今回は病的近視の合併症と治療についてお伝えしたいと思います。
病的近視を起こしている眼球
病的近視では、眼球後部の変形などにより、特に視機能に重要な視神経や黄斑部(おうはんぶ)網膜などの部位が機械的に伸展されるとともに変形し、様々な病的近視特有の眼底病変を起こしてきます。
図: 正視眼(左)と病的近視眼(右)の眼球の形(日本近視学会ホームページより転載)
正視眼では眼球はきれいな正円であるが、
病的近視眼では特に眼球後部が後方に突出し大きく変形している
- 病的近視による網膜脈絡膜萎縮
病的近視の方では、網膜や脈絡膜が極端に薄くなり様々な萎縮性病変につながります。
カメラに例えるとフイルムの役目となる光を捉える神経が萎縮して十分に機能しなくなるのです。
これには、びまん性萎縮、限局性萎縮、ラッカークラックなどと呼ばれる名称があります。
- 黄斑部出血
病的近視の患者さんの約1割に、黄斑部(おうはんぶ)という網膜の中心部分に出血が生じます。
病的近視の患者さんでは網膜と脈絡膜を隔てるバリアのような働きをしているブルッフ膜という膜に亀裂が入ることがあり、この亀裂を通って脈絡膜から新生血管(しんせいけっかん)という病的な血管が網膜に入り込んで増殖してしまう病態です。
突然の視力低下や変視症(ものが歪んでみえる)で発症することが多く、早期診断、早期治療が重要です。
治療は、血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害する抗体を眼内に注入します。
- 近視性牽引黄斑症
病的近視では眼球が前後方向に伸びる際に、伸びきれなくなった網膜がはがれてきてしまうことがあり、網膜剥離またはその前段階である網膜分離を起こします。
病的近視の方の約1割にみられます。
放置すると網膜剥離や黄斑円孔といった、より重篤な合併症に進行する危険があります。
診断には網膜の断層像を観察することができる光干渉断層計(OCT)という検査が有用です。
進行すると手術が必要となることがあります。
- 緑内障・近視性視神経症
病的近視の方で意外に見過ごされやすいのが視神経障害です。
近視は緑内障の危険因子でもあり、また眼球の異常な伸展により、視神経やその神経線維が機械的に障害されやすく、視野障害の原因となります。病的近視では黄斑部病変を合併するために視神経障害が見過ごされやすいため注意が必要です。
眼圧上昇や視野欠損が生じるようであれば、眼圧下降治療(レーザー、点眼、手術)が必要となります。
しかし、眼圧が正常でも視野障害が進行する「正常眼圧緑内障」が日本人に多いことが分かっており、体質改善対策の重要性が認識されつつあります。
繰り返し述べているように、成長期の近視進行の放置は上記のような将来の失明リスクを高めます。
ご両親のご理解と協力がお子様の将来の視機能に関わることをご理解いただければ幸いです。
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