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トランプは自分の責任を中国とWHOになすりつけるな(3)

2020-04-29 | トランプ政権

トランプは自分の責任を中国とWHOになすりつけるな(3)

「武漢ウィルス研究所からの漏洩説」を引っ込めろ

「生物兵器説」は完全に破綻。遺伝子には人工操作の跡がないことは明白だ

4月に入ってトランプやメディアは再び「武漢ウィルス研究所からの漏洩説」を持ち出している。この宣伝は2か月前にも流行ったものだ。その時の論拠は「2004年に北京と安徽省でSARSウィルス感染事故が国立ウィルス研究所で起こった(小規模の感染事故だった)」「2018年に視察した米議員がコロナウィルス研究の危険性と安全面での不十分性を指摘した」というに過ぎない。遺伝子分析の結果、新型コロナウィルスが自然起源のものと認めざるを得なくなって、今度は自然起源のウィルスが漏れたストーリーを創作しようとしているのだ。ウィルス研から感染したコウモリが逃げた、研究所員がコウモリの血を浴びて感染した、果ては死んだコウモリを売りに出したなどという荒唐無稽の話がばらまかれているが、そこには何の事実も証拠もない。トランプと米政府は反中国メディアの作り話に乗っかって「検証中だ」として、あたかもウィルス漏洩説に信ぴょう性があるかのように扱い、中国に責任があるかのようにプロパガンダとして利用している。

新型コロナウィルスの発生メカニズムから「漏洩説」はありえない。

北京の国立ウィルス研究所でのSARSウィルスの所員への感染事故は確かにあった。(cf;旧感染症情報センターhttp://idsc.nih.go.jp/disease/sars/update115-CH02.html)それは重症急性呼吸器症候群(SARS)対策としてワクチンなどの開発研究用に培養していたSARSコロナウィルスの漏洩であった。すでに出現し流行していたウィルスを保管していたのが漏れ出したのだ。しかし、今回の武漢での新型コロナウィルスの感染拡大は全く違う。新型コロナウィルスは世界に初めて出現したものだ。それがすでに保管されていることなどありえない。現在、世界中の感染者でコロナウィルスの遺伝子の塩基配列の分析が進められている。それは科学的に以下のような事実を明らかにし、今回のケースでは「自然起源のウィルスの漏洩」もあり得ないことを明らかにしてる。

 ネーチャーメディスン3月17日に投稿された「The proximal origin of SARS-CoV-2(SARS-CoV-2の近位起源)」(Kristian G. Andersen)が、新型コロナウィルスの起源、発生の仕組み、漏洩の可能性についても遺伝子配列の分析を通じて詳細に述べている。

https://www.nature.com/articles/s41591-020-0820-9

まず問題は新型コロナウィルス(名称;SARS-CoV-2)が新種のコロナウィルスであることだ。ヒトに感染するコロナウィルスは従来6種類知られていた。4つはヒトを宿主とするカゼのウィルスで、低病原性で重症化しない。残りはSARSウィルス(重症急性呼吸器症候群という病気を起こす)とMERSウィルス(中東呼吸器症候群という病気を起こす)で、どちらも元になったウィルスはコウモリを宿主とするコロナウィルスと考えられている。両方とも高病原性で死亡率は高い。新型コロナウィルスはヒトからヒトに感染する7番目のウィルスだ。

 新型コロナウィルスはキクガシラコウモリの持つRaTG13というコロナウィルスと遺伝子の塩基配列が96%一致する。非常に構造が近い。また、同じくコウモリ起源と考えられるSARSウィルスとも89%の一致で似ている。新型コロナウィルスはこれらコウモリに住むコロナウィルスが突然変異してできたものと考えられているが、変異前のウィルスは人から人に感染する「ヒトーヒト感染」の能力を持たなかった。遺伝子配列の分析から、コウモリ(あるいはコウモリから移った中間宿主)でウィルスの突然変異が起こって人への感染能力を持つものが現れ、さらに昨年の11月下旬(別の研究では早くても9月以降)に宿主コウモリの中か、感染したヒトの中で変異を起こしてヒトーヒト感染の能力を持つようになった。これが新型コロナウィルスだ。

 このウィルス発生の仕組みを見れば、初めて地球上に出現した新型コロナウィルスが、武漢のウィルス研究所から漏洩し(あるいは研究員に初めに感染し)、さらに武漢市民に広がったということがありえないことがわかる。上で述べたように、ウィルスは①コウモリないしは中間宿主の野生生物の中で、あるいは②感染したヒトの中でヒト―ヒト感染の能力を突然変異によって獲得する。だから、①でも②でも反中国宣伝が言うような「ウィルス」そのものや「ウィルスに感染したコウモリ、あるいは中間宿主」を培養したり、捕獲・飼育することは不可能だ。どちらの場合も、ヒトーヒト感染が起こって、つまり感染が広がって初めて「ヒトーヒト感染力をもつ新種のコロナウィルス」ということがわかるのであって、ウィルス感染拡大が起こる前には「新種のコロナウィルスに感染したコウモリ」などは存在しない。それをどうやって飼育したり培養したりできるのか。SARSの時はすでに流行があったから、感染者からウィルスを取り出すことができたのだ。今回も武漢集団感染の後にはウィルスが分離されたり培養されたりし、ワクチン開発などのために研究対象になっている。しかし、武漢感染の前には存在しないのだ。少なくとも研究所が新型コロナウィルスを入手できるような先行する感染拡大は存在していない。

 トランプと米政府が「自然起源のウィルスの漏洩」した可能性を創作しようとしても、ウィルスの発生する仕組みそのものがそれを否定しているのだ。

トランプは根拠なき中国・WHO非難をやめ、新型コロナウィルスとの戦いに協力せよ

「漏洩説」を中国政府もウィルス研究所ももちろん明確に否定している。ウィルス研は所員には一人の感染者もいないと言明している。WHOもウィルス研から漏れたものではないと断言している(4月22日読売新聞オンライン)。しかし何度否定しても悪意に基づいて根拠のないプロパガンダが繰り返されているのだ。

 プロパガンダ攻撃は、情報隠匿や秘密主義について中国政府を非難するところまで広がっている。この際、なんでも難癖をつけようーーそしてメディアはさもありなんと同調して反中国宣伝をばらまいている。中国は隠している、ウィルス研も全部見せろ。ウィルス株をなぜ譲渡しない等々。最高水準の科学技術や施設を含めて全部を他国に公開するなどありえないことだ。自分たちが現に中国と中国企業を敵対的ライバルとして扱っていることを棚に上げて何を言っているのか。見せないのを分かってわざと非難しているのだ。できるものなら米国がまず米国立衛生研究所NIHや米疾病予防管理センターCDCの全情報を公開すればいい。とはいえ、中国の対新型コロナウィルス研究の中身は可能な限り迅速に公表されている。遺伝子解析の結果や病気の容態、治療の効果など各国がウィルスと戦ううえで必要な情報は次々と発信されている。ウィルス研究所そのものもかなり開かれている。武漢のウィルス研究所はNIHから710万ドルの資金を受けて共同研究を行っている。NIHとの共同研究はまさにコロナウィルスに関するもの(370万ドル)だ。自国だけで独自に秘密研究しているわけではない。

 こんなことは学問的には常識だ。そのことを分かったうえでトランプやポンペオは反中国プロパガンダに利用している。繰り返しになるが、新型コロナウィルスは人工ではなく自然に発生したものだ。中国の武漢で発生したのもそこで直前に遺伝子の変異が起こったためであり偶然にすぎない。従って中国もこのウィルスの被害者である。いまわれわれは中国を含めて国際的に共同して立ち向かわなければならない状況にある。お互いに情報を共有し、援助しあわなければ打ち勝てない。特にインドやアフリカの医療の遅れた地域には世界中からの医療支援が不可欠だ。漏洩説こそ、この国際的に協力して戦うことを妨害するために出されたものだ。その最中に、最前線で戦ってきた中国を何の根拠もなく攻撃を繰り返すトランプ政権を厳しく糾弾する。対コロナウィルスの戦いの世界的な中心に位置するWHOに対する攻撃を糾弾する。トランプは言いがかりの反中国プロパガンダをやめ、WHOへの資金拠出停止を直ちに撤回せよ。



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