5月19日付大阪日々新聞の記事で、教育基本条例を巡って、とんでもない修正内容が報じられている。
“小中学校の教員の勤務評価分布を学校ごとに公表する”というものだ。
橋下市長は、小中学校の学力テスト結果の公表を2014年をメドに実施することを方針として明言している。これによって児童・生徒の成績で小中学校が序列化されることになってしまう。さらに教員の勤務評価分布を公表し、教員評価によっても小中学校を序列化し、保護者や児童・生徒が“学校を選択する判断材料”にできるようにするというのである。
これは、「特色のある学校づくり」という学校選択制の大義名分さえ捨て去るようなメチャメチャな内容だ。
現在行われている各区での「教育フォーラム」では“学校選択制と統廃合は別”などと市教育委員会は説明しているが、橋下市長は統廃合のために学校選択制を導入することを公言している。つまり“選ばれない学校”は容赦なくつぶしていくと。
“学校選択制の判断材料”というような枠組みさえ大きくかえてしまうだろう。“A区の○○学校は生徒の頭も悪いし、先生もダメ”というような評判が、市教育委員会の公式文書を通じて流されることになる。
だが、そもそも教員の「勤務評価」自身がおおいに疑問であることが明らかにされている。大阪府教育委員会が2010年に校長らに対して行ったアンケート結果では、圧倒的多数の校長が、教員を評価しそれを給与に反映することに対して否定的な回答をしている。その理由には、教員の教育活動を客観的に評価することそのものの困難性と、勤務評価によって教育現場の人間関係を崩してしまうことなどが上げられている。
要するに、教職員集団による教育活動に重大な支障をきたしてしまうのだ。
※新勤評を 校長たちは どうとらえているか(新勤評反対訴訟)
http://www7b.biglobe.ne.jp/~kinpyo-saiban/osaka/deta.html
※大阪市のアンケート結果では、校長自身が給与反映はダメと答えています(新勤評反対訴訟)
http://www7b.biglobe.ne.jp/~kinpyo-saiban/news/n0036.pdf
以前朝日新聞で、アメリカでは実名で教員のランク付けが公表されており、最下位教員が自殺したという記事も掲載されている。その教員のランク付けは、生徒の学力テストの結果によっている。
※朝日新聞「米国の教育改革」より--やはり大阪の教育の近未来を暗示(リブインピースブログ)
http://blog.goo.ne.jp/liveinpeace_925/e/27e9658579658291cea22cdc4c323850
学テ結果と教員の「勤務評価」分布を学校ごとに公表するというような条例は、教員や子どもたちにとって最悪で、学校に致命的な打撃を与え、大阪の公教育を崩壊させるだろう。
----以下、新聞記事-----
教員評価の分布公表 維新、教育条例案修正へ
2012年5月19日 大阪日日新聞
http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/120519/20120519043.html
橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会大阪市議団は17日、市議会で継続審議となった教育関連条例案などの修正内容を固めた。市立校教員の勤務評価分布を市教育委員会が学校ごとに公表できるようにしたのが柱。保護者や生徒が学校を選択する判断材料とし、学校間の競争を促す狙いがある。第2会派の公明と修正案を調整し、橋下市長が3月に提出した条例案を修正、5月30日閉会の今議会で成立を目指す。
教育条例案は、教育行政に市長や保護者の関与を強める考え方を基本に構成。修正案で保護者の意見を学校運営に反映させるための「学校協議会」設置を原則設置から選択制に変更し、市教委は協議会の求めに応じて教員の評価分布を公表することとした。
また職員基本条例案について、再就職の禁止規定を強化した。職員が退職前5年間に関わった許認可規制の対象となる企業への再就職を退職後2年間禁止。OB職員の再就職先への働き掛けに職員が応じることを禁じ、罰則規定も設ける。
職員の懲戒処分や再就職の妥当性を審査する第三者機関「人事監察委員会」は、委員の定員を3人から15人程度に増やして体制強化。委員の氏名は公表を原則とした。
維新の会幹部は「公明の要望にはできる限り配慮したい」と述べ、連携を重視していく構えだ。
(ハンマー)