと視力低下を招きます。

近視性脈絡膜新生血管
近視の進行により、網膜と脈絡膜の間にあるブルッフ膜に亀裂が生じ、異常な血管が網膜へ侵入する疾患です。
増悪すると視力低下、失明に繋がります。
近年、失明疾患として増加傾向の加齢黄斑変性症も同様の病態ですが、強度近視の方では重症化しやすく、あえて加齢黄斑変性症とは別の名前がついています。

近視性視神経症
近視の進行により、視神経や視神経線維が引き伸ばされて視野に支障をきたす疾患です
緑内障とよく似た視野障害ですが、近視が強いとより障害が強くなる傾向があります。
 
近視は眼軸長(眼の長さ)が伸びることで発生します。
近視の程度が強いものを「強度近視」といい、強度近視が続くと「病的近視」を発症する可能性があります。
病的近視になると、矯正をしても視力が得られず、上記のような気を発症すると失明する可能性が高くなります
 
近視が悪化して、メガネやコンタクトレンズでは視力が出なくなる「社会的失明」の多くは中年期以降の問題ではあります。
とはいえ働き盛りの方が視力を失うリスクをお考えください。
われわれは日々、視力を失い
「まさか自分に起こるとは思ってもいなかった。」
というショックを受ける患者さんに遭遇しています。
成長期の視力対策についてまとめたのが拙著「子ども視力回復トレーニング」です。
子供さんの視力低下進行の重要性をご理解いただければ幸いです。

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特殊コンタクトレンズ

2024-08-30 | 日記

本年7月14~15日に東京で開催された第66回日本コンタクトレンズ学会の報告の続きです。

今回は、4番目のテーマ

特殊コンタクトレンズ
について解説させていただきます。

 

< ④ 特殊コンタクトレンズ >

 

オルソケラトロジー・レンズも特殊コンタクトの一つです。

 

それ以外に、円錐角膜という角膜の病気に対する「強膜レンズ」や「ハイブリッド・レンズ」が日本では未認可です。

円錐角膜のかたではメガネやソフト・コンタクトレンズ(以下、ソフト)では良い視力が得られにくく、ハード・コンタクトレンズ(以下、ハード)で視力矯正をすることが第一選択となります。

良い視力を出すためにハードを使用するのですが、円錐角膜という特殊な角膜の形をしているため、ハードの痛みや不快感を生じやすく、フィッテイングの困難さから角膜に傷がついてハードが使えなくなる方もおられます。

 

そのような方に、「強膜レンズ」や「ハイブリッド・レンズ」はとても役に立つことが多いのですが日本では入荷困難です。

 

厚生労働者がこうしたレンズの承認に向けて動いてはおりますので、欧米のように近い将来の普及が望まれます。

 

当院では両レンズとも取り扱いは行っておりませんが、ご希望の方は対応施設を紹介させていただきますので医師にご相談ください。

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子供さんの近視による視力低下、放置ではなく「対策することが当然!」

2024-08-26 | 日記

本年7月14~15日に東京で開催された第66回日本コンタクトレンズ学会の報告の続きです。

今回は、3番目のテーマ

近視に対する考え方
について解説させていただきます。

 

< ③ 近視に対する考え方、「対策することが当然!」 >

 

ご自身が近視で悩んだ親御さんは、自分の子供が近視で困らないように何とかしてあげよう、と思われる方が多いように思います。

オーストラリアでは日本よりも人口当たりの検眼医(オプトメトリスト: コンタクトレンズ処方に携わる医師)の数が圧倒的に多く、オルソケラトロジーによる近視治療がかなり普及しています。

近視治療および進行抑制手段があるのだから、出来るだけ早くから治療をすることが当然であり、放置するという選択肢は考えられない。」との考え方が一般的とのこと。

 

日本では、

「視力が悪くなったら眼鏡をかければよい。さらに視力低下が進行したら、メガネの

度数を強くすればよい。」という考えがまだまだ多いのかもしれません。

 

さらに、

「眼鏡がいやならお手軽な使い捨てソフトコンタクトレンズ(以下、ソフト)で良い。」

と考える方も多いのでしょう。

これは、

「テレビでコマーシャルもされているから、ソフトは安全、快適!」

との誤解からの考えのようです。

実はソフトはドライアイや酸素不足による合併症以外にも、「近視が進行する」ことが医学研究で証明されています。

必要以上に近視が進行することは成長期の子供さんにとって大きなデメリットです。

 

眼鏡、ハードコンタクトレンズ(ハード)、ソフト、オルソケラトロジー の4つの視力矯正方法の長期間検討で、

一番近視が進行するという結果が出ているのがソフトです。

以下のような順番で近視が進行するという医学データが出ています。

ソフト > 眼鏡 >> ハード >> オルソケラトロジー

 

100%近視を抑制する方法は現時点ではありません。

とはいえ、小学1年生からオルソケラトロジーを行っている当院での結果や実感として、

圧倒的にオルソケラトロジーでは近視進行が抑制されています。

 

近視が進行した場合、以下のような問題が生じます。

① 中年期以降での失明疾患の増加(緑内障、黄斑変性、網膜剥離など)

② 眼鏡のレンズが厚くなることによる不快感

③ ソフトもレンズが厚くなることによる不快感、及びドライアイや酸素不足による角膜障害

④ 近視手術の選択肢が減り、治療費用も高額になる

 

また地震をはじめ災害時に裸眼視力の良し悪しが命にもかかわりかねないことを多くの方が体験されています。

 

日本コンタクトレンズ学会では「オルソケラトロジー」のメリットが医学研究を通して認識されています。

もちろん合併症も知っておく必要があります。

しかしながら、コンタクトレンズで起こりうるキズや感染のリスクはあるとはいえ、

ソフトに比較して格段に目に障害を生じるリスクが低く安全性に優れていると考えます。

 

「近視は治すことが当然!」という他国での考え方、特に大事なお子様の視力については参考になさって下さい。

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