帰宅願望

背負ったリュックを揺らして歩く
工事中のビル
ほっともっと
セブンイレブン
コインランドリーの横にひっそり洗米機

街で一番大きな通りの交差点にて
歩行者信号杖をついて
「きをつけ」点滅
普通車普通車普通車普通車
時折見かける西鉄バス
変わりそうにない赤信号
知ってる知ってる
これは「先に進むな引き返せ」
の合図
私の求めた指示は「回れ右」

学校の途中にあるバス停にて
サラリーマン長蛇の列
大量の肉塊に遮られた歩道
割り込めない私
止まる足
山頂に下っ腹を隠した太陽の元で
蒼白な顔面の大人達に囁いてみたかった
「一緒に帰りませんか？」

職場に居て「帰りたい」
学校に居て「帰りたい」
自宅リビングにて「帰りたい」

ねえ。
私の家はどこ？

インノセント

僕達の命綱は一本
居心地のよかった
暖かい海を抜け出した

初めて触れた空気
初めて見た白い世界

僕達は叫ぶ
海がただただ恋しくて
複数の音にビクビク震えて
音のみの世界に僕達を組み込むように
叫ぶ

ぷかぷか漂っていた僕
ぐるぐる回転していた僕
端っこを蹴る僕
そんな海に包まれて眠る僕

やりたいことが出来た海に戻りたい
この世界は何が出来るかわからない

叫びとともに踊り狂う血液
叫びとともに流れる水分

君達はもう気づくべきなんだ。
君たちの叫びに答えたい。
もう命綱は切れたんだって。