KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

春の南ア 間ノ岳・弘法小屋尾根から農鳥岳

2013年05月05日 | アルパイン(残雪期)

日程:2013年5月3日(祝)~4日(土) 前夜発一泊二日
同行:M田師匠

 弘法小屋尾根は南アの間ノ岳へ向かって延びる東面の尾根で登山道の無いバリエーション・ルート。
 下部は鬱蒼とした樹林帯だが、上部はこの時期だと雄大な展望が望める雪稜となる。
 昔は知る人ぞ知るルートだったようだが、今から10年ほど前に雑誌「岳人」で紹介されてからさらに人が入るようになったとか。
 かつて静岡の山岳会にいたM田氏オススメということでGW後半戦に臨んだ。

一日目
天候:
行程:奈良田第一発電所7:45-荒川出合9:40-弘法小屋尾根取付10:55-標高2,600m付近テン場15:45

 前夜、横浜を出発。
 カーナビに従い、登山口の奈良田まで中央高速経由としたが、横浜からだと東名経由でもそれほど変わらないようだ。
 夜間アクセスする場合、身延から早川上流にかけての道は多数のシカをはじめ、狸、ニホンカモシカなどが現れ、サファリパークのよう。運転には要注意!
 奈良田温泉の広い駐車場で仮眠するが、後から来た男女四人組(登山者)が時間をわきまえずやたらはしゃいでうるさかった。 (北岳に行くと言ってたあんたらよ!

 朝、車を第一発電所前のスペースまで移動し、ここからスタート。
 今回のコースは地図上では「ロ」の字型を描いており、まず第一ステージは南アルプス街道を10kmほど北上することになる。
 で、知る人ぞ知るトンネル前のゲートを強行突破、あとは舗装された林道を四方山話をしながらひたすら歩く。

  第一発電所前「開運トンネル」を突破
 
 途中に見栄えのする立派な滝が数ヶ所、またトンネル内では大きなコウモリを観察できた。
 最後の鷲ノ住トンネルは1kmと長く、真っ暗なのでヘッデンを出す。
 フツーに歩く速度を時速4kmとしてこの部分で3時間弱を想定していたが、快調なペースで2時間ほどで荒川出合に到着。
 ここまで回りは新緑に覆われ、もしかして稜線もほんの少ししか雪が無いんじゃないかと不安だったが、出合から見る上部は白銀に輝き、なかなか魅力的だ。

  荒川出合

 一休みした後、第二ステージ。
 荒川沿いに荒れた工事道を進み、二回の渡渉を経て、弘法小屋尾根に取り付く。
 時期にもよるだろうが今回の渡渉はせいぜいスネ程度で、先週の鹿島槍天狗尾根に較べたら楽勝。
 それでもM田氏は渡渉が苦手(嫌い?)なようで、渡る場所をけっこう慎重に選んでいた。

 荒川が北沢と南沢に複雑に分かれる辺り、作りかけの巨大堰堤の間を抜けて行くと、正面のヤブ斜面に鉄パイプで組んだ簡易ハシゴが見つかった。ここから弘法小屋尾根。
 M田氏の先導で、尾根を上がっていく。
 登山道の無い尾根で、それ相応のヤブ漕ぎを覚悟していたが、思ったよりもよく踏まれていて、十年振りに訪れたM田氏も驚いていた。
 ザックが枝に引っかかって格闘することもなく、順調に高度を上げる。途中、ピンクテープも有り。

  下部は樹林帯の登りが続く。

 標高2,100m辺りから雪も出てきてアイゼンを着ける。
 相変わらず辛抱我慢の登りが続くが、樹間から上部の白い稜線が望めるようになる。
 ふくらはぎが攣りそうになる頃、標高2,600m辺りでようやく本日の行動終了。
 森林限界近くの鞍部で、農鳥岳や富士山が望める好適地だ。
 M田氏が空荷で上部偵察に行っている間に私がテント設営。昨夜は3時間半ほどしか寝ていないので、今夜は夕飯を済ませたら速攻で寝る。 

  標高2,600m付近の鞍部に張る。
 

二日目

天候:のち(稜線上、西風・強)
行程:テン場5:30-間ノ岳7:40-農鳥小屋8:40-農鳥岳10:45-大門沢下降点11:30-大門沢小屋14:30~15:00-奈良田第一発電所18:00

 朝3時半起床。
 多少の風はあるが、きれいな半月と満天の星で天気はバッチリ。
 昨日は放射冷却なのか陽射しがあるわりには空気が冷たく、軽量化のためウェアもとことん削ったM田氏はかなり寒い思いをしたようだが、朝から大盛りのウドン&ライスでしっかりリカバリー。
 しかし、朝からよくそんなに食えるね・・・。

  新しい朝が来た、希望の朝~だ

 本日の行程はまず間ノ岳まで4時間、間ノ岳から農鳥までで4時間、さらに大門沢小屋まで3時間と計11時間行動を想定。
 自分より一回り若いM田氏は「間ノ岳までノンストップで行く」と言ってるし、暴走気味にスピードアップされたらはたして付いていけるかちょっと不安である。

 テン場をスタートするとすぐに雪稜となる。
 右に北岳、左に農鳥岳と180度ワイド画面で素晴らしい展望が広がる。
 この雄大なロケーションは確かにM田氏がススメるように、ちょっと北アや他の山ではなかなか味わえない。山がデカい南アならではのものだと思う。

  弘法小屋尾根を見下ろす

 雪稜はきれいに繋がり、間ノ岳頂上に向かって延びていく。天気は100%快晴だ!
 途中、Ⅲ級5mほどの岩稜のクライムダウン、さらにバックステップで下る急な雪の斜面もあったりするが、ロープは使わず。 (もちろん状況とパーティーの力量によっては補助ロープあった方が良いと思う。)

  
 馴れたパーティーならロープ不要だが、プチ・アルパインね。

 きつい登りだが、きれいで穏やかな雪稜に癒されながら、間ノ岳山頂に到着。
 ここまで来るとさらに展望が広がり、南部の塩見、荒川、赤石岳など遥か遠くまでクッキリと見渡せ、また中央アルプスも一望できた。
 テン場からここまで4時間みていたが実際は2時間ちょっと。予定よりだいぶ「貯金」ができたが、ここから見る農鳥岳はやはり遠い。

  間ノ岳山頂、3,189m

 一休みした後、第三ステージとなる農鳥岳までの稜線漫歩。
 冬から春にかけて中央高速を走っていると甲府辺りで白根三山の白い稜線が目に付き、いつか雪のある時期に歩いてみたいと思っていたが、やっとそれが叶った。
 展望の利く気持ちの良い稜線歩きだが、今日はちょいと西風が強い。
 目出帽の上からジャケットのフードも被って歩くが、風に打たれながら進むのはけっこう体力を消耗させられる。

 
 農鳥岳へ向かう。南アは山がデカい!

 途中にある農鳥小屋は屋根を残してほぼ雪中に埋まっていた。
 一休み後、鞍部から再び登り返し。西農鳥から農鳥、さらに大門沢への下降点までは雪が解け地肌が随分見えていたが、この間がやたら長く、しんどかった。
 M田氏のやや速めだが的確なペースでこの第三ステージ(間ノ岳-農鳥岳)も4時間見ていたところ3時間でクリア。
 一応三日間の予定で来たが、この分なら今日中に降りられそう。

 
(左)農鳥小屋前にて。小屋の屋根が埋まっている。     (右)農鳥山頂。向こうに尖っているのが北岳

 大門沢への下降点には、昭和40年代の正月にこの地点で力尽きた若い登山者の遺族の方が建てられた遭難防止用の鐘がある。
 今回は最高の天気に恵まれ視界が良く利いたが、この南アルプスの広い稜線は吹きさらしで逃げ場が無いので、特に積雪期は自分の力と状況を十分に判断してから突っ込まないとたしかに怖い。 

 で、最後の第四ステージ。
 大門沢への下降はいきなり急な雪面から始まる。
 昼を過ぎ、そろそろ雪が腐ってくる時間帯。アイゼンに着くダンゴ雪を叩き落しながら、尻セード三連発で最初のスロープをクリア。
 その後、樹林帯の中の下りとなるが、トレースと赤テープに導かれるものの、時折バックステップで降りるようなけっこう急な下りで気が抜けない。
 いいかげんウンザリした頃、やっと大門沢小屋の赤い屋根が見えてホッとする。

  きれいに使われている大門沢小屋

 大門沢小屋は管理人はいないようだが、避難小屋として開放されていて数人の登山者が既に利用していた。
 ここにいる人たちは明日、農鳥を目指すようだが、うーん、自分としては雪の時期、このルートを登る気にはちょっとなれない。
 やっぱりここはどちらかというと下降ルートで、登るにはかなり急でシンドいと思う。

 時間的に余裕があるので計画を繰り上げ、ここには泊まらず今日中に下山を決定。
 M田氏はこの時点で両足にマメと靴擦れを作ってしまったようだが、こちらは知らなかったのでガンガン下る。
 
 小屋からはウェアもザックも全身黒づくめの若い単独の人と一緒になる。
 話をすると一泊二日で池山吊尾根から白根三山を越えて来たとのこと。自分たちもまずまずのペースと思っていたが、それよりも上手がいたとは。いやはや大したもんだ!
 黒ベースのいでたち、どことなく風貌も似ているので、誠に失礼ながら勝手に「ニセ・クリキくん」と心の中で呼ばせていただく。いや、それよりも「ソックリキくん」の方がいいか?
 なかなか面白く、感じの良い好青年だった。

 どんどん下っていくが、小屋から下も長く、場所によってはけっこう悪い。
 夕方近くになっても登ってくる人はいて、5時過ぎから登り始める太めのオトーサンにはさすがにちょっと不安を感じたが、はたして大丈夫だったでしょうか?
 
 最後はヘロヘロになりながらも、ヘッデン残業にはならずに無事、車の置いてある第一発電所前に下山。
 奈良田温泉の鹿肉定食とやらを食べたかったが、残念ながら時間的にアウト。
 代わりに途中の「ヘルシー美里」という温泉(日帰り500円也)で汗を流した。

 今回登った間ノ岳・弘法小屋尾根は、ある程度山に慣れている人にはオススメのライト・バリエーション。
 天気の良い雪の時期、一度は登っておいて損はない南アルプスの絶景ルートだった。


写真集「春の間ノ岳・弘法小屋尾根~農鳥岳」



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2 コメント

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Unknown (M田)
2013-05-15 02:25:44
M田です。

間ノお疲れ様でした。この時季でも今年の南は雪が多いのではと予想して計画したものの、山行直前富士山東面の雪がどうも少なそうに見えて、些か雪の状況が心配でしたが杞憂に終わって良かったです。この時季これだけの雪稜を南で味わえたの監督さん共々私も非常に幸運でした、これ以上は望めない位の絶好。細沢カールも雪崩んばかりの雪を湛え、非常に美しく見えました。10年位前にトレースした時はシュプール跡が残っていて、良くこんなところを滑るものだと感心したものですが、今回の様相を見て納得。今回は農鳥経由~奈良田でしたがこの尾根をピストンで戻る場合、2100m付近でやや右に進路を取る必要がある事に注意する必要があります。ただ今は赤テープがしっかり付けてあるので進路を見誤る可能性は低いのかもしれませんが、そのまま下り続けてしまうと苔苔パラダイス道経由北沢雪渓着地でかなり際どいトラバースを遣り過ごして北沢南沢出合戻りで桜に吹雪かれるという中々素敵なエンディングでした。行きの出合で見た桜、崩れ落ちたままの家屋(10年前もあって今も残っている、、、)も健在でした。

大門沢下降点からの下り、相変わらず真綿で首を絞められるような絶妙な悪さが長く続くのは昔も今も変わらずです。最初に登った本格的な冬山がこの農鳥だったのですが、登りも下りもかなりの忍耐。The南です、、、この下り、夏道(沢筋)、冬道(尾根どおし)が少し入り乱れて、最初はルート取りがやや分かり辛かったのですが途中からは様相を思い出して落ち着きました。昔の話ですが沢筋で雪崩の事故があったように記憶しています。傾斜が傾斜なので、白馬大雪渓(いつも事故があるポイント)ではありませんが、多量の降雪があった時のこの沢筋は非常に危険、なので基本冬道を通りましょう、になっています。

雪稜もまだまだ登りたいルートがあるので、来シーズンまた宜しくお願いします。

P.S 気になる(登ってみたい、取り付いてみたい)雪稜ルートとしては滝沢R、鹿島天狗、北壁主稜、抜戸南、本院岳D等々。大唐松尾根は荒川側から取り付けそうです。渡渉はどちらかというと避けたいです、、、冷たいし、、、
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Unknown (現場監督)
2013-05-16 19:49:50
M田さん、弘法小屋尾根お疲れさんでした。

このところGWというと北アがメインなので、甲斐駒以外の雪の南アはなかなか新鮮でした。
(アクセスの鹿パラダイス?、出だしのバリケード強行突破、農鳥からの下りもなかなか気が抜けないなどワイルドな一面もありましたが)

間ノ岳から見た塩見、荒川、赤石なども夏と違ってまた魅力的であり、行きたい山がますます増えてしまった感じです。もちろん、いわくつきの笊ヶ岳もそのうち行くつもりです。(大唐松はちょいビミョー?)

滝沢Rに本院岳D、はたして自分が行けるのか、行ってもいいものかわかりませんが、これも目標の一つです。
老体ですが、引き続きよろしゅう。
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