写真集 北朝鮮の山 [大型本]
飯山 達雄 (国書刊行会)
http://p.tl/VlSC
編集にあたって
本書は昭和初期から終戦に至る24有余年間に行なわれた朝鮮半島山岳踏破の記録(北朝鮮篇)である。
本書の出版は、編者・飯山達雄の宿願であり、数次にわたる出版計画の変更を経て、原稿及び写真選択等の編集がその生前に9割方完成していた。当社では、編者の遣志を継ぎ、遺されたメモ等をもとにまとめたものである。
文中、地名・山岳・河川名等固有名称は日本の読者を念頭に置いたため、漢字に日本式の読み方を付した。本来当該国語の読みが正しいことは言うまでもない。韓国人の読者の方々に他意のなきことを申し上げる。また.概念図なども付すべきであったが、編者が亡くなられ、当時の概念図を正すべくもなく.この度の刊行にあたり見送らざるをえなかった。
北朝鮮に日本アルプスに比肩する魅力あふれる山々があったことを、吾々は忘れていた。政治と歴史の困難な問題はあるものの近い将来、訪れてみたい岳人も多いことと思う。
飯山達雄の名は、中国からの引き揚げに伴う民族の慟哭を鮮烈な映像で記録した昭和悲史撮影の目撃証人として知らぬ者はない。しかし忘れてならないのは、氏の本領は練達の岳人であり、優れた山岳写真家であったことにある。
現在北朝鮮は、地球上最後の白地図地帯である。人工衛星で何がわかるにしろ、地上風景としてそれを知っている人は多くない。厳寒の白頭山の風雪に身を曝し、朝鮮全域の山岳を四季にわたり踏破しただけでなく、写真を撮るということが困難であったこの時代、ブリザードの中、股にカメラを入れ凍結を防ぎ、凍傷の危機に瀕しながら二、三枚ずつ撮ったという。零下4~50度の体験を知るべくもないが、機材、感材、山装備の今昔を考えれば氏の活動が如何なるものであったかが窺われる。
本書は60有余年を経た記録であり、実践的なガイドブックの機能に若干欠けるうらみはあるものの、交通の発達分野を除けば、観察、描写から読み取れる情報は現在においても充分に実用に酎えられるものといえよう。紀行の端々に見られる地域の人々との交流や氷河圏谷の発見、スキーの原型ともいうべき「ソルメ」の紹介などは、地理・民俗的にも興味ある記録である。
写真は終戦により持ち帰りが困難を極めた末に残されたもので、暗黒イメージの戦前において、清洌なカメラアイと健全なスポーツアルピニズムが存在したことに感動を禁じえない。
国書刊行会
飯山 達雄 (国書刊行会)
http://p.tl/VlSC
編集にあたって
本書は昭和初期から終戦に至る24有余年間に行なわれた朝鮮半島山岳踏破の記録(北朝鮮篇)である。
本書の出版は、編者・飯山達雄の宿願であり、数次にわたる出版計画の変更を経て、原稿及び写真選択等の編集がその生前に9割方完成していた。当社では、編者の遣志を継ぎ、遺されたメモ等をもとにまとめたものである。
文中、地名・山岳・河川名等固有名称は日本の読者を念頭に置いたため、漢字に日本式の読み方を付した。本来当該国語の読みが正しいことは言うまでもない。韓国人の読者の方々に他意のなきことを申し上げる。また.概念図なども付すべきであったが、編者が亡くなられ、当時の概念図を正すべくもなく.この度の刊行にあたり見送らざるをえなかった。
北朝鮮に日本アルプスに比肩する魅力あふれる山々があったことを、吾々は忘れていた。政治と歴史の困難な問題はあるものの近い将来、訪れてみたい岳人も多いことと思う。
飯山達雄の名は、中国からの引き揚げに伴う民族の慟哭を鮮烈な映像で記録した昭和悲史撮影の目撃証人として知らぬ者はない。しかし忘れてならないのは、氏の本領は練達の岳人であり、優れた山岳写真家であったことにある。
現在北朝鮮は、地球上最後の白地図地帯である。人工衛星で何がわかるにしろ、地上風景としてそれを知っている人は多くない。厳寒の白頭山の風雪に身を曝し、朝鮮全域の山岳を四季にわたり踏破しただけでなく、写真を撮るということが困難であったこの時代、ブリザードの中、股にカメラを入れ凍結を防ぎ、凍傷の危機に瀕しながら二、三枚ずつ撮ったという。零下4~50度の体験を知るべくもないが、機材、感材、山装備の今昔を考えれば氏の活動が如何なるものであったかが窺われる。
本書は60有余年を経た記録であり、実践的なガイドブックの機能に若干欠けるうらみはあるものの、交通の発達分野を除けば、観察、描写から読み取れる情報は現在においても充分に実用に酎えられるものといえよう。紀行の端々に見られる地域の人々との交流や氷河圏谷の発見、スキーの原型ともいうべき「ソルメ」の紹介などは、地理・民俗的にも興味ある記録である。
写真は終戦により持ち帰りが困難を極めた末に残されたもので、暗黒イメージの戦前において、清洌なカメラアイと健全なスポーツアルピニズムが存在したことに感動を禁じえない。
国書刊行会