二日目 のちのち
キャンモア-モレーンレイク(Hi Lake Louise"Canadian Alpine Centre"泊)
昨夜ここに来て気付いたのだが、同室の一人がどうも日本人のようだ。
で、宿のリビングでくつろいでいるところを「Excuse me.」と声を掛けると、日本語で「こんにちは。」と返ってきた。
関西の方で石田さんという男性。
小4の娘さんをこちらで行われているYMCAのサマースクールに一人で送り、その様子を見に来たとのこと。
あいにく自分と入れ違いで今日帰ってしまうそうだが、いろいろ話が聞くことができた。
まず、このクラブハウスではWi-Fiが使えることが判明。ここで初めて家族とLINEで連絡がとれた。
(今回の旅では節約のため海外パケ放題やレンタルWi-Fiも使わず、すべて現地のFree Wi-Fiで対応することにした。)
さらに町の様子や道路の状況、キッチンにあるコーヒーはタダで飲んでいいことなど教えてもらう。
それにしても小学生の娘さんはたった一人でカナダの片田舎に連れてこられて、さぞかし心細かっただろう。
初日は電話口で泣いていたそうだが、大したものである。
(私など親馬鹿なので、大学生の自分の娘ですらなかなかやるなと思ってしまう。)
自分も昨日はかなりテンぱってしまったが、少しは気持ちが落ち着いてきた。
今日は雨。焦る気持ちを落ち着かせるには丁度良い。なるようにしかならないのだ。
「こっちの山は迫力ありますね。圧倒されます。」と言うと「そうですか。まぁ、すぐに目が慣れますよ。」と笑っていた。そういうもんなのか?
とにかく、昨日はクリス、今日は石田氏に会えてラッキーだった。
雨も小降りになって11時にCheck Out、レイク・ルイーズへ。
キャンモアからは70~80kmぐらいか。ハイウェイを使って小一時間。ナビも順調だ。
レイク・ルイーズではまずモレーン・レイクへ行ってみる。
ここは今回の旅で最初に登る予定の山Mt.テンプル(Mt.Temple 3,543m)の登山口にあたる。
ワインディングの山岳道路を約10km。
平日なのにパーキングは溢れているが、何とか停める。
しかし、ハイウェイを走る間も左右次々と現れる山に一つ一つ目を奪われていたが、モレーン・レイクを取り巻くテン・ピークス周辺の荒々しさはまた格別。
穂高の屏風岩や谷川の衝立岩を何十個も合体させたようなのがあっちにズドン、こっちにズドンとあるものだから、今まで自分が登ってきた日本の山は一体何だったんだろうと思ってしまう。
Moraine Lake & Ten Peaks
あいにくの曇り空だが、それでも湖の色は物凄い濃いブルー。これは岩の粒子によるものらしい。
日本でいうと摩周湖辺りが近い雰囲気かもしれないが、周りの岩山の荘厳なスケール、吸い込まれそうな湖面の色などインパクトはモレーン・レイクの方が断然上。
遊歩道のあちこちをリスやマーモットが走り回り、良く知られた観光名所ながら今回、自分が回った場所でも特に気に入ってしまった。
その後、Mt.テンプルへのアプローチ確認。
モレーン・レイクからはラーチ・バレー(日本語に直訳すると「カラマツ谷」)、センチネル・パスとトレイルを経由してテンプルに至るが、トレイル部分が熊のテリトリーらしい。
で、トレイルの起点に行くと、無情にもこんな立て看板が。
4人以上のグループで無ければ、立入禁止。
日本での情報では近くにワーデン(保安官=日本でいう山岳警備隊員もしくは指導員)がいてチェックしているという話だったが、この時は誰もいなかった。
いずれにしても、「BY LAW」と書かれてしまっては、外国人が勝手に規則を破るわけにはいかない。
ギフト・ショップを覗き、小雨もパラついてきたので、適当に写真を撮ってモレーン・レイクを引き上げる。
今日はだいぶ雰囲気に慣れてきて、道行く人との挨拶は当然として、写真を撮っているグループを見かけたら"Can I help you?"などと余裕も出てきた。
レイク・ルイーズに戻り、インフォ・センターへ。
Information Centre @ Lake Louise
Mt.テンプルについて確認するが、やはりセンチネル・パスまでのトレイルは4人以上で歩かないとダメとのこと。(パス~テンプル山頂までは一人でも可)
明朝、トレイル起点で同行パーティーを待つという手もあったが確実ではない。
残念だがテンプルは諦め、代わりにお勧めのスクランブルはないかと訊ねてみる。
カナダでの山歩き、山登りは大きく3つに分類され、
・ハイキング → 整備されたトレイルを行くもの(テント、小屋泊まりのトレッキングも含む。)
・スクランブル → ロープ、ピッケル、アイゼンまでは使わないが、手を使って簡単な岩場登りを含むもの。
・クライミング → ロープ、ピッケル、アイゼンなどを使うもの。ジャンルはアルパイン、ロック(マルチ)、フリーと分かれる。
と、大体こんな感じ。
さらにスクランブルでも、easy(易)/moderate(中)/difficult(難)と分かれているので、 「moderate or difficult. No problem.」と注文し、紹介してもらった中で一番近いMt.ニブロックとMt.ホワイトに行ってみることにする。
このインフォ・センターからも正面右に間近に見える山で、どちらも2,900m台。
正面左に雪を頂いて堂々とそびえるテンプルに較べるとどうしても見劣りしてしまうが、剱とほぼ同じ標高と思えば悪くない。
カナダの山のグレーディングがまだわかってないし、まずはこちらの山の様子を知るには手頃だろう。
応対してくれた中年女性は、ガイドブックのニブロックとホワイトのページをコピーし、 「Take care.Have fun.」と言って渡してくれた。
(特に登山届のようなものを出せとも言われなかった。)
インフォ・センターでは天気予報もチェックするが、とにかくここロッキーの天気はコロコロ変わる。
一日のうちに雨→晴れ→曇り→雨・・・と変わるので天気予報などあまり当てにならず、後で娘に聞いたらカナダの予報が当てにならない格言まであるそうだ。
逆に言うと天気予報が悪くてもまったく悲観することはない。Tomorrow never knows.というわけだ。
とりあえず明日の段取りができたので、午後遅くレイクルイーズ・ビレッジのカフェで一休み。
元々小食な方だが、ビーフパティとクリスピーケーキだけで腹一杯、というか食べきれない。
こんなのばかり食べているせいか、とにかくこちらのオバハンは巨大で、若い子もその予備軍となっているのが多い。
カナダといってもアヴリル・ラヴィーンみたいなのは、そうそういない。
それにしても、このレイクルイーズという所は本当に何も無く、インフォ・センターと土産物屋がちょこちょこっと集まっているエリアが実は中心街と知ってちょっと驚く。
何となく小さな町を想像していたが、町というより日本でいう高速道のサービスエリアぐらいの規模だ。
それでも小さなスーパー・マーケットとリカー・ショップがあるので、滞在には困らない。
明日から三日間の食糧を買い出し、本日の宿"Hi Lake Luise"へ。4人コンドミニアムで一泊$40(ACCメンバー料金)
キャンモアのクラブハウスより高いだけあって、部屋はこちらの方が広くて快適。基本素泊まりのホステルなのに小さなパブ・レストランまである。
明日の用意を済ませ、夕方、近くを散歩。
ホステルのすぐ裏手を鉄道が走っており、時折、大きな音と共に長大な貨物列車が通る。
(現在、旅客業務は無く、近くの駅も廃駅でそのままレストランになっているらしい。)
私は「鉄ちゃん」ではないが、それでもこちらの鉄道には開拓者魂というか何ともいえない郷愁と男のロマンを感じる。
夏のロッキーは昼が長く、夜の9時半ぐらいでもまだ空はほんのり明るく、日本の夕暮れのようだ。
人によってはそれで寝不足になってしまうかもしれないが、アドレナリンのせいかまったく眠くならず、行動時間が多く取れるのが助かる。
ホステルの客もけっこう遅くまでビール片手にテラスでたむろしている。
客層もハイカー、クライマーというより、超高級なシャトー・レイクルイーズに泊まれない庶民派観光客が多いようだ。
そんな感じで二日目もそろそろ終わろうとする頃、突然、左腰が痛み始める。
エッ、何これ?まさか、ここまで来てギックリ腰?まだ一つも山に登ってないのに・・・。
何ともイヤな感じの痛みに暗澹とした気持ちになる。
To be continued.
写真集 カナダ(出発~キャンモア、モレーンレイクほか)