丹波の農作業の帰りに、書店で見かけた『北斎 富嶽三十六景』(岩波文庫)を買い求めた。身体を動かすと、脳みそも刺激を欲するようだ。『富嶽三十六景』を画集で観るのは、9年前に仕事で取り上げて以来で、久しぶりである。『ゴッホの手紙』からの引用だけで本文を構成した、このいささか趣向の変わった思い出深い仕事は、『アナと雪の女王』を観た記憶に結びついている。オーナーの命令どおりに従った仕事が予想通り不如意に終 . . . 本文を読む
れんちゃん、大阪日本橋の国立文楽劇場にやってきたよ。一年ぶりだね。文楽人形も…くいだおれ太郎もマスクをきちんとしていて、えらい?今日2月8日開演の「日本の文化に親しむ 花の集い」は、40年続いてきた上方文化芸能協会主催の最終公演なんだ。岡田嘉夫先生のポスターも、これで見納めだね。 岡田先生はもう新作を描けないから、絵は前回のポスターのものの流用。「花の集い」の揮毫は、大和屋の女将さん . . . 本文を読む
伊藤晴雨『江戸と東京 風俗野史』はいい。ただし、この本には索引がない。索引がないのは不便である。何かを調べるために手に取ることはなく、仕事の合間の息抜きに眺めていることが多い。先日も、一石橋の橋詰にあった迷い子のしるべ(この石標は現存)について書いたのだが、本が刷り上がってから、本書に詳細な図入りの解説があることに気がついた。幸い、別の資料を参照にした私の記述は間違いはなかったが、こういうのはギク . . . 本文を読む
誤操作で浮上してしまった過去記事の「おいしいすじ肉」は、元さやに戻ってもらいました。この記事で「最近読んでいる本」とあったのは、上原善広『日本の路地を旅する』です。https://blog.goo.ne.jp/kuro_mac/e/cba10e277ecd404f0350c2ce93eb2a10さて、連載中の仕事で、古典落語の『らくだ』からの引用が必要になり、柳家小三治、立川談志、三遊亭圓生を聴き . . . 本文を読む
逸翁美術館を出て歩いていると、「落語みゅーじあむ」を見つけた。入館無料。館内に入ってみた。 上方落語では「池田の猪買い」「池田の牛ほめ」「鬼の面」の三作で池田が舞台になっている。そして、勲章をもらった桂文枝が池田市民なのが、「みゅーじあむ」設立の理由らしい。 資料もたくさん揃っている。落語について何か調べものがあったら、ここに来よう。 「鬼の面」は、かつての大阪および . . . 本文を読む
先日、アマテラスが、『日諱貴本紀』の国譲り神話で、両性具有神として描かれているという話をした。アマテラスは、今日では女神と考えられているけれど、『源平盛衰記』では衣冠束帯に身をかためた男性神として出てくる。中世には、武士台頭の時代ということもあって、たいていは男性神として描かれる。祇園祭の曳山(ひきやま/山車)の「岩戸山」の御神体のアマテラスも、男性の姿をしている。 天岩屋戸で、裸体に近いアメノ . . . 本文を読む
猫つながりの話題である。 きのうのエントリで、猫好きには見えない自分の人相の悪さについて、「今や都市伝説の猫さらいに間違えられそうな」と書きかけ、いやな気分になり、消した。人相の悪さは否定しないが、これはない。 『少年カフカ』では、猫殺しが絶対悪として描かれるけれど、そこには、欧米人が「イルカやクジラを殺すな」というのに似た、偽善や欺瞞も感じないではいられない。猫殺しの描写の残忍さ、不愉快さは本 . . . 本文を読む
『古語林』(大修館)はおもしろい。コラムも役に立つ。たとえば、「耳がよかった万葉人」より。 <万葉集の時代には清音60、濁音27を使い分けていた(現在は清音44、濁音18)。「あき」のキは甲類の「伎・吉」、「つき」のキは乙類の「奇」というように決まっていた。>(p471) 「折口信夫は古代人の言葉を聞くことができた」と吉本さんが評したのも、このことかと感心した。おそらく折口も、万葉人の発音を聞き . . . 本文を読む
ソクラテス以前の古代ギリシアの自然哲学について調べるのが、ささやかな楽しみだった。その頃、一斉弾圧で地区党も壊滅状態で、なにもやることがなかったのである。ほんとうはマルクスの学位論文に関するノートを取っていたはずなのだが、デモクリトスもエピクロスも実におもしろい。『岩波哲学講座 自然の哲学』の巻末エッセイである林達夫「精神史」は鮮烈だった。ミケランジェロやレオナルドを通じた「洞窟」についての考察は . . . 本文を読む
<みのむし、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、親に似て、これもおそろしき心あらんとて、親の、あやしき衣(きぬ)ひききせて、「いま、秋風ふかん折ぞ来んとする。まてよ」といひおきてにげて去(い)にけるもしらず、風の音を聞きしりて、八月ばかりになれば、「ちゝよ、ちゝよ」とはかなげになく、いみじうあはれなり。> (枕草子・四十段)何も何も小さきものはみなうつくし。 . . . 本文を読む