新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

『鬼平』のおまさが歩いた道

2024年04月28日 | 読書
城塚翡翠シリーズ第二集、清原果耶『invert 城塚翡翠 倒叙集』について感想を書こうかと思いながら、ひと月近くが過ぎました。

この作品は、どのように紹介しても、『霊媒探偵・城塚翡翠』のネタバレになってしまいそうで、紹介の仕方がむずかしいですね。

それに、以前も書いたとおり、『霊媒探偵・城塚翡翠』は、原作は未読でコミカライズでしか知りません。清原紘さんのカバー絵にひと目ぼれしてレジに直行したものです。『invert 城塚翡翠 倒叙集』では微妙にネタバレの、原作の装画の 遠田志帆さんのイラストもいいですけれどね。

「黒さんも、結局、かわいい子が好きやねん。めちゃくちゃ面食いやんか」と女性組合員から糾弾を受けたことがあって、全く、面目ない限りです。左翼思想を学び、フェミニズムの立場をとりながら、美人が好きだというのは、やはり修業が足りないというしかありません。

城塚翡翠さんは、おっさん方には好かれ、同性には嫌われる、「あざと女子」そのままのキャラクターです。このあざとかわいさが、天然なのか演技なのか、本人にもわからないようです。そこがまた魅力なのでしょうね。

『invert 城塚翡翠 倒叙集』はそれなりに楽しめましたが、残り少ない人生の時間を割いてレビューを書くかどうかまではわかりません。

なぜか、吉田秋生さんの『詩歌川百景』の摩椰子さんを思い出してしまいました。

本作の主人公のひとり、老舗温泉宿の看板娘の小川妙は美少女ですが、その従姉の小川摩椰子は自分の容姿にずっとコンプレックスを抱いてきました。少女時代は、夏休みに帰省してくる妙に、辛く当たることもあったようです。

でもそれは、摩椰子さんが、「あなたは不器量なのだから他人より努力しなければならない」と母親にいわれ続けた「呪い」のなせるわざだったんですね。

母親譲りの美人である妙も、魔女に毒リンゴをもらったシンデレラのように、母の呪いに苦しめられてきた過去を持ちます。

摩椰子と妙が、おとなになって再会すると、お互い、母の呪いから解放され、もうわだかまえりは消えているという、あの話はよかったです。

元カノさんに字がやたらきれいな人がいたことを思い出します。この人は妙であり、摩椰子さんでもある人でした。ミスなんとかの美人さんでしたが、それは整形とメイクの力で手に入れたものでした。字がきれいだったのは、「あんたはブスなんだから、せめて字だけは美しく」と母親に言われ続け、ペン字や書道教室に通わされた結果だったのです。

金曜夜は成瀬シリーズ第二弾、『成瀬は信じた道をいく』を読み終えました。

夜ふかししたので、土曜はお山に行くつもりが、家でゴロゴロして過ごしました。日曜は丹波で援農で、ハイキングは雨の予報ですが月曜に出かけます。

『成瀬は信じた道をいく』のレビューはいずれまた。

以下、一年前の記事です。


鬼平犯科帳 新宿を渡る女

「火付盗賊改方の女密偵・おまさが新宿(にいじゅく)の渡口(わたしぐち)へさしかかったのは、明け六つ(午前六時)ごろであったろう」(『鬼平犯科帳6 狐火』)新宿の渡しは、水戸街......


今回、あらためて『鬼平犯科帳』6巻の『狐火』を読み直し、おまさは成田街道(佐倉街道)でなく、水戸街道で江戸に帰ってきたんだなあと思い直しました。文章も手直ししています。

更級日記の「まつさとの里」(松里の里)は、「まつさと」から「さ」の一字が脱落した、現在の松戸(まつど)というのが国文学者のあいだでは定説のようになっています。

でも、これは考えにくいことです。『更級日記』を例にあげれば、船橋を過ぎて、あと2、3キロ、そのまま直進して利根川を渡ればいいのに、わざわざ急峻な国府台の坂を登ってまで、4キロも松戸に迂回する意味がわかりません。国府台を通ったなら、歴代の歌人が必ず触れた、万葉集以来の「真間の継橋」への言及があったはずですが、『更級日記』にはそれもありません。

おそらく、菅原孝標女は、現在の成田街道ルートで当時の利根川を渡ったはずです。

一年前の記事は、多少、文章を改めました。やはり、おまさは最初から水戸街道ルートで江戸に帰ってきたのでしょう。成田街道の「八兵衛女郎」で有名な船橋宿で、女のひとり泊まりは、考えづらいということです。

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