おぐりクリニック

眼科、アレルギー科、漢方外来

屋外活動で近視抑制! 国家プロジェクト

2024-09-18 | 日記
子どもの近視が急増する傾向は、日本だけでなく世界でも同様です。
近視を発症したまま放置しておくと年齢が上がるにつれ近視は進行していきます。
 
近視は一度発症すると治らないと言われており、いかに近視にならないようにするか、また近視の進行をなるべく遅らせるため、子どもの頃からの対策が重要です。
近視になっても眼鏡やコンタクトレンズがあるから問題ないとの考えは疑問です。
 
受験競争や生活空間の都市化に伴い、学童期に屋外で活動する機会が減っています。
また、スマホやタブレットが生活や学校の授業に入ってきたことで、液晶画面を見る時間が増え近視が進みやすくなります。
特に都市部の学童は、何も知らずに生活しているといつの間にか近視が強くなっている、という結果に繋がっていると思われます。
 
 
近視抑制、台湾の国家対策

台湾で国を挙げて屋外活動を一定以上行うことで、近視の進行を抑えることができることが証明されました。
両親ともに近視の子供は5.7倍近視になりやすいとされています。
 
ところが屋外活動を週に14時間以上行うと、その差が縮まり、近視になりにくくなることが分かりました(*1)。
つまり、日に2時間屋外活動を取り入れれば近視の進行抑制が可能と言えるのです。

台湾では法律を改正して、体育の授業を週150分屋外で行うことを義務づけ、
そのほかの授業(理科など)なども屋外での実施を推奨しています。
 
これは、明るさ1000ルクス以上の光を週11時間以上浴びた子どもが、近視になりにくいという研究成果に基づいています。
一般的に屋内では300ルクス前後、窓際でも800ルクス前後ですが、屋外では日陰でも数千ルクスに達します。
 
つまり、十分な光を浴びるには屋外でなければ難しいということであり、屋外で1日2時間、自然光を浴びることを目標にしているのです。

では、なぜ十分な光を浴びることで近視が進みにくくなるのでしょう?
この点についてはオーストラリアの研究が知られています。
 
十分な光を浴びることにより網膜にドーパミンという神経伝達物質が大量に産生され、ドーパミンが近視を抑制する遺伝子に働きかけと考えられたのです (*1)  。
参考までにオーストラリアでは児童は昼食を外で食べることが義務付けられているとのことです。
 
戦前の日本では「野外活動」が多かったおかげか、近視の児童は少なかったと言われています。
成長期に野外で過ごす時間が短くなるにつれ、多くの国で近視が増加傾向になることは事実のようです。
 
今後、スマホやタブレットを無くすことは困難でしょうが、「自然光を浴びる時間を長くする」ことは特別な負担や費用をかけずに出来ることです。
学校の視力検査で「視力低下のため要眼科受診」の指摘を受けた場合は、子供さんの屋外活動時間に注意してはいかがでしょうか?

*1; Lisa A Jones, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2007 Aug;48(8):3524-32. doi: 10.1167/iovs.06-1118.
 

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近視と失明

2024-09-09 | 日記
視力回復コンタクトレンズ(オルソケラトロジー)など、子供さんの近視進行抑制についてお伝えしてきました。
 
近視には、次のような合併症のリスクがあります。

網膜変性・剥離
近視の進行により、網膜が変性したり剥離したりするリスクがあります。
網膜剥離は、眼球内の網膜が剥がれて視力が低下する疾患で、飛蚊症が前兆として現れることがあります。

白内障
近視によって白内障のリスクが高まります。

緑内障
近視によって緑内障のリスクが高まります。
現在、日本での中途失明の第一位が緑内障です。

近視性牽引黄斑症
近視の進行により、網膜が引っ張られて層が裂けてくる疾患です。
分裂の初期には自覚症状はありませんが、分裂が進むと視力低下を招きます。

近視性脈絡膜新生血管
近視の進行により、網膜と脈絡膜の間にあるブルッフ膜に亀裂が生じ、異常な血管が網膜へ侵入する疾患です。
増悪すると視力低下、失明に繋がります。
近年、失明疾患として増加傾向の加齢黄斑変性症も同様の病態ですが、強度近視の方では重症化しやすく、あえて加齢黄斑変性症とは別の名前がついています。

近視性視神経症
近視の進行により、視神経や視神経線維が引き伸ばされて視野に支障をきたす疾患です
緑内障とよく似た視野障害ですが、近視が強いとより障害が強くなる傾向があります。
 
近視は眼軸長(眼の長さ)が伸びることで発生します。
近視の程度が強いものを「強度近視」といい、強度近視が続くと「病的近視」を発症する可能性があります。
病的近視になると、矯正をしても視力が得られず、上記のような気を発症すると失明する可能性が高くなります
 
近視が悪化して、メガネやコンタクトレンズでは視力が出なくなる「社会的失明」の多くは中年期以降の問題ではあります。
とはいえ働き盛りの方が視力を失うリスクをお考えください。
われわれは日々、視力を失い
「まさか自分に起こるとは思ってもいなかった。」
というショックを受ける患者さんに遭遇しています。
成長期の視力対策についてまとめたのが拙著「子ども視力回復トレーニング」です。
子供さんの視力低下進行の重要性をご理解いただければ幸いです。

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