大阪市の「労使関係に関する職員のアンケート調査」はほんとうにひどい。
「このアンケート調査は、任意の調査ではありません。市長の業務命令として、全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。
正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます。」
これは市長の「業務命令」の範疇を超えた、違憲・違法なものだというほかはない。なるほど、このアンケートは弁護士の野村修也特別顧問が個別に指名した特別チーム(市役所外から起用したメンバー)だけが見るという。そして調査票の回収は、庁内ポータルまたは所属部局を通じて行うが情報漏洩の心配はないという。
しかしこの野村弁護士は、「大阪市通報窓口」も兼務している。使用者=橋下市長サイドの人物であり、ぜんぜん、「中立的」でも「外部」でもないわけだ。
この「アンケート」の内容といえば、労働組合に加入しているか否か、これまで組合活動に参加したことがあるか否か、今までに選挙活動に参加したことがあるか否か、選挙で投票依頼をされたことがあるか否か、完全に思想調査である。
特にひどいのは「誰に誘われたか」を確認しようとする点だ。また「正確に答えないと処分があり得る」とする。誰がいったいどうやって「正確」かどうかを判断するのか?
こんなことは、労働組合の存在を認めない、ブラック企業もいいところである。いったい、弁護士でもある橋下市長の遵法意識は、どうなっているのか? 公僕である大阪市職員は、憲法にも法律にも反するこんな不当なアンケートに協力したらいけないし、認めたらいけない。
私は今までの大阪市職員の労働組合運動を擁護しているわけではない。むしろ批判的だ。「大手や官公労はたいがいにしろ」と怒ってきた中小労組の活動家であり、また大阪市民でもある。
橋下市長のこんな攻撃を許した責任は彼らにもある。先の大阪市長・府知事ダブル選挙では、大阪都構想の欺瞞性・ペテン性を行政のプロとして暴きたてることなく、ただただ人格攻撃・ネガティブキャンペーンしかできなかった彼らの責任は重大である。今までの腐敗堕落しきった組織と運動を、橋下市長による攻撃でなく、まず自らの手で自己切開して建て直さなければなるまい。先日、マスコミに暴露されていたが、平松前市長を支持しないと職場で不利益があると組合員を恫喝していたというのは最悪だ。
※この1文は、虚偽の情報に基づいたものであり、謝罪の上、撤回します。お詫びは文末に。
しかし同じ理由で、橋下市長のアンケートを認めることはできないものである。労働組合法の第5条では、「組合役員は、組合員の直接無記名投票により選挙される」と定めている。組合役員でも、組合員の誰が誰に投票したのか知ることは許されないということだ。
労働組合の団結権・自治権も、また民主主義もその本質からして「直接無記名投票による選挙」によって担保されている。「誰が誘ったか」を調べることは、この労働組合の「匿名の原則」に使用者側が土足で踏み込み、民主主義を否定しさるものだ。こんなことは断じて許されない。
労働組合法の第7条では、労働者が労働組合の組合員であることや、労働組合に加入し、あるいは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他不利益な取扱いをすることを禁じている。そして「労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく」と定めている。
現在、労働組合の業務中の労働活動や政治活動が問題になっている。目に余る点があったのは事実だろう。市の労働者は、市民の税金から給料が出ているという自覚を持たねばなるまい。しかし、それも今までの「労使慣行」であり、責任を負うべきなのは市の上層部と組合指導部であり、個々の組合員や職員ではない。
いったい、市と労働組合側の労働協約がどうなっているんだろうね。労働協約は使用者の定めた就業規則より優先される。労働協約の有効期間は3年である。つまり、現時点では前市政時代からの協約が有効だということ。労働組合法は、労働協約の基準の効力として次のように定めている。
「(基準の効力)
第16条 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。」
さあ、こんな思想調査に等しい「アンケート」を「業務命令」といって回答を強要するのは、「労働契約」なのだろうか? また労働契約のどこにそんなことを許す定めがあるのだろうか?
大阪市職員の労働組合はこんな不当な攻撃に負けていてはいけない。橋下市長の勝利を許したばかりか、これ以上の横暴を許すことは、労働者からたたかう権利や民主主義を奪い、市民の行政サービスを低下させる市民の利益に敵対するものだ。
いまこそ労働組合の存在根拠と真価が問われている。大阪市職員は一斉に立ち上がり、断固としてこの不当なアンケートを拒否して、粉砕していくべきだ。もちろん、市民の批判や反動もあるだろう。しかしその激突のなかで自己を鍛え直していくほかに、労働組合運動の再生も、大阪市の未来もありえない。
参考記事にリンク。
◇大阪市アンケ:「不当労働行為」 市労連、府労委に救済申し立てへ
http://blog.goo.ne.jp/kimigayo-iran/e/4db18bce87daca795a3e8e7a43dd9f03
(毎日新聞の記事)
(3月27日の追記)
2012年2月13日のエントリ「大阪市は直ちに違法なアンケートを撤回せよ! 労使関係に関する職員のアンケート調査」(http://gold.ap.teacup.com/multitud0/997.html)の文中、
「橋下市長のこんな攻撃を許した責任は彼らにもある。先の大阪市長・府知事ダブル選挙では、大阪都構想の欺瞞性・ペテン性を行政のプロとして暴きたてることなく、ただただ人格攻撃・ネガティブキャンペーンしかできなかった彼らの責任は重大である。今までの腐敗堕落しきった組織と運動を、橋下市長による攻撃でなく、まず自らの手で自己切開して建て直さなければなるまい。先日、マスコミに暴露されていたが、平松前市長を支持しないと職場で不利益があると組合員を恫喝していたというのは最悪だ」
最後の一文は、昨年の大阪市長選で大阪交通労働組合が、「平松邦夫・前市長の推薦人紹介カード」を作成し配布したというマスコミ報道にもとづくものだ。
しかしこの紹介カードは、昨年5月に1年契約で採用された事務補助の男性非常勤嘱託職員(非組合員)がねつ造したものであることが明らかになった。
大阪交通労働組合にお詫びし謝罪するとともに、「先日、マスコミに暴露されていたが、平松前市長を支持しないと職場で不利益があると組合員を恫喝していたというのは最悪だ」の一文を撤回・削除します。
「このアンケート調査は、任意の調査ではありません。市長の業務命令として、全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。
正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます。」
これは市長の「業務命令」の範疇を超えた、違憲・違法なものだというほかはない。なるほど、このアンケートは弁護士の野村修也特別顧問が個別に指名した特別チーム(市役所外から起用したメンバー)だけが見るという。そして調査票の回収は、庁内ポータルまたは所属部局を通じて行うが情報漏洩の心配はないという。
しかしこの野村弁護士は、「大阪市通報窓口」も兼務している。使用者=橋下市長サイドの人物であり、ぜんぜん、「中立的」でも「外部」でもないわけだ。
この「アンケート」の内容といえば、労働組合に加入しているか否か、これまで組合活動に参加したことがあるか否か、今までに選挙活動に参加したことがあるか否か、選挙で投票依頼をされたことがあるか否か、完全に思想調査である。
特にひどいのは「誰に誘われたか」を確認しようとする点だ。また「正確に答えないと処分があり得る」とする。誰がいったいどうやって「正確」かどうかを判断するのか?
こんなことは、労働組合の存在を認めない、ブラック企業もいいところである。いったい、弁護士でもある橋下市長の遵法意識は、どうなっているのか? 公僕である大阪市職員は、憲法にも法律にも反するこんな不当なアンケートに協力したらいけないし、認めたらいけない。
私は今までの大阪市職員の労働組合運動を擁護しているわけではない。むしろ批判的だ。「大手や官公労はたいがいにしろ」と怒ってきた中小労組の活動家であり、また大阪市民でもある。
橋下市長のこんな攻撃を許した責任は彼らにもある。先の大阪市長・府知事ダブル選挙では、大阪都構想の欺瞞性・ペテン性を行政のプロとして暴きたてることなく、ただただ人格攻撃・ネガティブキャンペーンしかできなかった彼らの責任は重大である。今までの腐敗堕落しきった組織と運動を、橋下市長による攻撃でなく、まず自らの手で自己切開して建て直さなければなるまい。先日、マスコミに暴露されていたが、平松前市長を支持しないと職場で不利益があると組合員を恫喝していたというのは最悪だ。
※この1文は、虚偽の情報に基づいたものであり、謝罪の上、撤回します。お詫びは文末に。
しかし同じ理由で、橋下市長のアンケートを認めることはできないものである。労働組合法の第5条では、「組合役員は、組合員の直接無記名投票により選挙される」と定めている。組合役員でも、組合員の誰が誰に投票したのか知ることは許されないということだ。
労働組合の団結権・自治権も、また民主主義もその本質からして「直接無記名投票による選挙」によって担保されている。「誰が誘ったか」を調べることは、この労働組合の「匿名の原則」に使用者側が土足で踏み込み、民主主義を否定しさるものだ。こんなことは断じて許されない。
労働組合法の第7条では、労働者が労働組合の組合員であることや、労働組合に加入し、あるいは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他不利益な取扱いをすることを禁じている。そして「労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく」と定めている。
現在、労働組合の業務中の労働活動や政治活動が問題になっている。目に余る点があったのは事実だろう。市の労働者は、市民の税金から給料が出ているという自覚を持たねばなるまい。しかし、それも今までの「労使慣行」であり、責任を負うべきなのは市の上層部と組合指導部であり、個々の組合員や職員ではない。
いったい、市と労働組合側の労働協約がどうなっているんだろうね。労働協約は使用者の定めた就業規則より優先される。労働協約の有効期間は3年である。つまり、現時点では前市政時代からの協約が有効だということ。労働組合法は、労働協約の基準の効力として次のように定めている。
「(基準の効力)
第16条 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。」
さあ、こんな思想調査に等しい「アンケート」を「業務命令」といって回答を強要するのは、「労働契約」なのだろうか? また労働契約のどこにそんなことを許す定めがあるのだろうか?
大阪市職員の労働組合はこんな不当な攻撃に負けていてはいけない。橋下市長の勝利を許したばかりか、これ以上の横暴を許すことは、労働者からたたかう権利や民主主義を奪い、市民の行政サービスを低下させる市民の利益に敵対するものだ。
いまこそ労働組合の存在根拠と真価が問われている。大阪市職員は一斉に立ち上がり、断固としてこの不当なアンケートを拒否して、粉砕していくべきだ。もちろん、市民の批判や反動もあるだろう。しかしその激突のなかで自己を鍛え直していくほかに、労働組合運動の再生も、大阪市の未来もありえない。
参考記事にリンク。
◇大阪市アンケ:「不当労働行為」 市労連、府労委に救済申し立てへ
http://blog.goo.ne.jp/kimigayo-iran/e/4db18bce87daca795a3e8e7a43dd9f03
(毎日新聞の記事)
(3月27日の追記)
2012年2月13日のエントリ「大阪市は直ちに違法なアンケートを撤回せよ! 労使関係に関する職員のアンケート調査」(http://gold.ap.teacup.com/multitud0/997.html)の文中、
「橋下市長のこんな攻撃を許した責任は彼らにもある。先の大阪市長・府知事ダブル選挙では、大阪都構想の欺瞞性・ペテン性を行政のプロとして暴きたてることなく、ただただ人格攻撃・ネガティブキャンペーンしかできなかった彼らの責任は重大である。今までの腐敗堕落しきった組織と運動を、橋下市長による攻撃でなく、まず自らの手で自己切開して建て直さなければなるまい。先日、マスコミに暴露されていたが、平松前市長を支持しないと職場で不利益があると組合員を恫喝していたというのは最悪だ」
最後の一文は、昨年の大阪市長選で大阪交通労働組合が、「平松邦夫・前市長の推薦人紹介カード」を作成し配布したというマスコミ報道にもとづくものだ。
しかしこの紹介カードは、昨年5月に1年契約で採用された事務補助の男性非常勤嘱託職員(非組合員)がねつ造したものであることが明らかになった。
大阪交通労働組合にお詫びし謝罪するとともに、「先日、マスコミに暴露されていたが、平松前市長を支持しないと職場で不利益があると組合員を恫喝していたというのは最悪だ」の一文を撤回・削除します。
異議ナーシ!!
若干の蛇足。 同じく労組法第7条に最小限の広さの事務所を使用者が供与することを(使用者による支配介入の禁止に該当せず)妨げるものではないとしています。 この点について報道によれば通例の使用料の4割で今まで庁舎内に事務所を構えており、来年度以降は5割で借りることを認める旨の「確認書」があったが、橋下側は「確認書には法的効力がなく今の使用許可期限の3月末退去」を申し渡したとのことです。
>市と労働組合側の労働協約
上記の件について労働協約違反にならないのか調べてみたところ、「非現業の公務員の組合には労働協約締結権は認められていない」ようである。(しかし、約束したのが前任の平松であっても信義則違反ではないかとは思うが。 もちろん、悪法として当戦線はこの規定に反対する。) こういう悪法(地公労法)が悪法と一般市民に認識されるために(共感を得るために)は、自らを助けると共に未組織の利益になることにお題目ではなく労力を割いて活動することが絶対に必要であるかと。
○地方公務員法55条第3項
第55条第2項ですね。
しかし、橋下って東ドイツのホーネッカー一派みたいな奴ですね。
なるほど。そこはちゃんと調べていませんでした。非現業は労働協約権なしか。ご教唆、ちゃう、ご教示ありがとうございます。
地方公労法の諸問題もありますが、やはり思想調査を「業務命令」と認めることができるのか、いちばんの根本の問題はそこですね。
しかし、声明なども読みましたが、労組側も本当にだらしない。いつもと同じ繰り返しで、きれいごとばかり、被害者ヅラで、あんなものに市民大衆の共感や支持が広がるとは、ちょっと思わない。
「自分でまいた火の粉は自分で払えや! 大阪の街、日本全体に延焼させるつもりか! 死んでも食い止めろ!」
ということですね。
以下の拍手コメントをいただきました。
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橋下氏は弁護士なのでこのアンケートの違法性は百も承知です。わかっていてあえてやる目的は何でしょう?
一つには市職員に恐怖感を与え、権力者に従順な公務員を作り出すことでしょう。
二つ目は氏が「大阪市役所をぶっつぶす」と公言し市長に選ばれた事からもわかるように、今まで好き勝手をしてきた公務員を徹底的につるし上げることで多くの市民の支持を得られると直感しているからでしょう。
三つ目は、世間を騒がせ「橋下はなかなか思い切ったことをやるな~」という印象を一般大衆に与え、国政進出の土台を作ることでしょう。
私も、市職員の組合がやってきたことを全面的に擁護するつもりはまったくありませんが、こんな違法だらけのアンケートで世間を騒がせる橋下氏が首長として適格かどうかは厳しく問うべきだと思います。遵法精神のある人がトップに立たなければ、人々の心はすさむ一方です。
この問題を大きく取り上げないマスコミには改めてがっかりです。
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