夏季休業は終わり、今日から仕事再開である。
休業日といえば、ある企業のカレンダーの仕事を始めて、来年で16年目になる。「20××年 弊社休業日のお知らせ」というexcelの表をもとにした、玉(日付)だけのシンプルな壁掛けカレンダーだ。主役はあくまでも玉で、きれいな写真も、おしゃれなイラストもない(予算もない)。機能性第一で、卵かけご飯、ふりかけご飯のような至ってシンプルな仕様だ。それだけなら、私の出番はないのだが、毎年、あるテーマを定めて、月々のメッセージを入れている。今は開店休業状態だけれど、これはコピーライターの仕事である。
最初お受けしたときは、こんなに長く続くとは思わなかった。スタート時のご担当者と、弊社の役員が飲み仲間で、二人が定年になる数年後には自然に打ち切りになるだろうといわれていた。しかし固定ファンがついて、今日に至る。
どんな分野にも専門家がいるのは世の常だが、カレンダー専門の会社もある。社名や店名、電話番号が入ったものは、この会社が元締めである。玉と企業名だけのシンプルなものもあれば、きれいな風景や犬や猫などの写真の入ったものもある。まずデザイン共通のカレンダー部分をカラー印刷しておく。この時点では製本まで行かない。広告代理店や印刷会社などにカタログをばら撒き、100とか500とか1000という単位で注文をかき集め、製本せずに取っておいた刷り本の余白部分に、「チャリンコ」と呼ばれる刷り込み専用機でスミ一色で企業名の印刷を行うのだ。
20年ほど前は、この季節には発注をかけていたと記憶する。年末に配るものだから、11月でもいいかというと、人気商品から先に在庫がなくなっていくので、早い者勝ちなのだ。それに「チャリンコ」は1枚ずつ手めくりの職人仕事だから、キャパにも自ずと限界がある。
しかし、無償で配られる企業カレンダーは年々減少していく。決定的だったのは、2008年9月のリーマンショックだったろう。企業は一斉に広告宣伝費を削減する。カレンダーは、ちょうど注文の申し込み期限に当たっていた。リーマンショックから広告需要が立ち直らないところへ、2011年の3・11が追い打ちをかけた。過剰な自粛が問題になったが、セールでチラシやDMを打とうにも、津波で製紙メーカーの工場が壊滅的な被害を受けたのもあって、広告用途には紙が回ってこなくなった。まずは教科書や官報優先で、ついで新聞、その次が出版、宣伝広告分野は一番最後である。お客さんも、「ほな、ネットでいこか」ということになってしまった。
私が手がけるのは、玉が主役のシンプルな作りとはいえ、その会社オリジナル製品だから、既製品の名入れカレンダーのような縛りはない。それでも仕事を始めた頃は、9月初めには入稿していた。カレンダーの製本ができる製本所は限られているから、納期に余裕をみる必要があったのだ。しかし近年は10月終わりに入稿しても、1、2週間後には完成してきた。それだけカレンダーの仕事が減ってしまったのだろう。以前はデザイナーの登竜門だったカレンダー展も、一昨年ごろから案内が来なくなった。
しかし、今年は別だ。消費税増税のせいで、8%の税率で納めるためには、9月30日までに納品しないといけない。今年は久しぶりに、お盆前に仕事を片付けた。
これだけ長期間続くと、さすがにネタ切れになってくるから、今年は「一年の計」で、年明け早々に2020年のざっくりとしたコンセプトを決めて、ネタを付箋に書き付け、壁掛けカレンダーの7月のページに貼り付けておいた。剥離しないようにセロテープで補強も忘れない。仕事に着手する季節になれば、いやでも目に付き思い出すという、アナログ式リマインダーである。PCやスマホは、自分が見たくなければ見ないでも済んでしまう。紙のカレンダーなら、他の人たちの目にも入る。「〇〇さん(お客さんの社名)、来年もよろしくお願いしますね」と営業さんも釘を刺していく。逃げられないのである。
私本人は天皇制廃止論者だけれど、来年1月は、「改元」して初めて迎えるお正月だ。元号も決まり、今年1月時点のアイデアからは多少軌道修正したが、○○社がエンドユーザーの皆さまにご提案するのは「和の暮らし」である。卵かけごはん職人としては、陰暦を素材にシンプルに料ってみた。令(うつく)しいかどうかはわからないが、少なくとも「和」ではあるだろう。
休業日といえば、ある企業のカレンダーの仕事を始めて、来年で16年目になる。「20××年 弊社休業日のお知らせ」というexcelの表をもとにした、玉(日付)だけのシンプルな壁掛けカレンダーだ。主役はあくまでも玉で、きれいな写真も、おしゃれなイラストもない(予算もない)。機能性第一で、卵かけご飯、ふりかけご飯のような至ってシンプルな仕様だ。それだけなら、私の出番はないのだが、毎年、あるテーマを定めて、月々のメッセージを入れている。今は開店休業状態だけれど、これはコピーライターの仕事である。
最初お受けしたときは、こんなに長く続くとは思わなかった。スタート時のご担当者と、弊社の役員が飲み仲間で、二人が定年になる数年後には自然に打ち切りになるだろうといわれていた。しかし固定ファンがついて、今日に至る。
どんな分野にも専門家がいるのは世の常だが、カレンダー専門の会社もある。社名や店名、電話番号が入ったものは、この会社が元締めである。玉と企業名だけのシンプルなものもあれば、きれいな風景や犬や猫などの写真の入ったものもある。まずデザイン共通のカレンダー部分をカラー印刷しておく。この時点では製本まで行かない。広告代理店や印刷会社などにカタログをばら撒き、100とか500とか1000という単位で注文をかき集め、製本せずに取っておいた刷り本の余白部分に、「チャリンコ」と呼ばれる刷り込み専用機でスミ一色で企業名の印刷を行うのだ。
20年ほど前は、この季節には発注をかけていたと記憶する。年末に配るものだから、11月でもいいかというと、人気商品から先に在庫がなくなっていくので、早い者勝ちなのだ。それに「チャリンコ」は1枚ずつ手めくりの職人仕事だから、キャパにも自ずと限界がある。
しかし、無償で配られる企業カレンダーは年々減少していく。決定的だったのは、2008年9月のリーマンショックだったろう。企業は一斉に広告宣伝費を削減する。カレンダーは、ちょうど注文の申し込み期限に当たっていた。リーマンショックから広告需要が立ち直らないところへ、2011年の3・11が追い打ちをかけた。過剰な自粛が問題になったが、セールでチラシやDMを打とうにも、津波で製紙メーカーの工場が壊滅的な被害を受けたのもあって、広告用途には紙が回ってこなくなった。まずは教科書や官報優先で、ついで新聞、その次が出版、宣伝広告分野は一番最後である。お客さんも、「ほな、ネットでいこか」ということになってしまった。
私が手がけるのは、玉が主役のシンプルな作りとはいえ、その会社オリジナル製品だから、既製品の名入れカレンダーのような縛りはない。それでも仕事を始めた頃は、9月初めには入稿していた。カレンダーの製本ができる製本所は限られているから、納期に余裕をみる必要があったのだ。しかし近年は10月終わりに入稿しても、1、2週間後には完成してきた。それだけカレンダーの仕事が減ってしまったのだろう。以前はデザイナーの登竜門だったカレンダー展も、一昨年ごろから案内が来なくなった。
しかし、今年は別だ。消費税増税のせいで、8%の税率で納めるためには、9月30日までに納品しないといけない。今年は久しぶりに、お盆前に仕事を片付けた。
これだけ長期間続くと、さすがにネタ切れになってくるから、今年は「一年の計」で、年明け早々に2020年のざっくりとしたコンセプトを決めて、ネタを付箋に書き付け、壁掛けカレンダーの7月のページに貼り付けておいた。剥離しないようにセロテープで補強も忘れない。仕事に着手する季節になれば、いやでも目に付き思い出すという、アナログ式リマインダーである。PCやスマホは、自分が見たくなければ見ないでも済んでしまう。紙のカレンダーなら、他の人たちの目にも入る。「〇〇さん(お客さんの社名)、来年もよろしくお願いしますね」と営業さんも釘を刺していく。逃げられないのである。
私本人は天皇制廃止論者だけれど、来年1月は、「改元」して初めて迎えるお正月だ。元号も決まり、今年1月時点のアイデアからは多少軌道修正したが、○○社がエンドユーザーの皆さまにご提案するのは「和の暮らし」である。卵かけごはん職人としては、陰暦を素材にシンプルに料ってみた。令(うつく)しいかどうかはわからないが、少なくとも「和」ではあるだろう。