ユーキャン詩集

創作した詩を不定期投稿していきます!感想などございましたらぜひコメントください!時々、旅日記なども載せます!

団欒

2018-08-08 17:02:57 | 創作(詩)
おーい
誰かいないかい?
ママはまだ帰っていないみたいなんだ
机の上に飯が置かれてないからな、帰ってないんだよ

三日月光った
足音奏でた
あっあっあっあっ、ピー

誰もいないのか?
ミツル、パパだぞ!
飛びついて来ないのか?
洗面所の前で横になんかなってたら踏んでしまうぞ
少しはこっちを見るくらいしたらどうなんだ

床が軋んだ
向こうの壁がだらけた
僕僕の目線も落ちた

本当に俺一人なのか?
ママ!いないのか!?
飯がまだできてないのなら返事をしてくれ
いないのならキスをしてくれ

帰ってきたんだ

ママの飯が頼りなんだ
コンビニじゃ飯も買えない
店員は無視を決め込みやがる

おーいママ!ママ!
なんだ
居るじゃないか
机に突っ伏して寝るなんて風邪引くぞ

おーい、ママ
起きろ!

ヒーローの世界

2018-08-06 00:53:46 | 創作(詩)
僕の部屋の窓から
希望と安らぎが見えて
僕の布団の中には
承認を得られる
机に座れば
ソクラテスといつでも語れる
「正義とはなんですか?」
ドアを開ければそこはもう
プラトンの部屋
「ようこそ、イデアへ」

本当にイデア?

正解の世界に生を求める
解を求めるために汗を流す
馬に蹴られるもありがたく
鹿に笑われるもありがたく
世に従うトップがヒーロー

頭を掻く
こめかみを伝って爪が伸びる先
抱えて頬は裂けた

明日、ぼくは窓の景色を見て頷くはずだ
這う蜘蛛に隙間はないのだから

窓には濁点
布団に句点

床を踏み抜く
空を搔き切る身体で着地。

〜ホコリとダニのブランコとともに〜

これにて閉幕

ソロツーの景色

2018-08-01 18:00:38 | 小説
まだ肌寒さを感じる朝の住宅街、青森県十和田市稲生町。三本木通りから十和田通りへの左折レーンにて、赤信号で停車する車の行列の中に一台、トリコロールのバイクにしがみつく山本鈴華がいた。
「はあああ。あったかいよお」
山本鈴華22歳、OL。各地の絶景を堪能することが趣味。これまでは電車や夜行バスを利用していたのだが、つい先日、「普通自動二輪免許」取得した。バイクの免許は車とは違い、路上に出る教習はない。更に、免許取得の期日に合わせて「CBR250R」というトリコロールの映えるバイクを納車した。そのため、今日のソロツーが私にとって初の路上デビューになるのである。

信号が青になった。
アクセルをゆっくり回して、クラッチを繋いでいく。
左折。
頭を出した太陽が、背中を温めてくれた。エンジンに密着する両脚もまた、私の体に温もりをくれる。
「目的地まではだいたい50分くらいか。あ!ここからずっと道なりじゃん」
今日いく目的地は、国道102号線を走っていくと到着できる。ナビいらずの場所だ。
少し走るとファミマや商店、耳鼻科などが見えてきた。朝早いこともあり、開いているのはファミマだけだった。
国道102号線を直進して交差点に差し掛かったとき、今までの町並みと違う景色に私は思わず驚いた。
「左の駐車場でか!お、右のグラウンドも負けてない!」
十和田市立中央病院の駐車場と十和田市立北園小学校のグラウンドに挟まれた道だった。グラウンドから吹き込む横風は葉をなびかせ、私の髪の中もすり抜けていく。
「涼しい!こんなにグラウンド広くていいなあ。遊び放題じゃん」
広々とした景色も通り過ぎ、住宅街へと入っていく。雲が光を浴びてくっきり見え、道の先に見える山を映えさせていく。近づくにつれ、田畑がちらほらと見えるようになり、建物が数少なくなっていった。左手には川が流れている。照り返す光と転がる岩、そして道と川の境目に並ぶ木々。初夏を肌で感じられた。

右手に宿泊施設が見えてきた。川が中流と下流の境目の場所で、さらさらと流れる音が心地よい。バイクを数分走らせると、分岐点へ着いた。ここが国道102号線と国道103号線の分かれ目だった。分岐点の右手には民宿があり、左折してすぐ先にも旅館やカフェなどが立ち並ぶ地点があった。さらに奥へ、森の中へと入っていく。右手に渓流を眺めながらのんびりと走る。朝早いこともあり、対向車はいなかった。木々の隙間を縫うように注ぐ光に思わず伸びをしたくなるほどだ。この林道では、時間がゆっくりと流れている。そんな感じがしていた。
「見えてきた!」
林の先。小さく見えてきて、だんだんと大きくなっていく。渓流の合流点。

手前の交差点から右折して目と鼻の先、子ノロ港へ駐車した。今まで縫うように差し込んでいたものは湖に全反射し、私やバイク、林の木々を包んだ。
「着いた、十和田湖だ」
目を閉じ、大きく伸びをしてみた。湖の冷たい空気が肌を包む。目の前に見える御倉山の山肌もまた、涼しげに伸びをしているように見えた。