新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

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ビブリア古書堂の事件手帖 コミカライズ

2012年07月31日 | コミック/アニメ/ゲーム
『ビブリア古書堂の事件手帖』(原作・三上延、漫画・ナカノ)
 

 コミカライズ1巻は、第1話・夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)から、第2話・小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)のオープニングまで。

 Amazonレビューを見ると、評判いまひとつなんだね。「表紙が原作イメージ通りだったのに……」という声がちらほら。

 おれは逆の印象だったな。キャラクター原案の越島はぐさんのオリジナル絵とは、似ているようで全く違う。そこがまたよかった。

 オリジナルはすべてがギリギリ、キワキワなのだ。栞子さんのうつむき加減、伏し目の角度、髪の流れるさま、スースーとしかいわないごきげんな口笛を吹いている唇、ノースリーブの二の腕、何よりもあのけしからん大人のライン! これ以上なら下品で卑猥になる、ギリギリのキワキワで絶妙なストップ。そのバランス感覚をあらわしているのが、スカートの膝に無造作に置かれ、今にもずり落ちそうな黒ぶち眼鏡である。デスクに置かれたはさみは、身を乗りだし、まだ汚れを知らぬアンカットのフランス娘の小口を、今すぐにも切り裂きたくて仕方ない。

 ナカノさんは原作に縛られず、もっと自由に描いてほしかった。栞子さんのころころ変わる表情は、やはり漫画ならではの表現。冒頭の回想シーンで、髪をアップにした栞子さんは、めぞんの響子さんのようで、おっさんの萌え神経中枢を痛撃した。

 原作ではイメージのなかった妹の文香ちゃんが、元気な小麦肌美少女なのはうれしい。せどり屋の志田は、おれの中では獄中10年のひげだるま同志の出獄当時の映像だったのだが(誰やそれ)、これはこれでいい感じだ。

 他のラノベ作品と違って、キャラクターデザインがあるのは栞子さんの表紙絵のみ。ナカノさんは、じゅうぶん以上に健闘している。

 しかし、不満がないわけでもない。漫画が小説をなぞるだけで終わってはしまってはつまらない。高坂りとさん作画による『“文学少女”と死にたがりの道化』には、マンガならではのドライブがある。原作ではゴチック体の書き手不明のモノローグを、影絵風に処理したのは秀逸だった。

 栞子さんが語る物語の物語を、ただ原作テキストの抜き書きで語るだけではもったいない。ビジュアルとしてどう見せるか。本の話をするときの栞子さんはキャラチェンする。ここに漫画の可能性がある。ふきだしの科白だけで終わらせてはしまうのは、もったいない。

 第1巻前半の栞子さんは、安楽椅子探偵のさらに特殊形態であるベッド・ディクテクティヴといえよう。1951年、ジョセフィン・テイが発表したリチャード3世の謎をめぐる『時の娘』、この作品へのオマージュである高木彬光『成吉思汗の秘密』などが知られているが、数は少ない。

 ワトソン役との初対面シーンで、涙目でナースコールのボタンを握りしめておびえる名探偵なんか、見たことも聞いたこともない。どうしてファンにならないでおられよう。この名場面を見事に絵に定着した、ナカノさんの次巻に期待します。


 ご参考までに、当ブログの原作1巻のレビューはこちら。
http://gold.ap.teacup.com/multitud0/763.html


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