KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

GW・穂高 登攀

2010年05月02日 | アルパイン(残雪期)

二日目
天候:未明まで小吹雪のち快晴

 夜半はけっこう強い風がテントを叩いた。
 で、約束の午前3時に目を覚まし、外を覗くと小雪が風に舞っているし。・・・マジですか?

 とりあえず朝飯を済ませ、しばしテント内で待機。
 明るくなるにつれ風も納まり、回りもボチボチ動き始めたので、我々も行動開始。

  ボチボチ行きますか。

 本日の行程は北穂東稜から滝谷第二尾根主稜の継続。
 以前、雑誌「岳人」で紹介されていたようだが、私は読んでいない。
 まずは北穂東稜から。

  北穂沢の登り

 北穂沢を小高いプラトーの上まで登り、そこから右へトラバース。急な雪の斜面を登って東稜に取り付く。
 涸沢定着のバリエーション「人気初級者コース」とあって渋滞も懸念したが、我々の前に6人パーティーがいるものの何とか追いついて先に行かせてもらえそう。

  前穂北尾根

  前方、団体さんをロックオン!
 で、雪のリッジに着いた所で気持ち良く先を譲っていただいた。
 東稜は下から見ると特に何の変哲もないスカイラインだが、ここまで来ると実にスッキリしてなかなか素晴らしいロケーションである。
 右側がスッパリ切れていて空の青と雪の白のコントラストが実に鮮やか。右肩には槍も見える。

  先を譲っていただきありがとさんです。

  「ゴジラの背」へ向かう。

 しばらくスノー・リッジを行くと、東稜核心部の「ゴジラの背」に着く。
 先行パーティーのトレースがあるもののけっこう不安定な雪の付き方で、ここで迷わずロープを出す。
 ピッケルをアンカーとし、juqcho氏を送り出す。

  「ゴジラの背」を行くjuqcho氏

 juqcho氏、ゴジラの背ビレをしっかり掴んで右側を無事通過。お見事です。
 そこで一旦ピッチを切る。
 トレースがあれば技術的にそれほど難しいことはないが、とにかく高度感は凄い。
 春の谷川・東尾根、GWの剣・八ツ峰などこれまでシビレ系スノー・リッジはいくつかこなしてきたが、ここもなかなか。

  振り返るとこんな感じ

 その先でリードを交替しようとしたが、場所が狭く、そのままもう1ピッチjuqcho氏にロープを伸ばしてもらう。
 すぐに2mほどのクライムダウン。リッジを伝ってロープ半分出たところでjuqcho氏はその先の懸垂下降地点の向こうに消えたが、こちらからコールしても壁の向こうで応答が聞こえず。
 「あと10m!」「・・・あと5!」「おーいっ、もう無いよー!」と叫んでもまったく聞こえず。
 ザックのチェストバンドに付いているホイッスルを吹くが、聞こえているかどうか。お互いロープを強く引っ張り合ってどうにか意思の疎通を図る。

 

 

 クライムダウンの箇所はロープ引っ張られ気味でちょっと怖い思いをしたが、何とか剥がされないよう踏ん張って無事通過。
 無雪期は懸垂となる箇所は今回は雪の付き方が良かったようで、そのまま歩いて行けた。
 50mロープでギリギリだったが、本来は最後は懸垂となるので途中でピッチを切るのだろう。

 

 核心はこの2ピッチで、後は比較的幅の広い雪稜がダーッと北穂小屋まで続く。
 登攀時間は2時間ちょっと。まずまずのタイムで前半終了。
 小休止した後、後半戦の滝谷へ。

  北穂小屋へ到着

 北穂北峰のピークを踏んだ後、大きな松濤岩の手前から滝谷C沢へ入る。
 ちょいとデリケートなトラバースから入り、後は急な雪の斜面をガーッと下っていく。

  C沢を下る

 最初は前向きでガンガン行けたが、途中から傾斜が増し雪面も固くなってきたので、後ろ向きになって Wアックスのダガー・ポジションでひたすら下りていく。
 向かって左手にドームの岩峰。さらに下にダイヤモンド・スラブが確認できたら、対面の支稜から第二尾根に取り付くらしい。
 先行した私がある程度下った所から右手にトラバースして取り付こうとしたが、その辺りは岩が全て逆層の畳岩で取り付くシマ無し。
 後から来るjuqcho氏に声を掛け、少し上の雪の斜面から第二尾根に取り付く。

  ここから第二尾根に取り付く

 急な雪の斜面を上がると、スッキリした雪稜。
 向こうには笠ケ岳や飛騨側の谷が良く見える。
 そのまま雪稜通しに上がっていくと、その先、浅いルンゼ状の雪壁がダーッと100m以上続く。
 雪面はところどころ堅い所があるがアイゼンの前爪が良く刺さり、Wアックスで息を切らしながらシャカシャカと高度を稼いでいく。
 なかなか気持ちよく、いかにも登っているなぁと実感できるピッチだ。

  急な雪壁をWアックスで駆け上がる

 どん詰まり正面には黒々とした四角い岩峰。
 その手前がほんの少しブルー・アイスとなっている。
 ほんの数mの段差なので直登できないかと探ってみるが、ピックで叩くとガチガチに砕けてイマイチ。
 仕方ないので左手から上がって、岩場の基部に到着。
 ここでロープを出し、まずはⅢ級ぐらいの岩のピッチをjuqcho氏リード。

  リードするjuqcho氏

  Ⅲ級ほどの岩のリッジ

 岩のピッチが終わると、今度は細いスノー・リッジ。
 これまでいろいろな山で「馬の背」と呼ばれる箇所を見てきたが、ここは正真正銘のリアル「馬の背」。
 思わず跨ってしまいたくなるほど両側がスッパリ切れていて、恐る恐る四つん這いで私がロープを伸ばす。
 本日は快晴無風で良かったが、ロープが弓なりに舞うほどの風雪だったら思わず泣きが入りそう。

  続いて私がリード

  リアル「馬の背」スノーリッジ

  なかなかシビレます!
 

 そのうち槍の方角から音もなく一機のグライダーが飛んできた。
 かつては「鳥も通わぬ」と言われた滝谷だが、グライダーやヘリは時折通ってくるみたい。

 そろそろ稜線も近づき、肝心の「水野クラック」ってのはどこだろなぁと探していたら、先行したju9cho氏が「ここではないか。」と見つける。
 で、何となく予感はしていたのだが、クラックの中は雪どころか堅い氷がビッシリ詰まっている。
 うーん、ちょっとこれは・・・と躊躇しつつも勧められるままに私がリード。
 ファイナル・ウェポンとしてフラット・ソールをザックの中に忍ばせてきたが、雪氷と岩のミックスなので出番無し。久々のアイゼン登攀となる。

  これが「水野クラック」

 出だしから氷をカットしながら岩に取り付き、ホールドはあるもののガチ氷が邪魔してアイゼンの爪の置場が無く、けっこう怖い。
 最初の2ピンまでA0使わせてもらって(ヘボでスミマセン)、どうにか人心地つき、後は大きなガバに助けられ、上段のⅢ級程度の岩場を越えトップアウト。
 何となく甘く見ていていたけど、けっこうこれだけでもキツかったです。

  意外と厳しかった!

 残りはミックス帯のリッジ状を半ばコンテで進み、行きで通った斜面を再びトラバースで戻り、終了。
 ここでガッチリ握手を交わす。
 滝谷第二尾根はネットでもあまり記録が無いが、GWの時期、天候に恵まれれば岩と雪の変化に富んだ好ルート。
 岩はそこそこ固いがハーケンを打つと割れやすいので、長めのスリングが重宝した。

 下りは北穂沢を尻セード3ピッチを交え、一気に下降。
 涸沢の天場に着いたら、どうしたわけかハーケンと8環のついたビナを紛失。どうやら尻セードの途中でゲートが開いてしまい抜けてしまったようだ。

 教訓 「尻セードの時、貴金属?はザックの中にしまいましょう。

 当然のごとく、今日も一日の仕事?が終わって
 テント村はさらに分譲が進められ、酔ってしまうと自分たちのテントを見失うほど。

  無事生還



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4 コメント

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Unknown (ぴょん太郎アスリート)
2013-04-02 04:12:58
はじめまして、、、
以前から、KUさんのブログとHP拝見させていただだいておりました。
私ごとで恐縮ながら、私も今年ようやく念願のアルパインデビューをさせていただいたのですが、僕のやってる事とKUさんのやられているクライミングの次元が違いすぎて、凄すぎてあいた口がふさがりませんでした。
これからも楽しみにKUさんの記事の方読ませていただき勉強させていただきます(`_´)ゞ

返信する
こんにちは。 (現場監督)
2013-04-04 01:26:52
拙いレポを見ていただき、ありがとさんです。
んー、そんな次元の違いはないと思いますが・・・。

まぁ私も歳なんで無理せず楽しんでクライミングができればいいかなと。
今度のGWはどこかの山へお出かけでしょうか。
ヘボおやじの山レポが少しでも参考になれば幸いです。
返信する
ありがとうございましたm(_ _)m (ぴょん太郎アスリート)
2013-04-09 13:42:33
現場監督さんいや、KUさん!!
マイブログにてKUさんのコメントありがたく頂戴いたしました。
KUさんから頂いたコメントで元気になりました。本当にありがとうございましたm(_ _)m
参考なんてとんでもないです。僕にとっては異次元です。とても真似なんてできませんm(_ _)m

(5月は残雪期初級コースアルパインと行きたい所ですが、僕のアルパインの師匠が3連休以上の連休が取れないお人なので、やむなく断念です。残雪期アルパインの代替え案じゃないのですが、穂高にBCに行こう思っております。)

思い返せば3年ほど前にネットにて植村直己さんの事を調べていてたまたま検索経由でにてKUさんのHPたどり着き、拝見させていただきました。
KUさんのヒマラヤ遠征含め山岳歴やフルマラソンサブ4や100キロマラソンそして、自転車での24時間本州横断等々、様々な挑戦に度肝を抜かれ、以来僕もKUさんのような生き方がしてみたいとずっと勝手ながら憧れていました。
そして、僕もKUさん同様ドMの道に進みました(笑)

私ごとで恐縮ながら、早速夏山やハーフマラソンからはじめ、自転車も購入、そして、アルパインデビューと、、、ずっとKUさんの昔お通りになれれたであろう軌跡を辿られていただいておりました。
まだまだ生まれたばかりひよっこですが、KUさんのような生き方ができればとの思いで、日々精進しております。

当時KUさんのHPにはアルパインの事が詳しく掲載されてなかったのですが、ヒマラヤ遠征やルートを拝見するにうすうす本物だと想像しておりました。

今回、更新なされたブログでアルパイン記事読ませていただきやはり僕の憧れ続けたKUさんは本物だったと確信しました。

そんなKUさんから同じ匂いとのお言葉大変ありがたく恐悦至極でございます。

これからも、勝手ながら我が心の師匠としてブログ拝見させていただき勉強させていただきます。
今後とも是非是非よろしくお願いしますm(_ _)m
返信する
Unknown (現場監督)
2013-04-11 23:38:16
うーん、ちょっと・・・いや、かなり過大評価されているような。

他にやることも無いのでとりあえず山は続けておりますが、フリーはいつまでたってもうまくならないし、アルパインと沢登りも頭打ち。
自転車だって日本海まで行けてませんし(近々、日数かけてミニベロで再チャレンジ予定)、マラソンも歳による頻尿傾向のため、参加を自重しています。

まぁ自分のできる範囲で楽しめればそれでいいかなと・・・。
お互いガンバって生きましょう!
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