いま読んでいる本。大阪出身の筆者が、東京に移り住んで驚いたのが、牛肉の値段の高さだったそうだ。村上春樹も同じようなこといっていたな。確かに、東日本出身の私も、子ども時代は、牛肉なんて年に何度かのすき焼でしか見たことがない。
大阪に移り住んで、牛肉も身近になった。今までいちばん食べた最高においしい牛肉料理は、精肉店直営の焼肉店で食べたすじ肉。
すじ肉? このびんぼう人め、かわいそうにと笑いたいやつは笑うのがいいのだ。
普通の焼肉のように、タレに漬け込んだのを七輪の炭火で焙って食べた。あまり火は通しすぎない。口に入れた瞬間、言葉を失った。舌の上でふんわり蕩け、次の瞬間にはおいしさだけ残して、固体としても液体としても、もう何の痕跡も残していない。ほんとうに新鮮でいい脂は、べたつかないことを初めて知った。たとえるなら、以前、牧場の体験コースで子どもたちと一緒に作った手作りバターの食感そのままだった。あのヴァージンスノーのように限りなく天使のような軽さ。
以来、おいしいすじ肉を求めて幾歳月。アタリもあればハズレもある。どちらでも、はるか以前、あるお料理サイトで読んだホルモン屋さんの話を思い出す。そのお店のすじ肉は絶品だったという。おっちゃんは少量の注文にもいやな顔ひとつせず、いつも冷凍でないかたまり肉から切り分けてくれた。普通すじ肉のしたごしらえは大変だ。しかしそのお店のは、酒で1回、湯がくだけでよく、しかもアクも出ないというすぐれものだった。
しかし狂牛病騒ぎのころ、おっちゃんは店をたたまざるをえなかった。おっちゃんも、そのサイト主さんも、どれだけ悲しかっただろう。最後におっちゃんは「姉ちゃん、牛がな、牛が……かわいそうやねん……」と泣いたという。
最近、取材先の居酒屋で、最高にとろとろのどて焼きに出会った。食べているおれも幸せならば、食べられる牛も幸せなやっちゃなと思った。
2022年12月18日の追記。teacup時代のこの過去記事に「いいね」をいただき、なにかの拍子に上書き保存してしまった。今となっては正確な公開日はわからない。ただ、「最近読んでいる本」は、上原善広『日本の路地を旅する』である。
このエントリの公開日が2010年8月7日なので、約1週間前の8月1日とした。
「最高にとろとろのどて焼き」を出す居酒屋を思い出せないのが残念である。
関西は牛、関東は馬。
ま、関東は馬から豚に変わった訳だけど…
こっちの方では…やはり和牛と言えば但馬牛。
農耕に使っていた実物大の模型が置いてあるよ!
日本最古の牛のはにわが近くからも出土しているし。。。
古くから牛が民の間で大切にされてたのが解ります。
で、スジ肉と言えば…私は兵庫の長田を思い出す。
長田町の「ぼっかけ」(牛スジこんにゃく)は有名です。
たぶん、レトルトでも市販されていると思うけど…それこそ口に含むと蕩ける感じですねぇ。
そんな「ぼっかけ」をお好み焼きに入れて焼いて食べるのが、また最高なんですよ!
(^q^)/アカン!めちゃくちゃ食べたくなってきた(笑)
じゃあ、今度 手に入れて牛スジ料理にチャレンジしたいと思います。
v(o´ з`o)♪
過去エントリをチェックしてくださるフォロワーさんがいて、なにかの拍子に再保存したせいでしょうか。
牛すじ料理は、ものすごく手間暇かかりますよね。
ryuchyunさんなら、料理はお手のものでしょうが。いつも素敵な美少女画像ならびにおいしそうな飯テロ画像、ありがとうございます。
実はくろまっく商店(!)は、但馬牛もお取り扱いしておりまして。イスラム圏に輸出を企画していたのですが、コロナ禍その他で、いろいろ予定が狂いました。
このエントリを書いた頃10年以上前は、但馬牛の生産者のみなさんと出会う以前でした。
このエントリで書いたお店は、神戸牛にはなりそこねたけれど、しかし品質も味も限りなく神戸牛に近い牛の肉を出すお店です。東京の店なら5万円、大阪の店なら4万円、神戸の店なら3万円かかるところ、1万円ちょっとで神戸牛(になり損ねた肉)を堪能できるお店で。
信州は馬を食べますが、それ以外はどうだったんでしょう。
私は新潟生まれですが、すき焼きは年1、2回、豚肉は月1回、鶏のひき肉のスープが週1回くらいだったかな。
馬は関西に来るまで食べたことがありません。しかしブラジルの日系2世の方に、馬はどんな苦しいときも助けてきてくれた、友だちなんだ、と聞いて、私も食べるのをやめました。たしかに、私も犬や猫は食べられません。
コメントありがとうございました。すじ肉、おいしいですよね。