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「夜勤など泥棒のすることや」 交代制勤務について

2022年08月04日 | 政治・経済・労働組合
このブログの開設時のタイトルは、「某組長部落格」(某労組組合長部落格 部落格は中国語でblog)でした。今も私は、ナショナルセンターやセクトに属さない、急進左翼の立場に立つ労働運動家です。

というわけで、このブログには、ときどき思い出したように政治や労働運動のエントリがアップされますので、ご了解ください。


さて、私自身はオフィスワークですが、会社そのものは製造業ですから、工場は夜勤を行っています。


先日の労使交渉で、現在、昼勤・夜勤の交替は1週間単位ですが、2週間交替に変更する見直し案の検討を行いました。

ベテランのA君が倒れたのが直接の理由でした。1週間の夜勤が終わった後、心身に不調が発生するとのこと。初めて倒れたあと、医師の診断を受け薬が処方されたわけですが、つい飲み忘れることがある。薬の飲み忘れで倒れたのは今回で二度目でした。

もちろん、薬を飲まなかった自己責任を理由に、会社に責任を回避させるわけにはいきません。夜勤明けはしんどいものです。食事をする気になれないのは、私も経験があるからわかります。食事を忘れたら、薬も飲み忘れてしまうこともあるでしょう。もちろん、夜勤明けでしんどくとも、何も口にしないのはよくないことです。ゼリーでも何でもカロリーを摂取したほうがいい。

会社側の説明を聞き終えて、質問しました。

「なるほどね。2週間で交替なら、昼と夜の切り替えは1か月に2回で済むというわけですね」

「そう、薬の飲み忘れのリスクも半減する」

この案は「試しに1か月やらせてほしい」と工場長が会社に進言したもので、ヒアリングした限りは現場の組合員も了承しているとのことでした。

現場の組合員がいいといっているなら、執行部もあえて反対する理由はありません。どうしてもいやだという人がいたら、執行委員を通じて何かいってきただろうし、いってくるだろう。

しかし現時点では、あえて反対する組合員もいないだろうと思いました。昼勤から夜勤に切り替わったとき、体が慣れてくるのは3日めの水曜日ごろです。しかし体が夜勤モードに切り替わったところで休日に入り、また昼勤シフトに戻るわけですね。これは持病のない健康体の持ち主にも、身体的精神的に負荷が大きなものがあります。1週間交替でなく2週間交替にしたほうが、心身の負荷は軽減されるのではないか。そう期待することができます。

私はいつもの持論を展開しました。

「昼と夜の交替回数を減らすこと自体は、いいことだと思いますよ。生物は基本的に昼型か夜型かのいずれかに属しているわけでね。昼夜交代労働がいかに自然の摂理に反するか、性ホルモンに悪影響を与えるかは、男性は前立腺がん、女性は乳がんのリスクが高まることで医学的・科学的にも確認されているわけです。昼勤だけの人はもちろん、夜勤だけやっている人にも、こういう現象は見られない」


最近でこそ、二交替労働による健康被害は広く認識されるようになりましたが、私がこの問題を初めて取り上げた15、6年前は、まだ一般的ではありませんでした。

『眼の誕生』という本と出合ったことも大きかった。本書では、生物で最も最初に発生した器官は、眼であり、この光センサーを獲得したことが、生物の進化が爆発的に加速するきっかけになったという仮説を提唱しています。この仮説が正しいかどうかは、一労働者にすぎない私にはわかりませんが、目を通じて光を感じ取ることが、生物の最も原始的で根本的な部分を司っていることは間違いありません。やはり昼夜交代労働は生命の自然な営みに反しているといわざるをえない。夜勤者の権利と労働条件を守り抜いていくことは、労働運動家の重要な使命です。

と、こんな生物学の話をする労働運動家は、私くらいかもしれませんが。


しかし、そうはいうものの、2週間連続で昼夜逆転の生活を送ることにも、当然デメリットがあります。

社会生活を送る上で、家族や友だちとの予定が2週連続で合わなくなるのは大きいですね。特に今は夏休みシーズンです。これは若い人やまだお子さんの小さな人にはきつい。今年も、バンド活動に力を入れたいという若い人が会社を辞めていきました。夜勤があるだけでいやがられるのに、若手の定着にはマイナスでしょう。

もっと原則的、根本的な話をすれば、人間は夜は寝るものです。働くものではない。


私が小学生のころは、24時間営業の店は、トラックやタクシーの運転手さんたちが主たる客だった吉野家だけでした。近所にオープンしたコンビニも、地元商店街の反対などもあって22時には閉店していたものです。


中小製造業の現実としてお客さんのニーズがある限り二交替労働を撤廃するわけにはいかないし、労働者の立場としても、25%増しの夜勤は割がいいのです。夜間はうるさい上司や営業もいないから仕事もやりやすいし、能率が上がるのも事実です。

ただし夜勤明け、家に帰ったところで、今の季節はカーテンを閉じたところでギラギラと日が照りつけ、寝れたものではありません。夏休みの子供は、寝ているお父さんを気にして息を潜めて過ごさねばならず、友だちを家に連れてくることもできない。それに体を壊してしまったら元も子もない。

「夜勤など泥棒のすることや」

三菱製紙高砂工場の部長を務めた異端の俳人・永田耕衣の若き日の名言です。夜勤は自然に反している。このことばを、経営者も、労働運動家も肝に命じなければならないでしょう。コンビニも夜勤に人が集まらないそうです。人口減少時代、そろそろ24時間サービスも夜勤も見直す段階に入っていると思います。


城山三郎『部長の大晩年』は、55歳で定年退職後、97歳で大往生した俳人・永田耕衣をモデルに描いた伝記作品。風船爆弾のエピソードなども出てきますよ。







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