新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

アマテラスの誕生

2019年09月24日 | 源氏物語・浮世絵・古典・伝統芸能

 先日、アマテラスが、『日諱貴本紀』の国譲り神話で、両性具有神として描かれているという話をした。アマテラスは、今日では女神と考えられているけれど、『源平盛衰記』では衣冠束帯に身をかためた男性神として出てくる。中世には、武士台頭の時代ということもあって、たいていは男性神として描かれる。祇園祭の曳山(ひきやま/山車)の「岩戸山」の御神体のアマテラスも、男性の姿をしている。

 天岩屋戸で、裸体に近いアメノウズメの踊りについ興味を持って覗いてしまうのは、ふつうに考えれば男性だろう。しかし、女性が好きな女性もいる。

 神話に描かれる天照大神は、乱暴者の弟のスサノオが暴れ回っても、何もできずおろおろするばかりだ。神様対決にも負け、メンツも自信も失ったショックで、高天原をやりたい放題荒らされ、天岩戸に引きこもってしまう。気が弱く臆病で、コミュニケーションにも難点があるけれど、心優しく有能で、人望(神望)もあって、ピンチになると八百万の神(やおよろずのかみ)が駆けつけてくる。

 溝口睦子さんの『アマテラスの誕生』(岩波新書)を読みながら、誰かに似ていると思ったら、トップ画像にした、『NEW GAME!』のひふみんこと、滝本ひふみだった。新人の青葉を心配するひふみんのように、「アメノウズメちゃん……大丈夫かな?」と心配になって、つい覗いてしまったのではないかと、私は想像するよ。

 この心優しくキュートなポンコツ女神を、「萌え」という概念を理解しない明治政府は、富国強兵を推し進めるヤクザ国家のゴッドマザーに祭り上げてしまった。言語道断である。日本滅べ。

 まあ、スサノオが高天原に来たときは、侵略を疑い、完全武装して迎えるから、典拠がないわけではない。コスプレイヤーのひふみんだって、キャラになりきれば、「嘘をつくなんて悪い子ね」とドSの女王様にもなれる。しかしすぐにわれに返り、赤面して、10秒も持たず、いつものポンコツモードに戻る。アマテラスもひふみんのように、「戦わなきゃ……だめ?」と、素の自分に戻ってしまっのではないかと思われる。
 
 『アマテラスの誕生』は、病院でノートを取りながら読んだのだが、アマテラス像の変遷に、古代国家と神話の変遷を探求する、スリリングな一冊だった。天皇家の先祖は高御産巣日神(タカミムスヒ)というのが正統で、『古事記』でも『日本書紀』でもそう書かれ、宮中行事でもそうなってきた。アマテラスがゴリ押しされるのは、明治以降のことだということは、もっと知られてもいい。

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