ユーキャン詩集

創作した詩を不定期投稿していきます!感想などございましたらぜひコメントください!時々、旅日記なども載せます!

とったもん勝ち

2019-08-23 00:12:04 | 創作(詩)
僕は水を撒かない
誘われてもねだられても鳴かれても
撒かない

種だけを満遍なく散らした
両の手で捏ねくりまわしたベッドに
赤ん坊を寝かせて
誰も盗って喰えないくらいに
毛布をありったけ被せた

始めに一人があった
ぼくも、ひとりからはじまった
真っ暗なのに妙に居心地のいい不安
しょっちゅう揺れて、うるさくて
だんだん圧迫されてる感覚を知って
徐々に冷たく冷たく手が伸びる

か細く枯れた僕
あっちゃこっちゃ振り回されて捻れて
実が出てもう折れた
ぼろ雑巾が水分を落とすあの悲鳴
錆びたナイフで壊す玉ねぎの繊維
僕は円を描いた
軽くて細くてただ、鋭い
そんな見えない聖剣を振り回して
鳴いた

まあ世の理よ
掴んだ者の勝ちだとね
腰に宿してふるって掲げる

落されるその日まで

開かれた牢屋

2019-08-12 16:59:25 | 創作(詩)
だだっ広い運動場をかけた

夕刻
煮物の匂いが漂ってくる
背負ったランドセルの防犯ブザーがカラカラと音を立てた
サッカーゴールの間を行き来する
団欒の音を僕はかき消せない
耳元から垂れた汗が運動場を濡らす
ちょっぴり、濡らす
胸が張り詰めた
顎が空を向いて祈っている
止まってくれと、願っている
パパが帰ってきたと。お帰りと。その声がどこか聞こえた。
爪先は地面と戦った
石ころを投げ飛ばし地を削って僕は体を叩きつけてやったんだ

血が出た。
涙も出た。
一人でかけた。

校門が閉まる

そうして僕は一人
防犯ブザーを引き抜いた

幻想夢闇

2019-08-07 00:16:48 | 創作(詩)
無くしたものだけ握りしめて
胸に抱く
うっすらと浮かぶ光景に雑音混じる昼の空
夏の風にしては珍しく冷たいので
私は腕をそっと絡めた
頭に不思議とバラバラのパーツで人が見える
黒髪に爛れた目が印象的なのに綺麗で雑な輪郭

ああ。頭が痛い。

どうも抱いているのに指の間から
溢れているかのようにその人が消え失せる
だんだんと体が薄くなり思い出が遠のく
近くにある「あの思い出」に
なんだっけが付け足されていく
胸にあてた手が離れて
絡めた腕は解けていった
あんぐり呆けた私の口元
顎に溜まったよだれの雫

もう、拭き取らなくてもおちるでしょう、

さてさて夜に熱い地面
見えないフラダンスを軽快に披露する
暗闇の世界に一人
私もあなたと踊ります

迎えにいらして?
エストートをお願いできて?
今夜は一人にしないでね?

私のニュースが流れた朝の居間
まだまだ夜は終わらない。